“I love you” に隠された目を背けたくなる“もう一つのメッセージ”

Case: I Love You

全米で最大の募金組織である「ユナイテッド・ウェイ」のプエルトリコ支部が手掛けた、『家庭内暴力の被害者を支援する』PRプログラム。

背景

プエルトリコでは家庭内暴力の発生件数が当局への報告がなされたものだけで、前年比で16%も増加しています。

このような深刻な社会問題の背後には、家庭内暴力の被害者や暴力の存在に気付いた市民の大半が、暴力(報復)を過剰に恐れて当局や周囲に助けを求めていないという課題が潜んでいます。

施策内容

「ユナイテッド・ウェイ」プエルトリコ支部は、家庭内暴力被害者のための専用サイト「Entreparedes.org」を制作。
このサイトでは被害者や市民が匿名で家庭内暴力からの助けを求められたり、彼らの助けとなる様々な情報が網羅されています。

同団体はこの専用サイトの認知を高めるための施策として、街中の人通りの多い場所の壁面に、“愛情の存在を表現する”とてもシンプルな言葉、
“María te amo = Maria I love You”“Ana te amo = Ana I love You”を巨大な文字で描きました。
※プエルトリコの女性の名前でMariaやAnaは最も一般的です。

このフレーズは近づいて眺めることで、
“I love you”という愛情を伝えるメッセージに隠された、“もうひとつの真実”を掴むことができます。

壁面に描かれたこれらの文字は、実のところ暴力の存在を暗示する、
“I hit you”というフレーズや“I insult you”(侮蔑する)というフレーズを、リピートして描かれています。

そしてこの壁面のそばに、
“Abuse is hidden”(虐待は隠されている)というフレーズとともに、専用サイトのURLを記載しました。

 

結果

キャンペーン開始から1週間で、専用WEBサイト「Entreparedes.org」への訪問者数が23,000人、そのうち1,900人が家庭内暴力からの助けを求めてきたそうです。

“Abuse is hidden”という一つの真理を伝えるために、『“I love you” というフレーズの中に“I hit you”を隠す』という発想が大胆かつ巧妙です。

目を背けたくなるようなメッセージだからこそ響きますね。

実際、このキャンペーンがわずか1週間で1,900人の市民にとって、“家庭内暴力の拠り所となった”という事実が何よりも素晴らしい成果だと思いました。

参考サイト

・I believe in advertising
http://www.ibelieveinadv.com/2012/02/united-way-of-puerto-rico-i-love-you-i-hit-you/

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