【速報】カンヌライオンズ2025「Good」部門グランプリ受賞作品まとめ
2025年6月にフランス・カンヌで開催された「Cannes Lions 2025」。社会通念を前進させるソーシャルグッドな作品に贈られる「Good」部門において、特定の文化に影響を及ぼした作品を評価する「Glass: The Lion for Change」、国や地域を超越して社会そのものの改善を図った作品を評価する「Grand Prix for Good」、SDGsな作品を評価する「Sustainable Development Goals Lions」の3つの賞におけるグランプリをご紹介します。
Glass: The Lion for Change
Real Beauty: How a Soap Brand Created a Global Self-Esteem Movement(Dove)
Creative Strategy Lionsでもグランプリを受賞したDoveの長期に渡る大型キャンペーン“Real Beauty”が、その継続性や社会全体の“美”という概念に対する認識を変容させた功績が評価されGlass: The Lion for Changeでもグランプリを受賞しました。
今年のカンヌライオンズのEngagement部門・Media Lionsでもグランプリを受賞した“Real Beauty Redefined for the AI Era”も、2023年には同じくMedia Lionsでグランプリを受賞した“#TURNYOURBACK”も、2021年にダブル受賞を果たした“Courage is Beautiful”も、すべてこのキャンペーンの一環であり、カンヌライオンズだけにとどまらない広告賞の常連とも言えるシリーズへと成長しています。
元々は「自分のことを美しいと思える女性はわずか2%しかいない」という発見に着目し、メディアが発信する美しさと人々の自己認識の間に大きなギャップがあることを課題と捉え、誕生したのがこのキャンペーンです。
今となっては欧米圏だけでなく、アジアやアフリカをはじめとした世界中の国で知られているDoveを代表する事例へと成長しました。変わりゆくメディア環境と発展していく技術に対してDoveがどう女性の美に対する自己肯定感と根本的な認識と向き合っていくのか、今後の切り口にも注目が集まるキャンペーンと言えるのではないでしょうか。
Grand Prix for Good
The Best Place in the World to Have Herpes(New Zealand Herpes Foundation)
キスや性交渉をはじめとした直接接触や、ウイルスが付着したタオル、食器、コップなどの共有による間接接触をきっかけに感染する感染症・ヘルペス。日本国内においても1,000万人が感染経験があるという推計もされており、世界的にも身近な感染症の1つであるにも関わらず、前述の感染経路が原因で世間ではこれまで多くの議論がなされてきませんでした。
この偏見とスティグマと真正面から向き合い、ヘルペスについてもっとオープンに議論して理解を深めることを目的としたニュージーランドのNPO・New Zealand Herpes Foundationが実施した啓蒙施策が見事グランプリを受賞。特に健康とウェルビーイングという文脈に特化した認識・行動変容を起こしたとしてHealth部門のLions Health Grand Prix for Goodでもグランプリの座に輝いており、見事ダブル受賞を達成しています。
“The Best Place in the World to Have Herpes(世界で1番ヘルペスに罹っても安心できる場所)”という刺激的なタイトルがつけられた施策の内容自体は非常にシンプルでわかりやすいもの。2004年から2011年にかけて、7年もの間ニュージーランドのラグビー代表チームのヘッドコーチを務めたGraham Henry氏を中心に、ヘルペスに関するさまざまな学習コンテンツを連続的に公開し、国際的な評価指標を通じて国民のヘルペスに関する理解度をひたすらモニタリングしたのです。
そして、公開から8週間経ったタイミングでついに世界1位を獲得し、見事ニュージーランドが“世界で最もヘルペスに関して寛容で知識的な国”として認定されたのです。
エンタメ性あふれる学習コンテンツにしたことで総視聴時間は10,776時間、100を超えるメディア露出と2,240万ものインプレッション(ニュージーランドの人口はわずか500万人)を獲得。最終的に学習コンテンツに触れた人の86%は、ヘルペスに関して前向きな気持ちで議論することができるようになったと回答しました。
偏見が原因で触れる機会が少なかったヘルペスに関するイメージを根本から変え、感染してしまった人はもちろん、そうでない人もよりオープンに話すことができるパーセプションチェンジが成果として認められたのではないでしょうか。
Sustainable Development Goals Lions
The Amazon Greenventory(Natura)
南米大陸に広がるアマゾン熱帯雨林(アマゾン)は、面積でいうと地球上に存在する熱帯雨林の約半分に相当する広大な地域。美容から食品、建築にいたるまでさまざまなグローバル企業にとっては貴重な原材料の宝庫でもある一方で、すでに18%もの土地が伐採されてしまっておりその保護と保全が重要な社会課題であると指摘されています。
そんな状況を受け、ブラジル・サンパウロに本社を構える美容メーカーのNaturaが行なった施策がアマゾンとの持続的な共存の可能性を見出したとして、見事グランプリを獲得しました。
Naturaが行ったのは、俯瞰から樹木の種類を見分けることができる特殊なAI技術が搭載されたカメラを装着したドローンをアマゾン上空に放ち、400平方キロメートルもの広大な土地のどこにどんな木があって、どんな果実が採取できるのかをマッピングしたのです。
これまで現地に住んでいる農民の多くは目的の木が群生するエリアが見つかるまであてもなく歩き続け、その途中で道を阻む木があると伐採してしまう……そんな悪循環を繰り返してきました。
具体的にどこに何があるかを明確にすることで現地の人々の時短に繋がっただけでなく、Naturaをはじめとした企業はより効率的に原料を採取することが可能になり、しかもアマゾンの保全にも貢献できるというまさにWin-Win-Winな関係が出来上がったのです。
400平方キロメートルもの土地の木をマッピングしようとすると通常であれば25年もかかるところを、ドローンとAIカメラの組み合わせによってわずか半年で実現。多くの専門家を驚かせたこの事例……現地に住む1万世帯の生活を向上させ、3万ヘクタールもの土地を守り、これからの企業とアマゾンとの向き合い方に、新たな可能性を指し示したことが評価されたのではないでしょうか。
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