定番の秋スイーツを差別化する 2026年PR・マーケティング事例10選
栗や芋、かぼちゃなどは、秋になると毎年多くの商品に使われる定番の味覚です。今年も各社から多彩な秋スイーツが登場していますが、素材や季節限定というだけでは、数ある商品の中で違いを打ち出しにくくなっているのも事実でしょう。
そこで各社が工夫しているのが、既存商品や人気キャラクターとの組み合わせ、素材の見せ方や食べ方の再編集、ラインアップの組み立て、利用シーンの提案などによって、定番素材に新しい購買理由を加えることです。同じ栗や芋、かぼちゃでも、何と掛け合わせるかによって商品の印象や楽しみ方は大きく変わります。
本記事では、2026年の秋スイーツを「既存資産×季節限定」「定番素材の再編集」「ラインアップ編集」「需要の拡張」の4つの視点から紹介します。毎年おなじみの秋の味覚を、各社はどのように「今年も選びたくなる理由」へと変えているのでしょうか。商品設計や見せ方、売り方に込められた工夫から、秋商戦に生かせる発想を読み解きます。
既存資産×季節限定|毎年買う理由を更新する
ロングセラーを「秋になったら帰ってくる」季節の風物詩に

カルビー株式会社では、秋冬限定のロングセラー「おさつスナック」を2026年も販売。さつまいものやさしい甘さと軽い食感で、ひと足早い秋の訪れを感じさせます。
1973年に「さつまポテト」として誕生し、「おさつクッキー」への名称変更を経て、1981年から現在の商品名で親しまれてきた同商品。秋から冬にかけて期間限定で販売を続けることで、「秋になったら帰ってくる」という季節感を商品そのものに定着させています。
今年は、ふかしたさつまいもと焼きいもを練り込み、ほどよい塩味を合わせ、「おさつスナック」ならではの軽い食感がより際立つ風味に仕上げるなどの改良点も加え、ファンを飽きさせません。
パッケージには2色のさつまいもカラーや、ふかしたさつまいもと焼きいもの画像を大きく取り入れ、視覚からも秋らしさを演出。さらに18gの少量サイズを用意し、お出かけのお供や気分転換、小腹満たしといった喫食シーンにも対応しています。
長く親しまれてきた商品を季節限定で展開しながら、味わいやサイズ、見せ方を更新することで、既存商品を「今年も食べたい」と思わせる秋冬の風物詩へと育てました。
人気キャラクターを旬の味覚で衣替え 季節ごとに買う楽しみを創出

ホテルメトロポリタンは、2026年9月1日(火)から秋の「Suicaのペンギン スイーツ」を季節・数量限定で販売。栗の形をした「Suicaのペンギン マロンケーキ」に加え、ロングセラーの「Suicaのペンギン プリン」と「Suicaのペンギン シーズンケーキ」も、かぼちゃや洋梨を取り入れた秋仕様で展開します。
注目すべきは、「Suicaのペンギン」というキャラクター資産を、季節ごとに更新していること。マロンケーキには笠間の栗、プリンにはえびすかぼちゃを取り入れるなど、秋素材を使って味や装いに変化をつけています。キャラクターそのものを変えず、旬の味覚をいわば“季節の衣装”としてまとわせることで、定番商品にも毎シーズン新鮮さを生み出しています。
「いつものSuicaのペンギン」が季節ごとにどう変わるのか。その期待が、「次はどんな味?」と再び売場を訪れる理由になります。既存IPの認知度や愛着を土台に、旬素材で継続的にニュースをつくるという、IPの活用法が参考になる事例です。
定番素材の再編集|組み合わせや構造で差別化する
和菓子の枠を越える掛け合わせで王道の「栗」と「芋」に新しい楽しみ方を

フルーツ大福を中心とした和菓子を展開する「弁才天」は、栗と芋を主役にした秋限定の大福4品を、2026年8月17日(月)から販売中です。「栗と芋を、和菓子の枠から解放する。」をテーマに、秋の王道素材を意外な組み合わせで楽しめる商品へと仕立てています。
和栗にはクリームチーズやホワイトチョコレート、さつまいもには有塩バターを合わせるなど、白餡や求肥といった和菓子の要素に洋菓子の素材をプラス。「クリームチーズ -和栗-」はチーズケーキを思わせる味わいに、「わっぱもちモンブラン」は求肥にビスキュイ、生クリーム、ラムレーズンなどを重ね、定番のモンブランを弁才天らしい構成に再編集しています。
栗や芋という見慣れた秋の味覚も、組み合わせや構造を変えれば、新しい商品として打ち出せます。さらに、日本茶に加えてコーヒーや紅茶、デザートワインと合わせたり、ケーキの代わりに選んだりと、食べ方まで広げて提案。王道素材を別のカテゴリーの要素と掛け合わせることで、秋スイーツに新鮮な選択肢を生み出しています。
モンブランを食べ方から再編集 最中と掛け合わせた体験型スイーツ

株式会社グローバルエージェンツが展開する「THE LIVELY 大阪本町」は、2026年9月1日(火)から11月30日(月)まで秋季限定スイーツ「もなブラン」を提供。モンブランと最中を掛け合わせ、栗やりんごにほうじ茶、山椒などの香りを重ねた、フレンチシェフによる和洋ハイブリッドスイーツです。
マロンムースの中には、白あんとラム酒を合わせたほうじ茶クリームや生キャラメルソースを重ね、ベースには山椒を効かせたりんごのソテーを詰めた最中と求肥を使用。さらに、トップの球体を割ると和三盆とヨーグルトのソースが流れ出し、モンブランの名前の由来である「白い山」を思わせる仕掛けも盛り込んでいます。
秋素材の組み合わせに加え、最中とモンブランを一皿に組み込み、割る、挟むといった食べる動作まで楽しみに変えている点がユニークです。別添えの最中に好みの具材を挟むこともでき、食べ進めるなかで味や食感が変化。定番のモンブランを「どう食べるか」から見直し、スイーツそのものを体験として楽しめる商品に仕立てています。
老舗和菓子の世界観をアフタヌーンティーへ 秋の味覚をホテル流に再編集

セント レジス ホテル 大阪は、創業150余年の和菓子舗「たねや」と4回目となるコラボレーションを実施。「恋する秋菓子」をテーマに、栗やほうじ茶など秋に親しまれてきた味わいを取り入れた「セントレジスアフタヌーンティー with TANEYA」を2026年9月1日(火)からスタートします。
特徴は、単に和菓子と洋菓子を掛け合わせるのではなく、たねやが長年培ってきた「ブランドの文化資産」そのものを企画に取り込んでいること。代表銘菓「栗月下」をミルフィーユ仕立てにしたり、生どらに和栗のモンブランペーストやセントレジス特製の生クリームを合わせたりと、受け継がれてきた銘菓をホテルの感性で再解釈しています。
さらに、たねやゆかりの滋賀へと発想を広げ、焼餅と和牛ローストビーフ、近江八幡の赤こんにゃくと鴨リエットなど、地域の食文化をセイヴォリーにも展開。銘菓だけでなく、和菓子の美意識や土地とのつながりまで「たねやらしさ」として活用することで、アフタヌーンティー全体に一貫した世界観をつくっています。
秋の定番素材だけでは差別化しにくいなか、長年蓄積されたブランドの物語を借りることで、「ここでしか味わえない秋」へと変えているのがポイント。旬素材にブランドの文化的な背景を重ね、季節限定メニューの購買理由を厚くするというコラボレーションのつくり方が参考になる事例です。
ラインアップ編集|選ぶ・比べる・贈る体験にする
栗・芋・かぼちゃなど秋の味覚をひと箱に 秋そのものを楽しむアソート

株式会社銀座コージーコーナーは、国産和栗、北海道産かぼちゃ、九州産紫いもを使った季節限定マドレーヌを販売中です。定番人気のバターマドレーヌも加え、4つの味を詰め合わせた「秋のマドレーヌ」を6個入と12個入で展開します。
ポイントは、ひとつの素材を主役にするのではなく、複数の定番素材を束ねて「秋そのもの」を商品化していること。和栗・かぼちゃ・紫いもという秋らしさの伝わりやすい味を一箱に集めることで、「どれを選ぶか」ではなく「いろいろな秋を一度に楽しむ」という購買理由をつくっています。
さらに、「国産和栗」「北海道産かぼちゃ」「九州産紫いも」と産地まで打ち出し、見慣れた秋素材にも選ぶ根拠をプラス。単品で好きな味を選べる一方、アソートでは食べ比べやシェアができ、実り豊かな秋をイメージしたパッケージによって季節のあいさつやプチギフトにも用途を広げています。
個々の商品を売るだけでなく、複数素材をひとつのテーマで束ねることで、ラインアップ全体を「秋を買う」商品へと編集。単品の季節限定商品とは異なる、選ぶ楽しさや食べ比べの体験まで価値に変えている事例です。
シャインマスカットを6商品へ横展開 ひとつの旬需要を複数の購買機会に

こちらも同じく、株式会社銀座コージーコーナーの事例です。旬のシャインマスカットを使ったケーキ6品を2026年8月14日(金)から順次販売し、ショートケーキ、チーズケーキ、ひとりじめサイズのプチデコレーションから複数人で楽しめるホールケーキまで、ひとつの旬素材を幅広い商品へ横展開しています。
前述の「秋のマドレーヌ」が複数の秋素材をひとつに束ねる編集だったのに対し、こちらはひとつの素材から選択肢を広げているのがポイント。「コージープリンセス」では花びらのような華やかな見た目に、「贅沢シャインマスカットショート」では果実を存分に味わえる仕立てに、「ベイクドレアチーズ」ではチーズとの組み合わせにと、同じ素材でも商品のフォーマットによって異なる魅力を引き出しています。
さらに、1人で楽しむケーキから誕生日やお祝いにも使えるホールケーキまでサイズを広げ、ナガノパープルとの組み合わせも用意。「シャインマスカットを食べたい」というひとつの需要を、好みや人数、利用シーンの異なる複数の購買機会へと展開しています。
旬素材を1品の限定商品で終わらせず、売場を横断して展開することで、売場全体を「シャインマスカットの季節」に変える。1素材を起点に選ぶ楽しさと購買機会を増やすラインアップ設計が参考になる事例といえるでしょう。
3種のモンブランを食べ比べ 秋の定番を「比較して楽しむ」体験へ

ザ ストリングス 表参道の「TAVERN by the green」は、芋・栗・かぼちゃなどを取り入れた「トリプルプレミアムモンブラン アフタヌーンティー」を2026年10月1日(木)からスタート。秋の味覚を使ったスイーツやセイボリーをそろえるなか、3種のモンブランを主役にしています。
登場するのは、和栗を使った王道のモンブラン、栗とカシスを合わせた焼きモンブラン、さつまいものモンブランショートケーキ。同じモンブランというカテゴリーをあえて3つ並べ、違いそのものを楽しませている点に工夫が光ります。素材だけでなく、焼く、ショートケーキと組み合わせるといった仕立てにも変化をつけ、「どれが好み?」と比べながら味わえるラインアップです。
誰もが知る定番スイーツを食べ比べという体験に変えることで、モンブランを3種類食べる理由を創出。洋梨やかぼちゃなども加え、アフタヌーンティー全体で秋の世界観を補強している点もポイントです。定番化したモンブランも、比較対象をつくれば新しい楽しみ方になる。商品数の多さではなく「違いを発見する楽しさ」を購買理由に変える企画になっています。
需要の拡張|売場・利用シーンを広げる
バーガーチェーンに秋のご褒美時間を カフェ利用のきっかけをつくる

株式会社フレッシュネスは、「フレッシュネスバーガー」で展開する「作りたてスコーンサンド」に、国産シャインマスカットと北海道産クリームチーズを合わせた秋限定商品を投入。2026年8月26日(水)から全国の対象店舗で販売中です。
注文後にスコーンをリベイクし、その場で具材を挟む既存のスタイルを生かしながら、シャインマスカットをハチミツとフルーツビネガーに漬け込むひと手間をプラス。クリームチーズやメープルシロップを合わせ、アフタヌーンティーを楽しんでいるかのような贅沢感を打ち出しています。さらにコーヒーやカフェラテなどとのセットも用意し、既存のドリンクメニューと組み合わせて楽しめるのもポイント。
旬素材を新商品に使うだけでなく、“バーガーを食べる場所”に秋のご褒美カフェという新しい利用目的をプラス。既存のスコーンサンドとドリンクという資産を生かすことで、ランチやディナーだけでなく、間食やカフェタイムにも足を運ぶ理由をつくっています。
季節限定商品をきっかけに、「何を買うか」だけでなく「いつ、何のために店を使うか」まで広げている点も秀逸。旬のシャインマスカットを、新たな来店シーンを開拓するフックとして活用した事例です。
秋の深まりに合わせて主役を交代 2段階の企画で再来店を促進

森ビル株式会社が運営する「麻布台ヒルズ」は、2026年9月18日(金)から11月3日(火・祝)まで、秋の味覚を楽しむ「HARVEST WEEKS」を開催。26店舗・33種のスイーツを集め、前半は「モンブランセレクション2026」、後半は「おいもスイーツセレクション2026」と、時期によって主役を切り替えて展開します。
前半は王道のモンブランだけでなく、パフェやパンケーキ、アフタヌーンティーなど、栗をさまざまな形で楽しめる商品を集結。後半はスイートポテトやチーズケーキに加え、ソフトクリーム・ジェラート・シェイクなどへと広げています。同じ「秋スイーツ」という大きなテーマを保ちながら、時期に合わせて売場の主役を入れ替えているのが特徴です。
ポイントは、秋の味覚を一度に並べて終わらせず、「モンブランの次はおいも」とテーマをリレーさせ、再来店する理由をつくっていること。さらに26店舗を横断して展開することで、個々の季節商品を施設全体のイベントへと拡張。秋が深まるにつれて売場も変化する設計によって、長い秋商戦のなかで複数回訪れたくなるきっかけを生み出しています。
まとめ:秋の定番素材を「今年も選びたくなる理由」に変えるために
秋の味覚を使って「今年ならでは」の施策をつくるには、自社が持つ商品やブランド、売場などの既存資産と何を掛け合わせるかがポイントです。
今回の事例から見えてくるのは、旬の素材そのものよりも、その周辺にどんな購買理由を設計するかが差別化につながるということ。たとえば、既存商品やIPと組み合わせれば「毎年楽しみにする理由」を、複数の商品に展開すれば「選ぶ・比べる理由」を、ブランドの歴史や文化と組み合わせれば「その企業から買う理由」をつくれます。
さらに、提供する時間帯や売場、展開時期を変えることで、「いつ・どこで買うか」という需要そのものを広げることもできるでしょう。
商品・IP・ブランドストーリー・売場など、すでに持っている資産を棚卸ししてみることが、毎年繰り返される季節商戦のなかで「今年はこれを選びたい」と思わせる企画をつくる出発点になりそうです。
その他の事例集についてはこちら
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