ばねメーカー70年の現場知を無料アプリへ 布施精密発條の新規事業ブランド
1956年創業の精密ばねメーカー、布施精密発條株式会社は、新規事業ブランド「Fuse Studio(フセスタジオ)」の第2弾プロダクトとして、JISに基づく設計支援アプリ「ばね屋のバネ計算」をApp Storeで無料公開しています。圧縮・引張・ねじりの3種類のコイルばねに対応し、寸法や荷重を入力すると、ばね定数、たわみ、応力、静的強度、繰返し荷重の寿命目安などを確認できます。
開発の背景にあるのは、同社が設計・製造の相談を受けるなかで向き合ってきた課題です。仕様を決めた後に強度不足や製作の難しさが判明するケースがあり、従来はハンドブックで計算式や許容応力を調べ、電卓やExcelで計算する必要がありました。そこで、設計段階でJISに基づく確認を手軽に行える形へ置き換えています。
同アプリは、機械設計者や装置・治具の開発者、生産技術・品質保証担当者、工業系の学生など、ばねを専門としない人でも使える設計支援ツールです。7種類の材料データを内蔵し、圧縮ばねでは密着や取付長、ピッチ、縦横比など、実際の製作を意識した項目も確認できます。計算式や材料データの根拠、前提、出典、評価していない項目もアプリ内に明記しました。

アプリは完全無料で、広告やアプリ内課金はありません。計算は端末内で行い、入力した寸法や荷重などのデータを外部へ送信しない仕様です。日本語と英語に対応し、iOS・iPadOS 16.0以降で利用できます。
注目したいのは、長年蓄積した専門知識を「会社の技術力」という抽象的な説明にとどめず、利用者が実際に使えるプロダクトにした点です。年間4,000種類以上の製品を提供してきた製造企業の知識が、計算機能やチェック項目、根拠の表示として具体化されています。
企業の専門性をブランド資産として伝える方法は、広告やコンテンツ発信だけではありません。現場で繰り返し向き合ってきた課題と知識を棚卸しし、顧客や次世代の実務を助けるアプリへ変える。布施精密発條の取り組みは、製造業の蓄積をデジタルサービスへ展開し、新規事業ブランドの輪郭を示したブランディング事例です。
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