「若手が秒で簡略化」リポビタンD“危機一髪”CMを絵文字だけで表現するアイデアはこうして生まれた

Case: リポビタンD

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、大正製薬 リポビタンDのこちらのツイートを取り上げます。

 

出演者が危機を迎えるも「ファイト一発!」と乗り越える—そんなCMは長年おなじみですが、この展開を絵文字だけで表現したこのツイートは23,000以上のRT、42,000以上のいいね(3月28日現在)を集め大きな話題に。またツイートだけではなく六本木駅ではこの絵柄を元にした広告も展開されました。

この企画の狙いや実施後の反響について、株式会社電通 プランナー 花田礼さん・葛原健太さん、アートディレクター 河野智さんに伺いました。

Text : 市來 孝人
過去の担当者から実際に「長年あれだけ頑張って作ってきたCMが…」という反応が

―今回の「絵文字で表現する」というアイデアが挙がった経緯をお教えいただけますか?

花田:まず、リポビタンDの過去の“危機一髪”CMは、意外にも20代の若者の記憶にも刻まれているという点が明らかになり、その資産を現代風に再活用できないかという話になりました。

河野:その時に、ここ数年海外で絵文字が「クールな文化」として定着している事が議題に上がり、大正製薬のご担当者様とやってみるとワシのマークをはじめ、スマホに入っている絵文字だけでCMのストーリーを構成することができるとわかり、絵文字でのCM再現を構想しました。

―このツイートを通して訴求を狙ったターゲットを教えてください。

葛原:リポビタンDの既存ファンを起点とした拡がりを狙いました。リポビタンDはこの半年で、ケイン・コスギさんが女子大生に「ファイトー!」と差しのべた手をスルーされる「ファイト不発」や、ボトルがうねうね踊る「ボトルオドル動画」などのデジタル企画をローンチし、「最近リポDが攻めている」といった好意的な声とともにファンやフォロワーを増やしてきました。そのように、最近の取り組みを評価して下さる方に向けてまずこのツイートを発信し、そういった方が起点となり、更なる拡がりを作れたらという狙いがありました。

―「若手が秒で簡略化」という打ち出し方も印象的でした。

花田:大正製薬のご担当者様と話して作った一連の絵文字を、過去の危機一髪CMの制作に携わっていた方々にお見せしたところ「長年あれだけ頑張って作ってきたCMが…」というほろ苦い反応をいただいたことが、この文章につながりました。同じ画像や動画を発信するにしても、打ち出し方によって拡がり方は全く異なってくるので、この文章が効果的に働いたと思っております。

―今回の絵文字選定にあたってのこだわりがあればお聞かせください。

河野:過去の危機一髪CMシリーズの典型的なストーリーをできるだけ忠実に絵文字で再現することを心がけました。「太陽のもと二人の男性が走っている」→「片方が足を滑らせ危機を迎える」→「もう片方が『ファイトー!』と手を差し伸べたのに対し『イッパーツ!』と握り返して助かる」→「ワシのマークの大正製薬」というストーリーです。最後の方は「愛が芽生えているのでは」という声も出ていますが、あくまでも「男同士の友情」を描いています。

Web上の綺麗な画像データより、看板を撮った写真の方が拡散の可能性を秘める

―ツイートだけではなく、六本木駅での広告展開をした意図をお教えください。

葛原:Web上にある綺麗な画像データよりも、看板をスマホで撮った写真の方が生っぽさや熱量もあり、拡散する可能性を秘めていると思いました。なので、情報感度も高く発信力のある人が集まる六本木駅に看板を掲出しました。狙い通り、看板を写真で撮ってSNSに発信して下さる方が多く現れ、あるツイートは1000RT以上を記録するなどきっちり役割を果たしました。

―メディアでの反響も大きかったようですが、メディア向けのPRも積極的に狙っていったのでしょうか?

葛原:ツイッターでのRT数・いいね数が一定数を超えてくるとこちらから働きかけなくてもメディア露出が狙えるので、まずは多くの皆様に楽しんでいただけて、自然と拡散されるような表現・文脈づくりをもっとも大事にしています。そのため、メディア向けPRリリースの作成・発信といったような、いわゆる通常のPR活動は行いませんでした。

―今回の施策を経て、反響はいかがですか?また、その反響は狙い通りのものでしたでしょうか。

花田:反響は想定以上でした。過去のリポビタンDのCM内容が前提となる企画なので、正直どこまで多くの方に伝わり、ご反応いただけるか見えない部分がありました。しかし、数万人からのリアクションや多くのメディア露出などの結果から、改めてリポビタンDという商品がいかに多くの方から愛されているかを実感することとなりました。

(左から)株式会社電通 CDC プランナー 葛原健太さん、株式会社電通 関西PD局 プランナー 花田礼さん、株式会社電通 3CRP局 アートディレクター 河野智さん

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