【速報】カンヌライオンズ2026「Experience」部門グランプリ受賞作品まとめ
2026年6月22日(月)から26日(金)まで、フランス・カンヌで開催されている「Cannes Lions International Festival of Creativity 2026」。世界中の広告・マーケティング・コミュニケーション領域の関係者が集まり、優れたクリエイティブを表彰する国際的なフェスティバルです。
今回は、ユーザー体験やビジネスにおける慣習に変化を与えた作品に贈られる「Experience」部門において、ユーザーのブランド体験を斬新な形でアップデートした作品を評価する「Brand Experience & Activation Lions」、クリエイティブを駆使してビジネスのあり方を変えた作品を評価する「Creative Business Transformation Lions」、販売という観点において新たな道を指し示した作品を評価する「Creative Commerce Lions」、新規性のあるクリエイティブで話題を生み出した作品を評価する「Innovation Lions」、独特の世界観を構築するラグジュアリーブランドのコミュニケーションの中から斬新なアプローチを見出すことができた作品を評価する「Luxury Lions」の5つの賞におけるグランプリをご紹介します。
Brand Experience & Activation Lions
Expedition Impossible(Columbia Sportswear)
アウトドアアパレルブランドのコロンビアが2025年12月に公開した、皮肉をたっぷりと込めたジョーク施策が見事グランプリを受賞しました。“地球に関するとある言説”を信じる人たちに向けて、その言説が真実であるという証拠を写真に収めることができれば会社のすべての資産をプレゼントする、という前代未聞の挑戦状を打ち出したのです。
“Expedition Impossible(到達不可能な大冒険)”というタイトルの動画に登場するのは、コロンビアの社長・Tim Boyle氏。「地球平面説を信じる皆さん、こんにちは。今日わたしがお伝えしたいメッセージはただ1つ:もしあなたの主張が本当に正しいのであれば、その証拠写真を撮影してきてください。そうすれば、この会社が持っているすべての資産を差し上げます」と言ったかと思うと、Boyle氏が自ら社内を歩き回り「あれも、これも、それも、すべてあげます」と宣言してしまうのです。
科学的には地球が丸いことはすでに証明されていますが、近年ある種の陰謀論として再燃している“地球平面説”。アウトドア、すなわち地球が誇る大自然をブランドの中核に据えているコロンビアだからこそそのような言説が正しいのであれば証拠を持ってきてほしいという、とにかく尖っていて挑戦的なメッセージをユーモアたっぷりに描きました。
公式YouTubeチャンネルにアップされている動画の説明文には、ご丁寧に「“地球の果て”とは、地球が文字どおり目に見えるかたちで物理的に終わる場所のことです。果てしない断崖絶壁、底知れぬ虚無、どこまでも落ちていく雲……そういった場所を指します。“地球の果て”に該当しないものをいくつか挙げておくと、シアトルの崖の上、カンザスの行き止まりの住宅街、そしてあなたの友人のデイブが“地球の果て”に改名したとして、彼の写真を送ってきたとしても、残念ながら該当しません」と書かれています。陰謀論をフックにしながらブランドの価値観をしっかりと打ち出した点が評価されたのではないでしょうか。
Creative Business Transformation Lions
The Wedding Rice(Wikifarmer)
ギリシアの結婚式では、新郎新婦の健康と幸せを願って2人に米粒を投げるという伝統があります。古くから親しまれている文化である一方、食べられるお米を結婚式で大量に使用する慣習には、サステナビリティの観点から課題もありました。そんな中、文化とサステナビリティの両立を目指した農業向けB2Bプラットフォーム・Wikifarmerが実施した施策がこの課題の根本解決につながる糸口を見つけたとしてグランプリの座に輝きました。
“The Wedding Rice(結婚式米)”というシンプルな名前が付けられた施策は内容そのものもシンプルで、これまで米農家が規格外品として処分してきた“流通しないお米”を結婚式用の“投げるためのお米”として販売するというもの。これまでは売り物にならないからという理由で廃棄されていたお米を、どのみち食べられないのであれば手に取りやすい価格で結婚式用に販売しようという発想の転換を通じて伝統をサステナブルな方法で守るという良いところ取りを実現したのです。
年間200トン以上のお米の節約につながることが期待されているこの施策。アイデアひとつで理想を実現したことに加え、高い汎用性も評価されたのでしょう。
Creative Commerce Lions
Lucky Fan Index(Wisła Kraków Football Club)
クリエイティブの活用を通じて新たなマネタイズ手法を確立した事例を賞賛するCreative Commerce Lionsでグランプリを獲得したのは、ポーランドの名門サッカークラブ・Wisła Krakówがプロリーグの1部から降格した際に、来場客数増加を狙って実施した、サポーター向けロイヤルティ施策でした。
※上記の動画は参考掲載です。Wisła Kraków公式の発表内で紹介されたものではありません。
同チームが着目したのは、ポーランド国内の「スポーツ観戦客を全員ID別に識別し管理しなければいけない」という法律。おそらくはスポーツスタジアム内での暴力的な事件を予防することを目的に作られた法律かと思いますが、Wisła Krakówはこの法律を逆に活用し「これまで現地観戦してくれたすべてのサポーターが観た試合で起きた、チームにとって“いいこと”と“悪いこと”に点数をつけ、各サポーターの“運”そのものを点数化し格付けした」のです。例えば、Aさんがこれまで3回現地観戦をし、その内2回は勝ち1回は負けたのだとしたらAさんの運レベルは〇〇点……Bさんが現地観戦した試合はすべて勝ったものの、すべての試合でWisła Kraków側の選手にイエローカードが出ていた場合、相殺されて〇〇点、など、サポーター本人が持っている“運”を集計し、公開したのです。
「自分が現地観戦をすると必ず勝つ」などの、まるで晴れ女や雨男のような、真実か嘘かわからないような迷信が語られがちなスポーツにおいて客観的な事実に基づいて全員の運を可視化し、運のいい人にはスタジアム内のプレミアムシートを、運の悪い人にはグッズの割引クーポンをプレゼントするという行動を促す仕組みにすることで低迷する売上アップへとつなげることに成功した事例でした。
Innovation Lions
Supernova Adaptive(Adidas)
世界中に600万人以上いるといわれているダウン症のあるは、そうでない方とは異なる足の形をしているケースが多く、結果的に足にフィットする靴がないという課題を抱えていました。靴がフィットしないということはマラソンをはじめとしたランニング競技を楽しむことができないということと同義……その状況を変えるために開発されたアディダスのスニーカーがグランプリの座を手にしました。
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3年にも及ぶ開発期間と6つの試作品を経て誕生したSupernova Adaptiveは、数えきれないほどの試着とテストラン、インタビューを通じて作られた、まさにダウン症候群の方に“シンデレラフィット”する専用のスニーカー。現在は29もの国と地域で販売されており、オンラインストアでの購買のうち実に42%が新規顧客という驚異的な数字を叩き出すことに成功しています。
600万人もの潜在顧客がいたのにも関わらずこれまでどのメーカーも向き合ってこなかった領域に自ら踏み込み、多くの時間と資金をかけてスポーツアパレル業界に新たな可能性を見出したことが評価されたのではないでしょうか。
Luxury Lions
Warmer Together(Moncler)
フランス発祥のファッションブランド・モンクレールが公開した、往年の名俳優アル・パチーノとロバート・デニーロが共演した長尺ブランディング動画がLuxury Lionsのグランプリの座に輝きました。長年の友人である2人がモノクロの世界の中で再会し、他愛のない話を交わしながら親交を確認し合うエモーショナルなキャンペーンとして、ラグジュアリーブランドのあり方を再定義したと評価されています。
“Warmer Together(一緒にいた方が温かい)”というタイトルと“Warmth was never about the outside(温かさはいつだって内側から生まれるもの)”というキャッチフレーズが印象的なキャンペーンには、斬新な企画性や複雑な戦略、目を引く鮮やかな色味はなく、ただただ静かで温かく、純粋な愛や友情、人と人のつながりを感じるような不思議な魅力があります。
キャスティング上の友人としてではなく、リアルな親友として呼ばれた2人だからこそ演出できる独特な空気感と、どこまでも真っすぐで温かいモンクレールらしさが評価されたのではないでしょうか。
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