ここをタッチしながらご覧くださいーーPARTY NY×安室奈美恵さん ミュージックビデオ制作の舞台裏

Case: 安室奈美恵「Golden Touch」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、クリエイティブ・ラボ「PARTY NY」川村真司さんと、映像プロダクション「LOGAN」Kenji Yamashitaさんが手がけた安室奈美恵さんのニューアルバム「_genic」収録曲「Golden Touch」のミュージックビデオを取り上げます。

冒頭に「ここをタッチしながらご覧ください」(「ここ」は画面中央)と出てくる通り、画面をタッチしたまま閲覧していくと、まるでその指にミュージックビデオが反応して動くように見える仕掛けになっています。このアイデアはどのようにして生まれたのか、PARTY NY Executive Creative Director / Founderの川村真司さんに伺いました。

Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
視聴者が実際に映像をタッチできるような”騙し絵的な”体験を

—Golden Touch MV制作には、どのような経緯で携わられることとなったのでしょうか?

本件のプロジェクト・マネジメントをしているEPOCHの石澤さんを通して、安室さんとレーベルから「アーティストの出演がない中で、クリエイティブな遊び心にフォーカスしたビデオ」を作りたいというご相談をいただきました。企画が決まった後は、同じくNYで活動している映像プロダクションLOGANを誘って、すべてニューヨークで完成させました。

—制作時の与件などはございましたか?

上記の通り、「アーティストが基本的には出演しない」「最終的にはDVDにパッケージされる」ということが前提としてありました。

—今回のMVのアイデアは、「Golden Touch」という曲名から着想されたかと思いますが、このアイデアが生まれるまで、苦労された点などございますか?

アイデアは意外とすぐに思いつきました。「Golden Touch」というタイトルと、印象的な歌詞を聞いた時、視聴者が実際に映像をタッチできるような騙し絵的な体験を作れないだろうかと考えました。DVDにもなることが前提であったので、実際にインタラクティブなのではなくて、タッチスクリーンのいらない疑似的なインタラクティブ体験にできたら新しいのではないかと考えました。(最終的にはアプリバージョンもローンチしましたが。)

—制作にあたってのコンセプト、こだわられた点などありましたら、お教え頂けますか。

実際には触っていないのに、触っているような気がするような体験を作るために様々な試行錯誤をしました。どのくらいズームすれば押しているような気がするか、どのくらいのスピードで画面がスライドしたら物体を倒しているように感じるか。科学実験をしているような気持ちでいろいろ試すのがとても楽しかったです。

良い音楽と強い映像アイデアがあれば、バズが起こせる

—安室さんやレーベルから、このMVについて反応・感想などございましたか?

これまでとは違ったアプローチの作品ができた、ととても喜んでいただけました。ローンチして数週間しか経っていないにも関わらず世界中で800万回以上再生されるなど、これまでのリスナー以外の層にも彼女の音楽を届けられたという意味で、新しいだけでなく非常に良い機会にもなったともおっしゃっていただきました。

—かなりの話題となっていますが、ユーザーからの反響は予想通りでしょうか。または、予想以上でしょうか。

世界中の人々にも体験して話題にしてもらえるような企画を考えたつもりでしたが、正直このスピードでの拡散は想像以上でした。良い音楽と強い映像アイデアがあれば、こういったバズが起こせるということを再確認させてくれました。

—これからも安室さんのプロジェクトに関わられる等、今後の展開予定がもしございましたらお教え頂けますでしょうか。

今後も安室さんのプロジェクトには関われたら嬉しいですね。ビッグネームがありながら常にクリエイティブに関してチャレンジングなアーティストはまだまだ少ないので、彼女と一緒にこうしたコンテンツの先例をドンドン作れたら良いなと思います。

PARTY NY
Executive Creative Director / Founder
川村真司さん

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