【Part 4】第56回スーパーボウル広告まとめ

アメリカンフットボール(以下、アメフト)の優勝決定戦である第56回スーパーボウル(以下、スーパーボウル)が、2月13日に開催されました。スーパーボウルとは、プロアメフトリーグNFLに参加している32ものチームの内、レギュラーシーズンとプレーオフを勝ち抜いた上位2チームがその年の頂点の座を賭けて競う、規模、経済効果ともに世界最大級のスポーツイベントです。

毎年視聴率が40%を超えるスーパーボウルは、多くの企業が渾身の広告を出稿する場としても知られ、その広告枠は30秒で650万ドル(約7億5,000万円)と言われています。

今回はアメリカ全土に放映されたCMのなかから、オフィシャル素材があるものをアルファベット順に10ずつ分け、合計6記事に分けてご紹介いたします。

過去のまとめはこちらから
【Part 1】第56回スーパーボウル広告まとめ
【Part 2】第56回スーパーボウル広告まとめ
【Part 3】第56回スーパーボウル広告まとめ

「Welcome to Irish Spring」(Irish Spring)

男性向けボディーソープをはじめとした衛生用品を展開するIrish Springは、男性特有の体臭を打ち消すことができる自社の商品力を前面に打ち出すため、自然豊かな渓流を彷徨いながら、良い香りに満ち溢れた謎の土地へと辿り着いた汗まみれの中年男性を主人公としたCMを公開しました。

男性が周囲を見渡し「ここは一体どこなんだ?」と問いかけると、笑顔の老婆が「Irish Springへようこそ。ここまで来た人は誰であっても歓迎するわ」と答えますが、横から割り入った若い男性は「悪臭漂う人だけは歓迎できないがな……」と突然敵意を剥き出しにして睨みつけます。

少女が膝に抱えていたウサギが「その悪臭をなんとかせねば」と畳み掛けるように言い放つと、迷い込んだ中年男性は突然拘束され、湯気が沸き立つ場所へと連れ去られてしまいます。「悪臭よ消え去れ! 悪臭よ消え去れ!」と人々が叫ぶ中、お湯から出てきた中年男性は清潔感溢れる格好に変わっており、どうやらIrish Springのボディソープを使って全身を洗われたようです。

最後は、”Smell From a Nice-Smelling Place(良い香りがする場所から届いた、良い香り)”というキャッチコピーで幕を下ろします。

「Robo Dog」(Kia)

電気自動車(以下EV)の開発に積極的に取り組む自動車メーカーKiaは、自社のEVに一目惚れをしたロボット犬の一途な友情物語を描くことで、機械同士の不思議な繋がりをストーリー仕立てに表現しました。

$299の値札を付けられ、誰の目にも留まることなく1人さみしく店頭に立っているロボット犬が、店先に停まったKiaのEVを目にするところから動画ははじまります。自分と同じ電気駆動の友だちを見つけることができたあまりの嬉しさに、店を飛び出し全速力で車を追いかけるロボット犬。

人混みをかき分け、時にはエレベーターにも乗り、とあるビルの屋上からようやく目当てのEVを見つけたロボット犬ですが、いざ飛び降りようとした瞬間バッテリーが切れてしまい目の前が真っ暗になってしまいます。

つぎに目を覚ますと、EVの持ち主だった男性がEVに使う充電機器をそのままロボット犬に差し込み充電してくれていたことが判明。新しいペットとして迎え入れられ、EVに乗って街を疾走している姿を映しながら動画は終わります。

「Golden Memories」(Lay’s)

大手菓子メーカーのLay’sは、自社の主力商品であるポテトチップスのCMを公開。2人の超人気俳優同士の友情を描きつつ、思い出の中には常にLay’sの姿があったことを見せ、製品をPRしています。

コメディアンや俳優など、マルチに活躍する2人のスーパースター、ポール・ラッドとセス・ローゲンが、挙式会場の前に座り込んでいるところを映しながら動画は幕を開けます。手にしたポテトチップスを差し出しながら「緊張してるのか?」と問いかけるポール。少し強張った面持ちのセスは、「ちょっとな」と言いながらポテトチップスを1枚袋から取り出します。

そんな友人の姿を見て、少しでも落ち着かせるために「安心しろよ、俺らの思い出にはいつだってLay’sがいてくれたじゃないか。2人ではじめて旅行をした時も、変質者に誘拐された時も、偶然ギャングの喧嘩に割り入ってしまった時も……」と声をかけるポール。回想シーンでは、良い思い出から悪い思い出まで、さまざまな場面でLay’sが2人の関係性を彩っていた様子が映されます。

「お前がはじめて家を買った時だって、Lay’sは俺たちのそばにいてくれたじゃないか」と話を続けるポール。回想シーンでは、物が山積みにされた段ボール箱を持ちながら空き家に入っていく2人の姿が。明らかに呪われた家の奥に潜んでいた女性の悪霊に襲われてしまった時も、Lay’sは2人を勇気付けていたことが伺えます。

「そろそろ行こうか」というセリフと同時に立ち上がる2人。ここではじめて、セスは自らの結婚式を前に緊張していた設定だったことが明かされます。神父役を務めるポールが新婦に目をやると、そこには先ほどの家の中にいた悪霊が。

最後は、ブランドカラーであるゴールドにちなんだキャッチフレーズ”STAY GOLDEN(どんな時だって黄金のように輝く人生を)”を映しつつ幕を下ろしました。

「Old Friends, New Fun」(Meta Quest)

Facebookの運営会社Metaは、職を失ってしまったぬいぐるみの友人同士がMeta Quest 2のVR空間を通じて再会することができた様子を描いたCMを公開しました。

Questy’sという架空のレストランで、ライブエンターテイメントのバンドメンバーとして活躍していた犬のぬいぐるみが廃業に伴いその役目を失ってしまい、質屋に売り飛ばされてしまう様子を映すところから動画ははじまります。

彼はいくつかの新天地を転々としますが、結局仕事はなくなってしまいます。お役御免となりプレス機にかけられる寸前で、なんとか助け出される犬のぬいぐるみ。

新しい職場ではMeta Quest 2を使ったイベントを行なっており、とある客が使用済みのデバイスを帰り際に犬のフィギュアに被せます。

すると、そこにはかつて一緒にバンドメンバーとして活躍していたQuesty’sの姿が。バーチャル空間の中で思い出の場所が再現されていたことに感動したフィギュアは、そのままMetaの世界の中で友情を噛み締める様子とともに動画は終わります。

「Superior Bowl」(Michelob Ultra)

低カロリー、低糖質のビールMichelob Ultraが公開したCMでは、あらゆる業界で活躍するトップスターたちが集結する寂れたボーリング場を舞台とした動画を公開。スーパーボウルにちなんだ名前の”Superior Bowl(偉大なボーリング場)”というタイトルとして、イベントとの親和性を高めています。

名俳優スティーブ・ブシェミが営むボーリング場を訪れるアメフト界の伝説的プレイヤー、ペイトン・マニングの姿を映すところから動画ははじまります。

ボーリングシューズを受け取り、レーンへと歩んでいき、周りを見渡すとそこには女性NBA選手のネカ・オグミケや女子サッカーのアメリカ代表選手、アレックス・モーガン等壮々たる面々が。

それぞれがボールを手に取り、横並びのレーンで点数を競い合う中で突然鳴る店の鈴。ゲーム中の皆が視線を向けると、そこにはテニス界のスーパースター、セリーナ・ウィリアムズの姿がありました。

あまりにも豪華な出演陣は、スーパーボウルのCM枠を彩り幕を下ろしました。

「Caddy」(Michelob Ultra)

Michelob Ultraが展開するハードセルツァーブランドOrganic SeltzerのCMは、前述の”Superior Bowl”の設定をそのまま受け継いだ形で、ボーリング場内で繰り広げられる会話劇を描きました。

プロゴルファーのブルックス・ケプカが、おすすめのアルコール飲料を俳優のカート・ユエに尋ねるところから動画ははじまります。

「おすすめだったらMichelob Ultra Organic Seltzerがいいんじゃないかな。原材料はオーガニックだし、カロリーも糖質もゼロだし」と答えるカート。あまりにも出来すぎた答えに納得できずにいるブルックスは、何度も「本当か?」と聞き返してしまいます。

しつこく同じ質問を聞いてくるブルックスに嫌気が差したカートは、「そうだと言っているだろ。ちなみにオーガニックだってことも聞いてたか?」と笑いながら突き返します。さすがに納得した様子のブルックスがOrganic Seltzerを注文するところで動画は幕を下ろします。

統一された世界観の中でさまざまな業界で活躍するスターたちの会話劇を紹介したシリーズに、この後の展開を期待する声が多く寄せられたようです。

「2022 Movie Preview and The Adam Project」(Netflix)

動画コンテンツ配信サービスのNetflixは、2022年に公開予定のオリジナル作品が多数控えているということを伝えつつ、その中でも同社が力を入れている大作”The Adam Project(邦題:アダム&アダム)”のトレーラーをCMとして取りまとめ、一挙に公開しました。

豪華俳優陣が主演を務めるさまざまなコンテンツを、毎週独占配信するというメッセージとともにはじまる動画は、”Day Shift”や”The Gray Man”、”Me Time”など公開前から注目を集めている話題作の魅力的なシーンと連続的に紹介しています。

CMの後半は、数ある作品の中でもNetflixが2022年に最も力を入れている作品とも噂されている”The Adam Project”にスポットライトを当てており、ライアン・レイノルズが主役を務める同作は、過去と現在の2つの時間軸を移動したアダムと呼ばれる主人公が数々の困難に立ち向かうアクション大作です。

「Bring Down the House」(NFL)

スーパーボウルの主催者でもあるNFLは、年に一度の決勝戦の場でアメフトというスポーツが誇る躍動感や力強さ、そしてそこから生まれる興奮や感動といった感情をユーモアたっぷりに描いたブランディング動画を公開しました。

動画の主人公は、アメフトのゲームをプレイしている仲の良い兄弟。ゲーム内の試合に兄が勝つと、妹は「まだまだ、これからだよ」と次の試合に向けての意気込みをつぶやきます。すると突然、画面の中からゲームの選手たちが次々と現実世界へと飛び出してきてしまいます。

少女の予言通り、現実世界で試合を続ける選手たち。テーブルの上を駆け回ったり、天井からぶら下がるランプに捕まったり、棚を破壊したり、とにかくボールを奪い合うために全力を尽くしている様子が描かれます。

途中あらぬ方向に飛んでいったボールが、ソファで寝ていた祖母の口に入ってしまいますが、そんなことはお構いなしと言わんばかりにボールの奪い合いを続ける選手たち。

最終的にタッチダウンが決まり、屈強な選手たちは元いた世界へと吸い込まれてしまいますが、残された家は荒らされたまま。なにも知らない兄弟の親が帰宅すると、その惨事を目の当たりにして悲鳴を上げます。

怒られる覚悟を決めた2人ですが、昼寝から起きてきた祖母が「何言ってるのよ、アメフトに決まってるじゃない」という決めセリフを言い放ち危機を救うところで動画は幕を下ろします。

「Thrill Driver」(Nissan)

Renault傘下の自動車メーカーNissanは、自社の自動車を映画の世界観の中でダイナミックに描いたCMを公開。俳優のユージン・レヴィやブリー・ラーソン、元プロレスラーとして有名なデイヴ・バウティスタなど豪華出演陣がカーチェイスあり、爆発ありのアクションを演じました。

ひょんなことからNissan車を運転することになったユージン。最初は街中を少し運転するだけのつもりだったようですが、あまりの快適さにみるみる内にハンドル捌きは華麗になり、気付けばデイヴを巻き込んだアクションシーンへと切り替わっています。

悪の組織とビルの屋上で対峙するユージン。逃げ場のない緊張感が走るなか、状況を打破するために彼はまさかの正面突破を選択し、敵の車の上を飛び越える形でビルから車ごと飛び降ります。

そのまま派手な爆発シーンを最後に劇中劇は幕を下ろし、現実世界で再び顔を合わせる出演陣の面々。迎えの車の運転席に乗り込もうとするユージンですが、映画と同じような結末を避けるために鍵を奪われるという結末を迎えます。

「What’s Gotten into Lindsay?」(Planet Fitness)

フィットネスジムを展開するPlanet Fitnessは、ハリウッド屈指のお騒がせ女優リンジー・ローハンが運動を通じて性格が変わっていく様子を描いたCMを公開しました。

ジムで有酸素運動に取り組むリンジー。あまりの集中力に周囲の様子が見えていないリンジーに周りの人々は驚き「リンジー、一体どうしちゃったんだい?」と問いかけます。

「リンジーは元々頭が良い女優でもなければ、健康的な時間に睡眠を取るような女優でもないはず。パパラッチの皆さんは彼女の姿を撮影することができずに泣いているとの噂もあります」と語るナレーション。

元々は日夜パーティーに明け暮れて、パパラッチの格好の撮影対象にされていた彼女ですが、何かをきっかけにDIYにも取り組み始めたようです。

シーンはジムへと戻り、通りすがりのリンジーを横目で見ていた男性が「きっと何かがリンジーを変えたのに違いない」とつぶやくところで動画は幕を下ろし、誰しも運動を通じて健全な精神を手に入れることが可能なことを示しました。

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