Twitter公式アカウント同士の会話がきっかけで商品開発!「キングジム×ハンズ トラベル・オレッタ」発売に至るまで

Case: 東急ハンズ & キングジム「キングジム×ハンズ トラベル・オレッタ」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、東急ハンズ(@HandsNet)とキングジム(@kingjim)による両社の公式ツイッターアカウントでの会話をきっかけに商品発売まで至った事例を取り上げます。商品はA4サイズの書類を三つ折りにして持ち運べる「キングジム×ハンズ トラベル・オレッタ」(1,000冊限定)です。この商品を店頭やオンラインショップで展開している株式会社東急ハンズのお二人・オムニチャネル推進部 オムニチャネルコマース課 緒方恵さん(以下、K)とMD企画部 商品企画課 奥山朋子さん(以下、T)にお話を伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人
Twitter上の会話から打ち合わせがスタートするまでの過程

—まずは、今回のコラボレーションの経緯を教えてください。

K:東急ハンズでは元々2010年にヴィレッジヴァンガードさんと商品大喜利のような企画を行ったことを皮切りに、様々な企業さんとTwitter上で交流・コラボレーションしてきました。
今回は東急ハンズのロゴマークを使った文房具が欲しいというアイデアがフォロワーさんから出てきたのですが、それを元にキングジムさんに(Twitter上での)無茶ぶりのような形で打診してみたら、すぐに動いてくださって。本当に実現出来そうな雰囲気があったので社内のバイヤーなどを巻き込んで、キングジムさんと打ち合わせしました。

—Twitterでキングジムさんからレスポンスがあったのは、すぐでしたか?

K:レスポンス自体は数分後で、作れるかもという返信もその日のうちに頂戴しました。

—キングジムさんも東急ハンズさん同様、機動力が高い企業さんだったのでしょうか。

K:キングジムさんは元々Twitterアカウントとしては機動力があるアカウントのひとつと思っていましたが、商品開発のフットワークまで軽かったというのは今回初めて知りました(笑)

(以下は公式アカウント同士のやりとりの一部始終)

—実際にお会いしたのは今回が初めてですか?

K:今回の打ち合わせで初めてお会いしました。それまでは公式アカウント同士としてTwitter上のみの接点でした。

T:昨年から東急ハンズでは、商品開発面でも様々な企業さんとのコラボレーション商品で話題を作っていこうという動きが出てきていましたし、MDとしては今回もすぐ動きました。私が元々バイヤーで文具を担当していたのでキングジムさんとのつながりも強かったというのもありましたし。

—どんな打ち合わせをされたのでしょうか。

K:最初フォロワーさんから頂いたアイデアは、ロゴマークを使った文房具という比較的ノベルティ寄りのアイデアだったのですが、このアイデアを「きっかけ」として、さらにもっと実用性を求めていこうとディスカッションをしていきました。

T:キングジムさんの「オレッタ」は好調な商品で、この商品を活用するのが企業イメージの面でも良いし、すぐ生産稼働できるともおっしゃって頂きましたし、こちらでも実際に店舗で売れている商品だったので「これでいきましょう」と決まりました。

K:実は他にもいろいろアイデアが挙がりました。さらにオレッタを活用しようという案が残ってからも、(オレッタを)どのように活用するかという点でも複数のアイデアがありました。

—その中から、海外旅行エッセンスを加えた商品とした理由は何でしょうか。

T:現在、東急ハンズではスーツケースなどトラベル用品が強みのひとつです。そんな中トラベルのバイヤーチームでも「準備するもの」「移動するもの」だけではなく「記録するもの」という新しいカテゴリを作りたいなと考えている最中でしたし、(A4の書類や印刷したe-チケットなどを挟んだり)旅を記録するものとして使いやすいだろうと。東急ハンズでは「ヒントファイル」と呼ぶ小さなリーフレットを100種類ほどがあって、その中のトラベル版の情報(現地の電圧やコンセントなどの情報など)を盛り込みました。

—発売後の反響はいかがでしょうか。

K:Twitter上でもかなり大きな反響があましたし、ネットストアでも記録的な売り上げでした。一瞬で在庫が切れたなんてことはそうあることではないです。

今は手にした喜びといいますか「ゲットしたよ」というTweetをたくさん頂いています。

—今後もコラボレーションの可能性ありとリリースに記載されていましたが。

K:キングジムさんは文具メーカーとしてはフットワークの軽い会社ですし、継続的にお付き合い出来ればと思いますし、そのようなきっかけをTwitterが作ったというのは面白い事例だと思いますね。

東急ハンズが重視するTwitter〜ソーシャルメディア運用に対する考え方は

—ちなみに、今緒方さんがご担当されているSNSアカウントは何でしょうか。

K:Twitter、Facebook、mixi、google+など基本的には東急ハンズのSNSアカウント全てを管理しています。Twitterでは今回きっかけになった「ハンズネット」のアカウント(@HandsNet)を担当しています。Twitterは広報が運営しているアカウント(@HintMarket)や、営業企画のチームが運営しているアカウント(@TokyuHands)もあり、それぞれ、ヒト軸・コト軸・モノ軸、と分かれています。

Twitterのいいところは気軽にコミュニケーションが取れるところです。例えば、店舗に在庫を電話やメールで問い合わせするという行為は皆様あまりしない行動だと思いますが、その「ハードル」で来店喚起が人知れず消えてしまうということは多々あると思っています。

ですので、気軽な問い合わせをできる窓口として、WEB上に接客員を置くという意味でヒト軸のTwitter「@TokyuHands」を立ち上げました。ソーシャルメディア上にいるハンズの元気なお兄さんという感覚です。広報が運営している@HintMarketは開店休業情報・イベント情報などのコト軸です。そして、@HandsNetは商品情報などのモノ軸です。商品の情報が欲しいという方はモノ軸のアカウントをフォローすればいいし、いつでも気軽に問い合わせが出来るアカウントと接点を持っておきたいという方はヒト軸、店舗の情報を知りたい方はコト軸、とお客さんによって使い分けて頂ければと。

2009年から、必要に応じて順次開設していきました。キャラクターとしては可能な限り朗らかに、ネット上のコミュニケーションのエッセンスも入れながら、東急ハンズとしてブランディングを守りながら、楽しく活発に会話をする位置づけです。

—各サービスの違いは何でしょうか。

K:やはりマントゥマンでキャッチボールしやすいTwitterは会話に向いているんですよね。つまり接客に向いている、そのため東急ハンズとしてはTwitterに力を入れています。Facebookは一つ投稿をするとスレッド式にコメントが伸びていくのでなかなかキャッチボールというコミュニケーションはしづらい、そのため東急ハンズ新聞を一日一回届けるという、情報発信寄りの感覚です。mixiとgoogle+はFacebookと同様ですね。

mixiはユーザー層がまた異なるので紹介する商品を変える工夫もありますが、FacebookやmixiやGoogle+のユーザー数が増えても、東急ハンズとしてやりたいことに一番近いのはTwitterというのはぶれていないですね。各SNSは例えばAIDMAでいうところの「A=Attention」の為に使っているわけではないので、我々は「ソーシャルメディアマーケティング」とは呼んでいなくて、「ソーシャルメディアコミュニケーション」「ソ―シャルメディア接客」と呼んでいます。

—国内外問わずウォッチしている他社のアカウントはありますか。

K:同時期からtwitterアカウントを開始した良品計画さん含め、様々なアカウントの運営を拝見させて頂きながら、参考にしています。

—SNS発の商品開発について、今後のアイデアはございますか。

K:実際に形になるかはわかりませんが、Twitter上で商品のアイデアを集めて形にするというのは面白いですよね。自分のアイデアが盛り込まれた商品が発売されるとユーザーさんも嬉しいでしょうし、共に作ることが出来れば、現代の世情のコンテクストにあう商品も出来るのかなとも思います。

【Interviewee】

株式会社東急ハンズ
オムニチャネル推進部 オムニチャネルコマース課
緒方 恵さん(右)
MD企画部 商品企画課
奥山 朋子さん(左)

ランキング

最近見た記事

最新記事

すべて見る