“やる気が出ない5月”を救う セルフケア&組織ケアのマーケティングPR事例10選
新しい環境での緊張が少しずつ解けていく5月。一方で、知らず知らずのうちに蓄積した疲れが「5月病」として表れやすい時期でもあります。
繊細なテーマゆえに、一歩間違えれば一方的な押し付けやネガティブな訴求に捉えられかねないため、発信側には生活者への深い洞察と誠実な姿勢が求められます。
そこで手がかりにしたいのが、日常の中でにさりげない気づきを届ける「セルフケア」や、周囲とのつながりを再確認する「組織ケア」といった多角的な視点です。
本記事では、憂鬱になりがちな季節にそっと寄り添い、支持を集めたユニークなPR・マーケティング施策を10事例ピックアップ。
生活者の「負の感情」をいかに解釈し、企業への信頼へとつながるポジティブな体験へと変換しているのか。各社の工夫から、コミュニケーションのヒントを探ります。
1.自社アプリを活用した匿名データで読み解く“5月の不調”の変化

ヘルスケアテクノロジーズ株式会社は、ヘルスケアアプリ「HELPO」に寄せられた匿名の健康医療相談データをもとに、5月に見られる不調の変化を分析。感覚的に語られがちな「5月病」を、実際の相談データから読み解きます。
2024年は「やる気が出ない」といった心理的な不調が上位だった一方で、2025年は「不眠」や「身体の不調」など、体の症状として現れている結果を提示。匿名相談だからこそ拾える初期の違和感を可視化し、生活者のリアルに基づいた示唆へとつなげています。
また、5月に表面化した不調がそのまま積み重なることで、秋にピークを迎える可能性にも言及。季節のトピックで終わらせず、将来的な変化まで見据えることで、「今、ケアする意味」を浮かび上がらせる構成になっています。
自社サービスを前面に押し出すのではなく、アプリを通じて得たデータをもとに社会的な気づきを提示したうえで、相談やケアという行動へ自然に接続していく。センシティブなテーマを扱いながらも、読み手に負荷をかけず、次の一手を考えさせる発信となっています。
2.“休めない5月”を可視化し自社サービスの利用へと自然に接続

オイシックス・ラ・大地株式会社が展開する「Oisix」は、ゴールデンウィーク明けに語られる「5月病」に着目し、その実態を調査しました。
調査では、66%が「休息や睡眠が有効」と認識しながらも、60%が十分に取れていないと回答。その理由としてもっとも多かったのが「仕事や家事に追われていた」という結果でした。不調の背景を個人の問題に閉じず、休めない構造として提示しています。
さらに、50%が家事サポートサービスの利用意向を示し、特に「料理」や「献立」など食事領域へのニーズが集中。こうした結果を踏まえ、やる気が出にくい時期にこそ頼れる存在として、食卓代行サービス「デリOisix」を位置付けています。調査データを起点に、無理のない形でサービス利用の文脈をつくっている点が印象的です。
センシティブなテーマを扱いながらも、ネガティブに寄せすぎず、生活者のリアルを起点に解決策を提示する。データとサービスを自然につないでいます。
3.約3分で“自分の健康知識”を可視化 セルフケア検定が浮き彫りにした盲点

第一三共ヘルスケア株式会社は、クイズ形式でセルフケアの基礎知識を学べるWebコンテンツ「全国統一 セルフケア検定」を展開。約3分で受検できる手軽さもあり、公開から約3ヵ月で延べ2.2万人が参加しました。
「学ばせる」のではなく、検定形式で「試したくなる」設計にすることで、生活者が自分の理解度を確かめながら参加できる仕組みをつくっている点が特徴的。結果として平均点は12.6点と高水準となり、セルフケア意識の広がりも可視化されています。
一方で、分析からは「薬に関する知識」の正答率が低いという盲点も明らかに。特にZ世代では、薬の保管や飲み合わせに関する理解に差が見られ、世代ごとに異なる認識が浮き彫りになりました。
さらに、結果を単なる調査にとどめず、「セルフケア アカデミー」や検定コンテンツへと接続している点もポイントです。
生活者の“理解のズレ”を起点に、学びの場を提示することで、自然に自社の取り組みへと関心を引き寄せています。セルフケアというテーマを「自分ごと化」させるための導線づくりが際立つ事例です。
4.新生活の不調に“睡眠”で向き合う NELLが仕掛けるコンディション起点のセール

株式会社Morghtが展開する睡眠ブランド「NELL」は、2026年3月2日(月)から3月29日(日)の期間限定で「新生活応援SALE 2026」を開催しました。
就職や転勤、進学など、環境変化が重なる春に対し、「頑張る」「適応する」といった文脈ではなく、「睡眠環境を整えることがパフォーマンスを左右する」と再定義。新生活のスタートを“努力”ではなく“準備”で捉え直しています。
この視点の転換により、寝具を生活必需品にとどめるのではなく、コンディションを整えるための投資として意味付けました。やる気や気合いに頼りがちな時期だからこそ、土台となる睡眠に目を向けた発想が、そのまま商品価値へとつながっています。
季節性の高いテーマに対して、新たな解釈を与えながらサービスに接続する。新生活というタイミングの使い方としても参考になるアプローチです。
5.“春の不調は整えるもの”へ TENTIALが提案する“日常を置き換える”コンディショニング発想

株式会社TENTIALは、2026年4月1日(水)から4月14日(火)までの期間限定で、春の不調に向き合うキャンペーン「SPRING CONDITIONING」を実施しました。
新生活で生活リズムが崩れやすい時期に、無理に新しい習慣を増やすのではなく、毎日使う衣服や寝具を替えることで自然にコンディションを整えていく。そんな取り入れやすさを打ち出しています。
何かを“頑張る”ことを前提にせず、環境を調整することでパフォーマンスを支えるアプローチは、忙しい生活者にとって、継続しやすい導入方法のひとつといえるでしょう。
さらに、専門家コメントを通じて、睡眠の質がメンタルや集中力に影響する点にも触れ、春特有の不調を感覚ではなく構造的に理解させている点も印象的です。
キャンペーンでありながら、「整えるとはどういうことか」という認識そのものをアップデートする内容になっています。
6.“泊まる”をコンディション調整の場に 東京プリンスホテルが提案する快眠ステイ

東京プリンスホテルは、快眠セラピスト 三橋美穂氏監修のもと、良質な睡眠を体験できるステイプラン「やさしい快眠サポートステイ」を期間限定で販売しました。春に乱れやすい自律神経や睡眠の質に着目し、“宿泊そのものを整える時間”として提案しています。
客室にはマッサージシートやアイマスク、快眠枕などをそろえ、さらに書籍やパジャマは持ち帰り可能に。滞在中の一時的な体験にとどめず、自宅での行動変容まで視野に入れた構成になっています。
また、東京タワーを望む非日常的な空間と組み合わせることで、休むことへの心理的なハードルを下げている点もポイント。日常の延長ではなく、あえて環境を変えることで、コンディションを見直すきっかけをつくっています。
春の不調というテーマに対し、商品ではなく“体験”でアプローチする。滞在価値そのものを再定義したプランといえそうです。
7.“続けられる仕組み”で習慣化を後押し あすけん×はるやまがつくる新生活の行動設計

株式会社askenが運営する『あすけん』と、スーツ・紳士服のはるやま商事株式会社は、新生活に向けた健康習慣づくりをテーマにコラボキャンペーンを実施しました。「何をすべきか」ではなく、「どうすれば続くか」に焦点を当てた提案です。
まず、自社調査の結果をもとに「睡眠の質向上」や「食事改善」が上位に挙がる一方で、体調管理や生活習慣への不安も一定数存在していることを提示。こうした“やりたいけれど続かない”状態に対し、『あすけん』上で5日間体重を記録するチャレンジを設計し、まずは行動のハードルを下げています。
さらに、はるやまのリカバリーウェア「YOKUNERU」を達成者へのリワードとして用意している点も注目ポイントのひとつ。記録という行動から、睡眠環境の改善へと自然に接続される構成になっています。
食事管理アプリとビジネスウェアブランドという異なる領域を掛け合わせながら、「習慣化」という共通テーマで一貫した体験を設計し、具体的な行動導線まで落とし込むアプローチは、異業種コラボの好例として参考になりそうです。
8.“5月病になる前”に香りで整える CRYSTAL INSENCEが提案する4月からのセルフケア習慣

キャンプ女子株式会社が展開するお香ブランド「CRYSTAL INSENCE」は、火を使わないスプレータイプのお香「RITUAL ESSENCE」の限定レシピ「牡羊座新月」を発売しました。5月の不調を迎えてから対処するのではなく、その前段階である「新生活疲れ」に目を向けてたアプローチです。
新入社や異動、転居などで環境が大きく変わる4月に対し、香りを通じて呼吸と空間を整える習慣を提案。お香という伝統的なセルフケアを、マンションやオフィス、子育て中の家庭でも使いやすいスプレータイプへと置き換えることで、現代の生活シーンに合わせているのが特徴です。
また、牡羊座新月という“はじまり”のタイミングに合わせ、「はじまりの呼吸」というテーマを設定しているのも印象的。春の不調を単なるネガティブな話題として扱うのではなく、新しい季節を整えて迎えるための儀式としてポジティブに表現しています。
ストレスチェック義務化など、メンタルヘルスケアへの関心が高まる流れを背景にしながら、制度や不調の話に寄りすぎず、香りによる小さな習慣へと落とし込む。セルフケアを“特別な対策”ではなく、日常の中で取り入れられる時間として提示した事例です。
9.“5月病対策”を運用に落とすフラクタルワークアウトの先回り型プログラム

フラクタルワークアウト株式会社は、4月の環境変化とゴールデンウィーク明けの立ち上がり遅れに備える「5月病対策プログラム」の提供を開始しました。5月病を個人の気分や不調として扱うのではなく、組織で先回りして整えるべき運用課題として捉えています。
就業中に実施できる短時間運動と、睡眠・疲労・回復・休憩などを扱うセルフコンディション教育を組み合わせて提供する本プログラム。新入社員や若手、管理職など対象別に設計し、4月の環境変化からGW明け、6月以降まで続く不調の入口を早期に整えています。
さらに、参加率や継続率、自己申告指標の推移などを運用指標として管理しているのもポイント。単発の研修や注意喚起で終わらせず、施策を回しながら改善していくことで、企業側が説明可能な取り組みにしています。
「気合いで乗り切る」ではなく、仕組みとして備える。5月病対策を健康経営や人的資本経営の文脈に引き寄せ、組織ケアとして実装した発信といえるでしょう。
10.“泊まるだけ”から“自分を知る場”へ ナインアワーズが産学連携で睡眠体験を再設計

株式会社ナインアワーズは、同社が運営するカプセルホテル「ナインアワーズ」の新店舗として、「ナインアワーズ北新宿」を開業しました。東京女子医科大学と連携した初の大学連携店舗です。
同店舗では、睡眠解析サービス「9h sleep checkup」に加え、体成分分析装置や自動血圧計などの測定機器を設置。宿泊者が自身の身体状態や健康指標を知ることができる環境を整えているのが最大の特徴です。ホテルを単なる宿泊場所ではなく、自分のコンディションを可視化する場として再定義しています。
さらに、東京女子医科大学の医師・研究者との連携により、睡眠や健康、東洋医学などの知見を活用。必要に応じて専門的な情報提供や次の相談につながる導線も想定されています。
日常に近い「泊まる」という行為を起点に、休息の質や生活習慣を考えるきっかけをつくる。スリープテックと医療知見を掛け合わせ、都市型ホテルの価値を広げています。
“やる気が出ない5月”に セルフケア&組織ケアのマーケティングPR事例まとめ
不調をただ伝えるのではなく、生活者の状態に寄り添いながら“どう整えるか”まで設計する。今回の事例からは、そんなコミュニケーションの変化が見えてきます。
データ、習慣、体験、仕組みといったさまざまなアプローチを通じて、無理なく行動につなげる。セルフケアや組織ケアは、伝え方次第でポジティブな接点へと変わっていきます。
生活者の不調や不安をどう扱うか。今回の事例には、“売り込む”のではなく“寄り添う”ことで接点を生み出すヒントが詰まっています。
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