錦織圭選手が、NYを舞台に木刀でテニス!日清カップヌードルCMの裏側に迫る

Case: 日清カップヌードル×錦織圭=“SAMURAI-K”

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。
今回は、プロテニスプレイヤー・錦織圭選手が、ニューヨークに乗り込み活躍する日清カップヌードルのテレビCM“SAMURAI-K”を取り上げます。このCM制作の舞台裏を日清食品ホールディングス経営戦略本部宣伝統括部 佐野正作さんに伺いました。

Interview & Text : 石原愛美
日本の楽しさ、面白さを知って欲しい。日本をもっと楽しんでほしい。

―“SAMURAI-K”CMコンセプトの決定経緯をお伺いできますでしょうか?

カップヌードルは、2014年度“SAMURAI, FUJIYAMA,CUPNOODLE ~この国を、楽しもう~”というプロモーションを行っています。日本の若者にとって、日本は、住みにくいだとか、労働条件が厳しいとか、暮らしていると疲れてしまうような所だと捉えられている側面があると感じています。

しかし、海外からは、日本独特のアイドル文化や漫画、本音と建て前を使い分けるコミュニケーションなどから日本は楽しくて面白みがある、ユニークでエキサイティングな国だと思われる事が多いと考えています。改めて、国内の若者に対して日本の楽しさ、面白さを知って欲しい。日本をもっと楽しんでほしいという思いで取り組んできました。

これまでの“現代のサムライ篇”では、でんぱ組.incのライブでサイリュームを使って踊るオタクを「SAMURAI」と呼んだり、“本音と建前篇”では、ダチョウ倶楽部さんに「熱湯風呂の芸」をやって頂いたりと、日本の特徴を楽しいものとして捉えて、テレビCMにしていきました。

今回、錦織選手に出演頂いた“SAMURAI-K篇”は、まさにその集大成として企画しました。彼が単にテニスプレーヤーとして戦いに行くのではなく、巌流島の決闘に向かう宮本武蔵のように、ハドソン川を小舟で渡り、SAMURAIとして世界に立ち向かっていく、というストーリーにしています。

―撮影の現場の様子を教えて下さい。

錦織選手はアメリカを拠点に活動されていてとてもお忙しいので、事前の打ち合わせや、リハーサル、フィッティングなどは、日本で1日しかできませんでした。CMの中で使われている木刀も今回のCMのために、特注で作成しました。

―錦織選手のためのオリジナル木刀だったんですね…!!

木刀を何パターンか事前に用意して、国内でのリハーサルで実際に打って頂きました。そこから錦織選手の意向を取り入れて、重さや、グリップの太さ、長さ等の微調整を加えて、最終的に普段使われているラケットとほぼ同じような重さのものに仕上げました。世界で戦う彼の手首を万が一痛めてしまったら大変なことですので、木刀には細心の注意を払いました。

―CMの中で、錦織選手の代名詞「Air-K」が決まっていましたね。

もともと、CMの中で、Air-Kをはじめ、サーブや、フォアハンド、バックハンドなどの技をしてもらう予定でしたが、さすがは錦織選手、見事に決めて下さいました。

―錦織選手のカメラにむかってサインを書くシーンも、予定通りなのですか?

カメラにむかって必ずサインを書いてくださいとお願いしていました。そしたら、最後にウインクまでして下さいました。こちらは完全に錦織選手のアドリブでした。ものすごく格好良かったので、これは絶対に使おうということになりました。

―実際にニューヨークで撮影されたのでしょうか?

そうです。CM冒頭部分は、ハドソン川でロケをしました。12月初旬の撮影で、もの凄く寒かったです(笑)。そして木刀テニスの会場は、ブルックリンにあるThe Grand Prospect Hallを使用しました。以前は、そのホールで結婚式の披露宴や、老若男女が集まった舞踏会が行われていたそうです。

ニューヨークの中でも、エンターテイメントの歴史ある会場に“SAMURAI”錦織選手が木刀一本で立ち向かってきた、というストーリーにしました。ギャラリー役は現地のエキストラの方を雇いましたが、錦織選手もだいぶアメリカで有名になってきているので「すごい撮影に立ち会えたな」という雰囲気が会場内に広がっていました。

“SAMURAI,FUJIYAMA,CUPNOODLE”のコンセプトの元、様々なバリエーションも

―今回のCMに対する消費者の反応は。

放送から1ヶ月程経ってから発表されたCMデータバンク好感度ランキングにおいて、食品業類で1位を頂けました。総合では2位です。これは東京地区の3,000人に「あなたの好きなコマーシャルは何ですか。」という質問に対して、マーク形式ではなく記述式で答えてもらった調査の結果です。

―WEB上での反応はいかがですか。

(テレビでも放送している)“SAMURAI-K”CMのYouTubeやFacebookでの再生回数は、2015年1月末現在、200万回ほどです。一方で、2014年の6月から公開しているCM、“SAMURAI in BRAZIL” は、再生回数が1,000万回を突破しています。こちらは、ほとんどテレビで放送しませんでした。

テレビで見られるものはやはりそちらで皆さんはご覧になることが多いのですが、逆に見られないものはネットで検索して閲覧されるので、再生回数が多くなる傾向にあります。こちらの内容は、フリースタイルフットボールの世界チャンピオンである徳田耕太郎さんがブラジルに乗り込んでいって、鎧甲冑姿でフリースタイルの“スゴ技”を炸裂させるという内容です。これも“SAMURAI,FUJIYAMA,CUPNOODLE”シリーズの1つです。

―“SAMURAI in BRAZIL”も日本国内に向けてのものなのでしょうか。

もともと国内向けに制作したものでしたが、結果的にYouTubeの再生回数の65%くらいは海外からのものでした。アメリカ、台湾、ブラジルが主に閲覧された国です。このCMには台詞がついていません。音楽と動画だけです。それゆえに海外の方にも楽しんで頂きやすかったのではないかと思います。

また、錦織選手出演のCM“SAMURAI-K篇”は、ウェブを中心に“公式MAD動画”を公開しています。これは、“SAMURAI-K篇”の制作に携わって頂いた方に、エフェクトなどのアレンジを加えてよりエモーショナルに仕上げた映像を提案して頂きました。その出来が非常に良かったので、“SAMURAI-K公式MAD編”として採用致しました。今カップヌードルのブランドサイトにも載せてあります。先日惜敗しまいましたが、WOWOWの全豪オープン中継でも通常の“SAMURAI-K篇”と“SAMURAI-K公式MAD編”を交互に流しました。

―カップヌードルのCMを制作するにあたっての目標は、どのようなものですか。

若者との絆作りです。CMがそのまま売り上げに直結することはなかなか難しいと考えています。我々としては、カップヌードルのファンになってほしいという思いからプロモーションを行っています。

―目標達成の目安は?

いろんな指標があるとは思います。YouTubeの動画再生回数やTwitterのつぶやきの件数などもみています。またCMデータバンクの調査は年代別に取れるので、年齢ごとに、どれくらい話題になっているかという所も参考にしています。

―カップヌードルCMシリーズに対するこだわりを教えて下さい。

弊社の(安藤宏基)CEOは“テレビCMは面白くなければ意味がない。”ということを常々申し上げています。私たちは、誰もが見入ってしまうようなカッコいい企画や思わず吹き出してしまうような面白い企画にも、いつも大真面目に取り組んでいます。2015年度のスタートとなる今年4月以降に、次の新しい展開が始まる予定です。これまでとは違う斬新なチャレンジをしていきますので、どうぞご期待下さい。

―ところで錦織選手といえば、チキンラーメンの黄色い「ひよこちゃん」バッグを試合中に持っている点も話題になっていましたよね?

新商品や、クリアファイルのようなグッズなどを、定期的にお送りしています。その中でもこのバッグを気に入られたみたいで、いつの間にか使って頂いていました。

―ちなみに、これは市販されていますか?

こちらはもともと販促用でつくったものですので、単品で販売はしていないんですよ。

―それにしても「ひよこちゃん」バッグを使われるなんて錦織選手、お茶目ですね(笑)。

着替えたウェアを入れたりするのに、ちょうど良いサイズみたいです(笑)。

【Interviewee】

日清食品ホールディングス
経営戦略本部 宣伝統括部 係長 佐野正作さん

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