地域での販売増には、有力地方紙での記事掲載が有効。国内各地での販売活性化を支えるYKK APの広報活動

Case: 地方有力紙とのつながりを育むYKK APのPR活動

政治の世界で「地方創生」が1つのキーワードとなっていますが、日本各地で営業活動をしている大手企業やフランチャイズ展開している企業でも、「偏りなく各地で順調に売上を伸ばすこと」や「新規進出する地域で売上を伸ばすこと」が課題の1つになっているのではないでしょうか。そうした企業のマーケティングや広報の担当者には、地域ごとの実績の推移、今後の施策が各地に与える影響を意識した動きが求められてきます。

窓や玄関ドア、建材などを手掛けるYKK AP株式会社も全国に営業・製造の拠点を持ち、アルミサッシよりも断熱性に優れる“樹脂窓”を国内で普及させようと努めているところです。

各地域での販売を増やすため、同社が重視してきたことの1つは、各地域で影響力を持つ地元の有力紙と良好な関係を築くこと。そのために、YKK APの広報はどのような取り組みをしてきたのでしょうか。同社広報室の長沼史宏係長に話を聞きました。

 

BtoB中心か、BtoBtoCが狙えるか。製品ごとに発信内容の重点を考える

――普段の業務の中で心掛けている点は?

YKK AP株式会社 広報室 長沼 史宏 係長

われわれが扱っている製品は、窓・玄関ドア・建材といったものになります。

こうした分野の製品を扱っていますと、広報としてメッセージを届ける相手を見定めにくいのが難点です。「YKK APの製品を採用しよう」と決めてくださるのは、ビルを建てるときは建設会社や設計事務所になる一方、注文住宅を建てるときやリフォームの際は一般の方々が意思決定に大きく影響を与えることになりますから。ですので、広報時には製品ごとに焦点を当てるところを変えるようにしています。

ビル用建材などのBtoB中心の製品は、専門的な内容であっても技術的に優れているところなどをしっかり伝えるようにしています。

この場合、製品導入を決定する企業担当者や、そうした方々が読む専門誌の記者がターゲットになります。人数が比較的絞られて顔が見える相手に情報を届けるわけですから、彼らが求める情報をできるだけ正確に推測することが大切です。社内では「ずっと前からやっていることだから重要ではない」と思っている情報でも、業界ではようやく注目を集めるようになった情報もあります。「この情報は、今こそ再発信するべきだ」と私の方から提案して、その主張が通った結果、「YKK APは以前からやっていた」と記事にしてもらえたこともありましたね。

逆にBtoBtoCで注文が狙える窓などの製品では、一般の方々から「あのCMで流れていた商品にしたい」と指定いただけることもあります。従って情報発信の際には、誰にでも分かりやすい内容であることと、「毎月の光熱費が何円安くなる」といった生活と密接に関わる情報を伝えることを心掛けています。

例えば、当社が力を入れている製品の1つに“樹脂窓”があります。実は世界の先進国の間では、アルミサッシよりも樹脂フレームで作られた“樹脂窓”の方が一般的。アメリカで67%、ドイツで60%が樹脂窓を使っていますが、日本での普及率はわずか7%となっています。

しかも、夏は暑い空気の73%が窓から入ってきて、逆に冬は温かい空気の58%が窓から逃げていくのです。アルミサッシよりも樹脂窓の方が断熱性は高いので、樹脂窓に切り替えれば光熱費の節約につながります。当社調べですが、実際に東京のある地域では、年間で約2万1500円も節約できるというデータも集まりました。

このように一般向けに情報発信する際には、技術的な細かな違いに焦点を当てるよりも、光熱費が安くなるといった明らかなメリットを前面に打ち出すようにしています。

イベントは好機。開催情報→イベント報告→特集と3段構えで記事化を働き掛け

――広報担当者として、重視しているKPIや成果などはあるのでしょうか?

YKK APが販売を進める樹脂窓の断面図

当社には全国に拠点があるわけですから、どの地域もバランスよくメディアで取り上げてもらえるように気を配っています。全国に向けて情報発信している通信社との関係を深めることと同じくらい、当社としては有力な地方紙とのつながりを大切にしています。

地方紙とのつながりを育む上で、重要なきっかけになっているのはイベントです。2012年から樹脂窓を普及・啓蒙するために「APWフォーラム」というイベントを全国十数カ所で開くなど、さまざまなイベントを企画していまして、地方紙との接点を築く上で、そうしたイベントが非常に有効になっています。

というのも、そうしたイベントの開催情報を広報すると、さまざまなメディアに「開催予定」であると記事に取り上げてもらえます。すると、今度はその記事を読んだ専門誌・地方紙の記者がイベントに足を運んで詳しいレポート記事を書いてくださるのです。そうした記事から「樹脂窓を使いたい」という一般の方々のニーズが掘り起こされ、さらに反響が生まれるようになるわけです。ある地域で、地元の有力紙に週末に行うイベントに関する記事が掲載された結果、週末土日の2日間だけで通常時の1カ月分に相当するショールームへの集客につながったケースもありました。

こうした取り組みを続けて樹脂窓についての理解が広まってくると、メディア側にも“企業の宣伝文句”ではなく“世の中の動向”として「樹脂窓が浸透しつつある」「これは新しい動きだ」と注目いただけるようになります。

どの都道府県の地方紙とも、そこまでの関係を築いていきたいと考えています。私自身、足繁く地域ごとのイベントに参加して、地方紙の記者とあいさつするようにしています。

『樹脂窓の普及など、社会貢献につながる自社製品の魅力を伝えていきたい』
YKK APの事例の続きは、こちらからどうぞ!

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