現役東大生の3Dフィギュアが合格祈願のお守りに。東大のお膝元「法真寺」のユニークな取り組み

Case: 法真寺「東大生3Dフィギュアお守り」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は東京大学・赤門の目の前に位置する、和順山歓喜院法真寺(以下「法真寺」)が1月1日から1月16日(センター試験前日)まで実施した、東大生を3Dプリンタでフィギュア化したオリジナル御守「東大生3Dフィギュアお守り」(2種×各5体=計10体限定)の授与を含む、「東京大学合格御祈願の法要」実施の狙いについて取り上げます。浄土宗 和順山歓喜院 法眞寺 副住職の伊川浩士さん(文中「I」)、株式会社I&S BBDO コンテンツディベロップメントグループ シニアクリエイティブディレクター 植村啓一さん(文中「U」)にお話を伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
「祈願したんだ」という心の支えとなって受験に臨めるフィギュアに

—今回の施策実施のきっかけは。

I:お寺に対してもっと親しみをもって頂けたらと。お寺というとお葬式というイメージだけではなく、今後、地域や東大生の方にも来て頂いて、新しいお寺のあり方として地域密着の交流の場になればいいなという想いがありました。

—まず今回は「受験」が切り口ですが、もともと受験生の方はよく来られていたのでしょうか。

I:東大のお膝元にあるので、今までは多くのご祈願のお願いはあったのですが、祈願はやっていませんでした。浄土宗のご本尊の阿弥陀様は祈願ではなく、往生決定の仏様だからです。しかし当山には歓喜天様という仏様がいらっしゃいます。お願い事を叶えると云われている歓喜天様もいらっしゃるので今年から御祈願を始めさせて頂きました。

—フィギュアというアイデアはどのように出てきたのでしょうか。

U:東大が近い。ならば、東大生や東大を受ける受験生が祈願しにくるきっかけづくりに出来ないか。気軽にご祈願できて色々な人が集まる場所にしたかった。このご祈願をすることで、色々な人の学業のバックアップにできるように寄付も出来るようにしたい。そんな想いで出来ました。

—このアイデアにOKが出た理由は何でしょうか?

I:法真寺は浄土宗なのですが、浄土宗としては合格祈願のお守りを持っているからといって、必ずしも他の人を蹴落としてまで合格するわけではないんですね。そうではなく「祈願したんだ」という心の支えとなって、試験に全力で挑めるという意味合いなのです。このフィギュアも、心の支えとして安心出来るものという意味で住職からもOKをもらいました。

—現役生向け・浪人生向けという、学生さんお二人の人選はどのように。

U:色々と声をかけた中で、ノリが良かったお二人です。恥ずかしいという学生さんもいる中で、ふたりは喜んでいましたね(笑)。


—型はどうやって取ったのでしょうか。

U:スキャナで、5分くらい動かないでもらって型を取りました。とはいえ全く動かないことは難しいので、それを5カットほど取ってうまく繋ぎ合わせた形です。

ーお渡しはどのような形で行っているのですか。

I:ご面倒で申し訳ないのですが、必ずお寺に直接来ていただき行っています。というのも、フィギュアをお渡しする際に、受験されるご本人様へ直接合格祈願の法要を行っているからです。また、その際に「お布施」という形で法要料5,555円をいただいているのですが、こちらは公益財団法人日本ユニセフ協会に全額寄付され、教育支援などの活動に使われることになっています。こちらも「社会のために何かしたい」という若者の気持ちに少しでも応えられれば、という思いがあっての考えです。

—反響はいかがでしょうか。

I:直接的な反応としてお電話を頂いたりメールを頂いたりはもちろんですが、お寺に来る方自体が増えたかなという気はしています。カップルから会社員まで、みなさん(フィギュアがきっかけか)聞いたわけではないですが嬉しいですね。

イベント実施の構想も。人が集まる場所としてのお寺に

—今後はどのような施策を行っていくのでしょうか。

U:フィギュアは来年以降も継続的に続けていこうと考えています。また、FacebookページTwitterアカウント上で公開しているマンガ「今日の伊川くん」は、数がたまったら一冊にしようと話をしています。例えば中高生の子にも歴史の本のような、気軽なものとして読んでもらえたらと思います。

本堂の完成後イベントが実施可能になれば、他にも色々考えていきたいですね。実は、お寺でイベントが実施可能だと知らなかったんです。住職さんから聞いてビックリしましたね。まだアイデアですけど、ライブイベントなど人が集まりやすいことが出来ればいいなと思います。

—今回のフィギュアのように「東大」切り口が有力ですか?

I:東大だけということは考えていないですが、若い人に来て頂きたいなという想いはありますね。もっと「楽しく出来る」ところなんだよと。ライブは私も良いなと思っています。私個人のアイデアとしては若くてまだ駆け出しの方々、例えば音楽だったり、お笑いだったり、そういう方に来て頂いて出演者の方にもプラスの経験になって、見ている人も楽しく応援出来るようなイベントは実施してみたいですね。

—今回はお寺の施策ということで、ご提案するにあたってどこまで可能か、気を遣われた部分もありますか。

U:そうですね、ただ最近は坊主バーが出てきたりだとか、お坊さんがフォーカスされることが増えているように思います。なかなか世の中的な見え方として難しい点もありながらも、お寺という場所の良さを広めるべく徐々にアグレッシブに動こうとしている方も増えているのかなと。今回も、漫画であまり知られていない話を知ってもらったり、漫画の主人公がそのままお寺にいるということで会いに来るきっかけになったりとか、より気軽な存在になれば良いなと思います。

I:お寺という場所は、来て頂けたら思っている以上に堅苦しくない場所です。何かあれば気軽に相談でもしに来て下さいというのはどの住職さん・僧侶さんも同じ想いだと思いますので、是非来て下さいね。

【Interviewee】

浄土宗 和順山歓喜院 法眞寺
伊川 浩士さん(写真)
株式会社I&S BBDO
コンテンツディベロップメントグループ
シニアクリエイティブディレクター
植村 啓一さん

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