夏の厄介者を主役へ 老舗のレトロ資産を活かしたネガティブ反転マーケティング
コラボレーションという手法があふれる現代において、単発の話題作りで終わらず、定番となりファンを創出している施策があります。
1716年創業の奈良の老舗・中川政七商店と、1885年創業の金鳥(大日本除虫菊株式会社)によるコラボレーションは、2026年で9年目を迎えました。累計38種・約9万点を売り上げるこの人気シリーズが継続できている理由は、単なる「デザインの掛け合わせ」を超えたブランド戦略にあるようです。

まず、ユーザーを飽きさせない仕掛けのアップデート。中川政七商店の工芸技術を活かした手ぬぐいや、かや織ふきんという定番商品をベースに、毎年異なるデザインや切り口の新作を投入しています。
2026年は、夏の厄介者であるはずの蚊を親しみを感じるキャラクターへ変換。蚊帳の外に追いやられた蚊を配置したり、1匹だけひっくり返った蚊を描いたりと、クスッと笑える新しいユーモアを追加しました。
「今年はそう来たか!」と既存のファンのコレクター心理に刺激を提供し、新規ユーザーには新鮮な驚きを与えています。

また、中川政七商店の高い工芸品質も、リピーターを獲得する要因のひとつでしょう。てぬぐいやふきんは日常の消耗品ですが、実際に使ってみて「手触りがいい」「乾きやすい」という道具としての機能性が、翌年のリピート買いにつながっています。
さらに、生活者が蚊を意識し始める5月下旬というタイミングも的確です。「毎年この時期といえばコレ」という年中行事化にすることで、生活者に毎年のルーティンとして想起させるサイクルを定着させています。

嫌われ者の「蚊」を愛すべきアイコンへと昇華させ、9年間ファンを魅了し続ける両社の取り組み。
おなじみの定番デザインに遊び心を加え、初夏という季節の文脈と掛け合わせたマーケティングで、継続できる色褪せないブランド資産を築き上げています。
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