外部との積極的なコラボで、佐賀県をPR〜町の人口の約2倍の来場客「スプラトゥーン」との連携成果に迫る

Case: 佐賀県「サガプライズ!」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回は佐賀県によるプロジェクト「サガプライズ!」を取り上げます。

「サガプライズ!」とは、企業・ブランドとコラボレーションして佐賀の地域資産を磨き上げ、全国に佐賀県の魅力を発信。また、活動から得られた知見や手法を地域にフィードバックすることで、“情報発信による佐賀県の地方創生”を目指すプロジェクト。

今回はゲーム「Splatoon(スプラトゥーン)」とのコラボ「Sagakeen(サガケーン)」を取り上げます。東京タワーでのイベント、佐賀・呼子でのイベント、両地域でのイベントを実現。実現の舞台裏について、サガプライズ! プロジェクトリーダー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 金子暖さん、サガプライズ!プロデューサー 佐賀県 統括本部 危機管理・広報課 田中裕資さんにお話を伺いました。

[前編:「ロマンシング佐賀」実現の舞台裏はこちら]

Interview & Text : 市來 孝人
開始から40日間で、町の人口の2倍近くの方が来訪

—この冬はゲーム「Splatoon(スプラトゥーン)」とのコラボ企画が実施されていますね。

田中:毎朝のアイデア会議の中で「スプラトゥーン」が発売されてすぐに話題になっていて、ゲームメディアだけではなく、経済系のメディアも取り上げていて目に留まりました。このゲームの主人公はイカですが、佐賀県の呼子という地区はイカの名産地だし、何か出来るのではないかと。

早速任天堂さんに企画書をお持ちしたところ前向きに乗って頂きました。「ロマンシング佐賀」でのスクウェア・エニックスさんとの仕掛けもご存知で「ゲーム業界の中でも佐賀県は話題になっていますよね」とおっしゃって頂きました。最初は佐賀県で何かしましょうという提案だったのが、東京タワーでのイベントや、ゲーム作中での登場と、広がっていきました。

金子:今回は「ロマンシング佐賀」の「1」「2」でやったことを一回で凝縮してやった印象です。

—東京タワーでのイベントが12/25まで、佐賀県(呼子)でのイベントが1/31までと一ヶ月ずらしているのは、東京をはじめ県外から足を運んでもらおうという狙いですか?

田中:そうですね。東京でのイベントは事前の盛り上げという位置づけがあります。呼子自体は元々観光地として確立していて特に夏は気持ちよく過ごせるのですが、冬場になると落ち込んでしまうんですね。そこの谷間を埋めるという目的もあり、この時期に実施しています。現地では遊覧船をラッピングして「スプラ丸」として楽しんでもらったり、コラボグッズの販売、スタンプラリーなどを実施しています。

スタンプラリーは、元々呼子の中でも名所として知られる箇所にスタンプを設置しています。「スプラトゥーン」をきっかけに、元々あるその土地の魅力にも触れて頂きたいなと。

—進捗はいかがですか?

田中:1月10日(日)に1万人を突破したのですが、呼子エリアの人口が約4,900人なので、開始から40日間で町の人口の2倍近くの方に訪れて頂いている形になります。1万人目は山梨県笛吹市の家族連れで「このために初めて佐賀に来ました」とのことでした。

食事や遊覧船・グッズなどでお一人当たり約1万円程度使って頂いているわけですし、現地の方も「革命が起きたように人が来る」「こんなに若い人達が朝市を歩いている」といった声を寄せてくださっています。今回は特に若い方に来て頂いているので、将来家族を持った時などに、また来てくれるようになれば嬉しいです。

また、最新の動きとしては「スプラトゥーン」とコラボした有田焼豆皿1,000枚(1枚1,200円(税抜))を、1月27 日(水)より「呼子のイカす広場」で店頭販売。さらにイベント最終日の31日(日)には、コラボした唐津焼の小皿も25枚限定(1枚2,500円(税抜))で発売します。両商品は、「闘会議2016」(1月30日(土)、31日(日))での販売も予定しています。

「良い取り組み」と言われることより「話題になるかどうか」を重要視

—その他にもこれまで、BEAMSやゼクシィなど様々な企業・ブランドとコラボしていますが、企業側としてはどういう狙いで実現することが多いのでしょうか?

金子:ご提案を頂く場合、こちらからご提案する場合、それぞれ半分くらいですね。狙いとして最も多いのは、地方を元気にするということが商品のイメージアップにも繋がるという点です。今は地方創生の機運も高まり、地域貢献をしている企業の商品を買いたいというユーザーも多いようなので。

他には、地方と組んでのビジネスモデルづくりのモデルケースとしてという場合も多いです。例えば宝島社さんとのコラボムックが他の県でも展開されたり、ゼクシィさんの「ご当地結び」という企画が他の県で実現したりしています。新しいビジネスチャンスを佐賀と組むことで見つけて頂ければ嬉しいですし、我々としても、佐賀が第一弾になったプロジェクトは、他の県で実現した時に、「佐賀でも実施」ということが過去事例としてニュースに出てくるメリットもあります。

CSR・社会貢献的な企画については、我々は商品を開発したり、セールスプロモーションを実施するという意味合いが強いので、県の別の部署をご紹介させて頂くことになります。

—コラボする企業については、どのような基準で選定されているのでしょうか?

金子:8つほどの指針を設けています。この指針は開示していないのですが、前提としてはユーザーの生活の導線にある商品かどうか、特にこれから市場をリードしていくような20〜30代をターゲットにしています。佐賀に何かあるかを知らなかったり、はなわさんの歌(「佐賀県」)での比較的ネガティブな印象も残っていたりするようなので(笑)。

「話題になるかどうか」も重要な観点です。「良い取り組みだ」と評価されても、一般のユーザーにまで届かなかったりする場合も多かったりします。「良い取り組み」と言われることより「話題になるかどうか」を重要視するようにしています。この「話題」については毎日、新聞を読みながらどんなことが今トレンドとなっているか、スタッフ全員でブレスト会議をしています。

—仕事がまるでPR会社のようですね!

金子:実は企画書以外にも、佐賀の情報をまとめた「ファクトシート」の作成なども行っています。

—ちなみに金子さんは異業種(アパレル)にいらしたとのことですが、そのご経験も活かされているのでしょうか。

金子:アパレルでは新規事業開発をしていました。その時に例えば「今ウォーキングが流行っているから、ウォーキングのブランドを立ち上げよう」となった時に形にする仕事をしたり、地方の工芸品とのコラボをすることもありました。そういった経験から、自治体側に回ってみたいと思い、今に至ります。


サガプライズ! プロジェクトリーダー
佐賀県 統括本部 危機管理・広報課
金子 暖さん(右)
サガプライズ! プロデューサー
佐賀県 統括本部 危機管理・広報課
田中 裕資さん(左)

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