遠州織物のハギレを無償配布 廃棄物を価値化する地域産業マーケティング
地方の伝統産業や中小企業において、多額の広告予算をかけずに、いかにして全国へブランドを認知させるかは共通の課題です。
静岡県浜松市を拠点とする株式会社HUIS(ハウス)は、2026年5月15日(金)より生産過程で生じる端材やハギレを、一般向けに無償提供するプロジェクトを開始しました。(特設サイトはこちら)

静岡県西部の遠州地域(主に浜松市周辺)で生産される遠州織物。円高の進展や安価な海外製品が多くなり、産地としての規模が縮小するなか、遠州織物を取り扱う企業は、その技術力を生かして生地の開発や独自のブランドづくりに取り組んでいます。
そのなかでHUISは、旧式のシャトル織機が生み出す特別な風合いと機能性を持った生地を活かした製作を行い、年間40,000着以上の製品を生産しています。

同社ではこれまで教育支援の一環として地元小中学校などへハギレを配布してきましたが、生活者が遠州織物に直接触れる機会は多いとは言えませんでした。
「希少な生地に触れてみたい」という地域外の教育機関やクリエイターからの要望も多く、全国の潜在ニーズに応える形で一般向けの無償配布をスタート。
特長は、ハギレを無料で配布する単なる善意のボランティアで終わらせず、プロモーションツールへと転換し、自社ブランドの体験型マーケティングとしても機能させている点にあります。

端材やハギレは、120サイズのダンボールに詰めて送られます。その際、「色・柄・素材の選択不可」「返品交換不可」というルールを設定し、送料は着払いとすることで、会社側の金銭的リスクを最小限に抑え、「送料を払ってでも欲しい」という熱量の高い生活者に向けた提供を実現。SDGsの目標のひとつである「つくる責任 つかう責任」にも合致した取り組みです。
全国に7つのショールームや約80店の取扱店を持つ同社。無償配布を通じて遠州織物に直接触れた生活者が、商品を求めて実際の店舗へ足を運ぶ機会へとつなげています。

元・浜松市職員として産業振興を担当してきた同社代表の松下昌樹氏は、2014年にHUISをスタートさせました。
そして、2026年5月15日(金)には生地企画からデザイン、販売戦略などに携わったこれまでの歩みを綴った書籍「産地発アパレルという選択」(講談社)を発売。
端材やハギレを受け取った体験がブランドストーリーへの興味を喚起し、関連書籍に手を伸ばす導線にもなり得ます。結果として、書籍の販促施策としても機能しそうです。

自社にとっての廃棄物を、価値ある体験素材へと昇華させた今回の取り組み。多額の予算をかけずとも、自社の資産を見つめ直すことで、廃棄物削減と地域産業PRを両立させています。
アパレルを扱う他の地域企業や中小企業にとっても、参考となる事例と言えそうです。
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