店名も住所もオープン日も非公開「見つからない」ことを価値にするブランディング
「#遊んでたら褒められた」をスローガンに掲げ、ゲーム開発や映像コンテンツの制作、コンセプトカフェ「ヴァンパイアサイド」の運営などを手がけるヴァンパイア株式会社は、神戸三宮に会員制BAR「nameless(ネームレス)」をオープンすることを発表しました。
最大の特長は、店名・住所・オープン日のすべてを非公開としている点です。情報があふれ、Web検索でどこにでもたどり着ける現代において、あらかじめ情報を極限まで遮断し、見つからないことを価値とする逆張りのブランド設計となっています。

本施策は、13年間で新規客が5人しか来なかったという既存のBARを、事業承継で譲り受けたことが起点です。通常のリニューアルであれば、外装や看板を一新して認知拡大を図ります。しかし同社は、看板や地図アプリ上の情報を前店舗の名前のまま残し、内装のみをドライフラワーなどを用いて作り替え、自社のダークファンタジーな世界観へ刷新しました。

かつての禁酒法時代、政府に隠れて営業を行っていた酒場「スピークイージー」の秘匿の美学を現代に甦らせるとし、新規客0人を継続するという飲食店の常識を覆す独自の概念を目標に掲げています。
集客における立地や認知の課題という、本来ならネガティブな要素を、逆に見つからない希少性というポジティブな価値へ変換しました。
また、namelessは少人数で運営するスタイルのため、来店者一人ひとりと向き合う時間が長くなり、自然と関係性が深まりやすいといいます。
目指す接客は、ただ愛想よく振る舞うことではなく、相手の状況をくみ取って課題解決まで伴走するレベルとのこと。楽しい時間を過ごせるのはもちろん、ゆくゆくはコミュニティとして機能させ、単なる遊び場を超えた価値提供を目指しています。
同社は今後、既存店を買収してnameless化していく手法で、日本全国に100店舗を展開する「ヴァンパイアの街構想」を描いているそうです。外側の景色を変えずに内側から自社の色に染めていくアプローチを侵食と呼び、事業全体を貫くストーリーへと仕立てています。

情報過多の現代において、あえて店名や場所を非公開にし、見つからないことの希少性を高めたBAR nameless。隠れ家要素そのものに価値を置いて自社の世界観を浸透させる、逆説的なブランド戦略です。
その他のブランディング事例についてはこちら
https://predge.jp/search/post?genre=27
会員登録、メルマガの受信設定はこちら
https://predge.jp/
記事をブックマークする
記事をブックマーク済み
0