寝苦しい夜をどう快適にする? 快眠体験を提案するPR・マーケティング事例10選
近年は酷暑や熱帯夜が続き、夏の睡眠環境への関心が高まっています。気象庁では、最高気温35度以上の日を「猛暑日」、最低気温が25度以上となる夜を「熱帯夜」としており、こうした厳しい暑さが続くなか、多くの生活者にとって「寝苦しさ」は身近な悩みとなっています。
この生活者課題に対し、寝具メーカーだけでなく、アパレルや小売、専門家などさまざまな立場の企業が、それぞれの強みを生かしたコミュニケーションを展開しています。
本記事では、夏の寝苦しさに着目したPR・マーケティング事例10件を4つの切り口で紹介。機能の伝え方から体験設計まで、生活者課題を起点としたコミュニケーションの工夫を解説します。
機能・素材の伝え方で差をつくる冷感寝具
夏の寝苦しさ対策として定番なのが、接触冷感や通気性、吸湿性といった機能を軸にした商品提案です。ただし、同じ「ひんやりする寝具」であっても、寝姿勢に合わせた選び方を提案する、販売実績で安心感を示す、数値で性能を裏付けるなど、企業によって見せ方は異なります。
富士ベッド工業「cocochi factory」|寝姿勢から選ぶ「眠りの衣替え」を提案

富士ベッド工業株式会社は、2026年7月22日(水)、夏の寝苦しさ対策として3タイプの冷感枕を発表しました。単に「冷たい枕」として紹介するのではなく、横向き寝や仰向け寝といった寝姿勢、フィット感や寝返りのしやすさなど、好みの寝心地に合わせて選ぶ「眠りの衣替え」を提案しています。
冷感機能だけでは商品同士の違いが伝わりにくいなか、生活者一人ひとりの眠り方を選択軸とし、「自分にはどれが合うか」を考えるきっかけを生み出している点が特徴です。あわせて、先着1,000名を対象とした期間限定の割引クーポンも展開し、夏本番に寝具を見直す行動から購買へつなげています。
昭和西川「強冷感寝具シリーズ」|販売実績を安心して選べる理由に

昭和西川株式会社は、2026年7月16日(木)、敷きパッドや枕パッド、リバーシブルケットなどを展開する「強冷感寝具シリーズ」の累計販売枚数が2万枚を突破したことを発表しました。
新しい機能を打ち出すのではなく、「すでに多くの人に選ばれている」という実績をニュースの中心に据えています。商品数が多く、性能の違いも判断しにくい冷感寝具市場において、販売実績を生活者の安心材料に変えている点がポイント。
セット商品も提案することで、単品の機能訴求にとどまらず、寝床全体を快適にする使い方を示しています。「強冷感寝具の定番」という立ち位置を、実績と品ぞろえの両面から築いています。
Gorilla Sleep「COOL GELID PILLOW」|2層構造で機能の違いを直感的に伝える

株式会社ロウダンの自社ブランドGorilla Sleepは、2026年6月23日(火)、冷却ジェルと立体ウレタンを組み合わせた夏用枕「COOL GELID PILLOW」を発売しました。触れた瞬間の冷たさ、熱や湿気を逃がす通気孔、高さを調整できるシートなど、複数の機能を整理して紹介しています。
冷感寝具では、素材名や数値だけを示しても、生活者が実際の使い心地を想像しにくい場合があります。冷却ジェルとウレタンによる「2層構造」を核に据えることで、冷たさと寝心地を両立する仕組みを視覚的にも理解しやすくしました。
複雑な技術を詳しく説明するのではなく、構造と使用メリットを結び付けて伝える、機能訴求型PRの基本が表れています。
タンスのゲン「AG-COOL」|感覚的な冷たさを数値で裏付ける

タンスのゲン株式会社は、2026年5月20日(水)、接触冷感生地に銀イオン加工を施したリバーシブル敷きパッド「AG-COOL」を発売しました。冷たさを示す指標「Q-max(最大熱吸収速度)」が基準値を大きく上回ったとして、感覚的な「ひんやり感」を客観的な数値で示しています。
「冷たい」「快適」といった表現は商品間で似通いやすく、違いが伝わりにくいものです。そこで測定値を提示し、生活者が性能を比較・判断する材料をつくっています。
さらに、銀イオン加工による抗菌・防臭機能も組み合わせ、暑さだけでなく、汗やニオイといった夏特有の不快感までカバー。複数の悩みにひとつの商品で応える構成とすることで、購入を後押しする要素を増やしています。
ジェネレーションパス「とろさら」|触感とデザインを新たな選択軸に

株式会社ジェネレーションパスは、2026年5月15日(金)、レーヨン素材を使用した寝具シリーズ「とろさら」を発売しました。吸湿性や通気性といった機能に加え、「くしゅくしゅとした立体感」や「とろけるような肌触り」など、触覚と視覚に訴える表現を前面に出しています。
冷感寝具は機能の比較に偏りやすい一方、実際には寝室の雰囲気や肌触りも購入を左右する要素のひとつ。本事例では、くすみカラー5色を展開し、寝具をインテリアの一部として見せることで、性能以外の選択理由をつくっています。
機能競争から少し距離を取り、感性的な価値を打ち出すことで、差別化を図った施策です。
調査と専門家の知見で睡眠課題を可視化
商品を先に紹介するのではなく、調査データや専門家の見解を通じて、生活者が抱える睡眠の悩みを可視化するアプローチです。商品だけでは伝えにくい必要性を社会的な課題として提示することで、情報発信としての信頼性を高めています。
ナルエー「Moon Tan by Narue」|「暑さ」と「冷え」の両方に悩む実態を可視化

株式会社ナルエーは、2026年7月17日(金)、パジャマブランド「Moon Tan by Narue」の新作発表に合わせ、夏の睡眠に関するアンケート調査の結果を公表しました。「睡眠時の暑さと冷えの両方に悩む」と回答した人が85%に上ったことを示し、夏の睡眠課題を単なる暑さの問題として扱わず、冷房による冷えまで含めて捉えています。
さらに、健康睡眠指導士が「夏のパジャマ選びのポイント」を解説。調査で悩みを提示し、専門家が解決の考え方を示したうえで商品につなげることで、新作紹介を生活者に役立つ情報コンテンツへと広げています。
「夏は薄着にすればよい」という思い込みに対して、暑さと冷えを両立して考える必要性を提示した点も、パジャマブランドならではの発信です。
モリリン×ウェザーニュース×睡眠専門家×くらしと生協|異なる専門領域を掛け合わせて提案の信頼性を高める

繊維専門商社のモリリン株式会社は、2026年5月12日(火)、ウェザーニュース、上級睡眠インストラクター、日本生協連の通販部門「くらしと生協」と実施した座談会の内容を公開しました。気象データをもとに夏の暑さを振り返り、睡眠の専門家が、冷房と寝具を併用して熱や湿気を逃がす重要性を解説しています。
気象、睡眠、繊維、小売という異なる専門性を掛け合わせ、一企業の商品説明にとどまらない情報として発信しています。酷暑という社会背景から睡眠課題を示し、専門家が対策を解説し、購入可能な商品へつなげる流れが設計されています。
また、「くらしと生協」という販売チャネルを座組みに加えることで、啓発から購買までを一体化。複数企業がそれぞれの専門性と顧客接点を持ち寄り、情報の信頼性と生活者への届きやすさを高めた事例です。
店舗を「試して相談できる場」に変える体験型企画
寝具は、素材や機能を文章や画像だけで理解することが難しい商品です。そこで、実際に触れる、専門家へ相談する、イベントに参加するといった体験を設計し、商品理解と話題化を同時に促すアプローチがあります。
阪急うめだ本店×TENTIAL|百貨店の場を生かして商品を体験価値へ広げる

阪急うめだ本店は、2026年6月17日(水)~6月23日(火)、コンディショニングブランド「TENTIAL」の「BAKUNE掛け布団」を中心とするポップアップストアを開催しました。「クーラー時代の睡眠課題」をテーマに、睡眠のプロによる無料カウンセリングや、契約騎手・坂井瑠星氏の来店イベント、購入者限定の撮影会などを展開しています。
掛け布団の商品展示だけでなく、相談、体験、著名人イベントを組み合わせることで、来店する理由を複数つくっている点が特徴です。体感しなければ魅力が伝わりにくい寝具を、百貨店という信頼性のある場所で試せる機会に変えています。
TENTIALにとっては、オンラインだけでは接点を持ちにくい百貨店の顧客層へリーチでき、阪急うめだ本店にとっては、話題性のあるブランドや著名人を通じて来店を促せます。小売とD2Cブランドが互いの強みを補い合い、商品の販売をイベント体験へと発展させました。
対象・技術を広げて新たな需要を生み出す
大人向けの接触冷感寝具という枠を超え、特定の生活者に焦点を当てたり、異分野の技術を取り入れたりすることで、新しい選択肢を提示するアプローチです。競合の多い市場でも、どのような悩みを解決するのかを細かく捉えることで、独自の話題をつくれます。
アテックス「ベビーマット SOYO」|乳幼児特有のムレに着目して市場を細分化

株式会社アテックスは、2026年6月8日(月)、小型ファンでマット内に風を送り、ムレを軽減する「ベビーマット SOYO」を発売しました。「赤ちゃんは大人より体温が高く、汗をかきやすい」という乳幼児特有の悩みに焦点を当てています。
一般的な冷感寝具が大人の寝苦しさを主な課題とするなか、対象を乳幼児と子育て世帯に絞り込むことで、商品の必要性を明確にしました。また、接触冷感素材で体を冷やすのではなく、風を通して温度と湿度を下げるという発想も、他の商品との違いをわかりやすくしています。
自社試験による温度・湿度の変化に加え、1ヵ月の電気代の目安も示し、性能だけでなく日常的な使いやすさや経済性まで訴求。保護者が購入時に感じる不安や疑問を先回りして解消する情報設計です。
NELL|宇宙服由来の素材と光熱費高騰を結び付けて価値を再定義

株式会社Morghtが展開するD2C睡眠ブランド「NELL」は、2026年4月30日(木)、宇宙服の手袋にも採用される特殊素材「PCM(Phase Change Material)」を使用した冷感寝具を発売しました。自社調査で、夏の寝苦しさに悩む人の割合に加え、既存の冷感寝具に対する「最初は冷たいが、すぐにぬるくなる」という不満も明らかにしています。
調査で市場全体の悩みを示すだけでなく、従来商品の具体的な不満まで掘り下げ、その解決策としてPCM素材を提示している点が特徴です。「なぜ新しい冷感寝具が必要なのか」という理由が、商品機能と直結しています。
さらに、猛暑と光熱費の高騰を背景に、冷感寝具を単なる夏用品ではなく、冷房に頼りすぎず睡眠環境を整えるための「睡眠への投資」として位置付けています。異分野由来の素材による話題性と、家計負担という時事的な関心を組み合わせ、商品を「睡眠への投資」という新たな価値で捉え直しています。
まとめ|「冷たい」だけで終わらせない夏の睡眠PR
今回紹介した事例から見えてきたのは、企業が冷感機能そのものだけでなく、生活者が商品を選びたくなる理由まで設計している点です。寝姿勢に合わせた提案や、数値・実績による裏付け、専門家の知見を活用した情報発信、店舗での体験設計など、アプローチはさまざまです。
酷暑や熱帯夜が続く夏、「寝苦しさ」は多くの生活者が抱える身近な課題です。夏の睡眠PRでは、「冷たい」「涼しい」といった機能を伝えるだけでなく、生活者がどのような睡眠課題を抱え、その課題をどう解決できるのかまで示すことが、話題化や差別化のポイントといえるでしょう。
その他の事例集についてはこちら
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