ドイツ繊維ベンチャーが製造時の廃水を活用した”肌と地球に優しいスキンケア”を開発

ドイツを中心に事業を展開する繊維ベンチャー「AIZOME」が製造時の廃水をそのまま使ったプレミアムスキンケア製品 「AIZOME WASTECARE™ 」を発表しました。

藍染で染めた布には、消臭や保温、紫外線防止、抗菌といった効果効能があります。しかし、洗うことによって藍の成分が抜け、薬効や色が落ちてしまうという弱点もありました。そこで、藍染の新たな染色方法の開発に着手し、染色時に超音波を用いる独自の藍染技術「AIZOME ULTRA」を考案しました。

AIZOME ULTRAは、52.5kHzの超音波によって染液の中にマイクロバブルを生成し、藍の成分を布繊維に強く付着させることで、色落ちや薬効効果の低下を防ぐ画期的な染色技術です。AIZOME ULTRAによって、それまでは藍染師が長年の経験をもとに手作業で行っていた作業が機械で自動化され、高品質な藍染製品をお手頃価格で大量生産することも実現。現在、AIZOMEは睡眠時の布環境を改善すべく、ベッドシーツや枕カバーを中心に製造・販売しており、今後は衣料分野への進出も検討しています。

藍染は化学物質を一切使用せず、藍と水のみを使用した100%オーガニックな染色方法です。色合いが美しい藍染には、菌の増殖をおさえて肌荒れを防ぐ効果があり、その効果の高さは、全米湿疹協会やケンブリッジ大学からの認証を得ているほどです。そこで、AIZOMEは製造工程のオーガニックさや製品自体の薬効から、染色後に残る「廃水」に注目しました。

オランダ・アムステルダムに本部を置く非営利団体、ZDHC(Zero Discharge of Hazardous Chemicals:有害化学物質排出ゼロ)の厳しい規制に従ってテストした結果、他の繊維ブランドとは対照的に、AIZOMEの廃水には一切の毒性がないことが判明。さらに、欧州の研究機関「ユーロフィン」の調査によると、AIZOMEの廃水にも藍の成分が含まれており、乾燥でデリケートになった肌を整え、やさしく保湿する効果があるという見解が示され、プレミアムスキンケア製品 「AIZOME WASTECARE™ 」の開発へとつながったのです。

じつはファッション産業は、国連貿易開発会議(UNCTAD)から世界第2位の汚染産業とされています。中でもテキスタイル産業は、染色に毎年5兆リットルもの水を使用(※1)し、石油300万バレルに相当する約50万トンものマイクロファイバーを海洋に投棄しています。また、繊維産業は世界の水質汚染の約20%の原因になっているというデータ(※2)もあり、廃水の無毒化や適切な処理は業界全体で取り組むべき大きな課題となっています。WASTECARE™は、化粧品としての安全性にも配慮し、医療用の小瓶に詰められており、完全なリサイクル材で梱包されています。今後、WASTECARE™を順次展開していくことで、繊維業界全体に課題解決に向けた行動を呼びかけていくと共に、藍染の技術的利点やその素晴らしさを世界へと発信していく予定です。

捨ててしまえば、水質汚染の原因になるだけの藍染排水を、その潜在的な機能と安全性に着目して化粧品として開発する発想の転換には驚かされます。まだまだ、こうした意外な形でのビジネスの種や社会課題の解決の道はあるのだと気づかされました。

・※1出典元:ファッション業界の水消費量はさまざまな段階にある? それを削減することが人々の生活にどのような影響を与えるか(UKHI:ウキ・インド社)

・※2出典元:繊維生産と廃棄物が環境に与える影響 -インフォグラフィック(欧州議会)

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