生成AIの活用で地方行政のサービスは変革するのか?トレンド事例5選

総務省により公表された「自治体におけるAI・RPA活用促進」によると、2022年12月31日時点において、都道府県と指定都市では100%、その他の市区町村では45%がAIを導入済みとなっています(※1)。

その背景には、自治体にも押し寄せる人材不足の波があります。人手が足りないなかでも、住民サービスを安定的に供給するために積極的に生成AIの活用に取り組んでいるということです。今回は、そんな生成AI活用に取り組む地方自治体の5事例をお届けします。

1.『easyBot』岩手県一関市が自治体で初の会話型AIチャットボットとして採用

岩手県一関市は、市民との円滑な情報共有とコミュニケーションを目指し、新たなデジタルサービスとしてEasyDialogが提供するチャットボット、「easyBot」を採用。2024年3月15日から運用を開始しました。このチャットボットの導入によって、一関市民は行政の情報やサービスにアクセスしやすくなり、行政と市民との連携を一層強化することが期待されます。

チャットボット導入の背景には、市政サービスの質を高め、市民とのコミュニケーションを促進する目的がありました。そこで、今回の生成AIを活用したチャットボット「easyBot」を導入。市政の情報提供を迅速かつ効果的に行うことが可能となりました。「easyBot」は、地方公共団体間で使用する閉域的なネットワーク上で利用できる生成AI技術をベースとしています。

そんな「easyBot」は、市民からの疑問や要望に即座に応え、24時間365日利用可能な点が特徴です。これにより、市民は時間や場所に関わらず、必要な情報を簡単に入手できます。また、多様な生活様式や働き方に対応し、外国語での問い合わせにも対応が可能に。

そして、「easyBot」は、単なる質問応答サービスに留まらず、質問内容を分析し適切な回答を提供します。このチャットボットは、自然な会話を可能にする高度な理解力を持ち合わせており、LINEやブラウザ、電話、Alexaといったさまざまなプラットフォームで利用可能です。

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2.インテック、富山県と生成AIおよびマルチモーダルAIを活用した働き方改革の実証実験を実施

TISインテックグループの株式会社インテックは、富山県とともに生成AIとマルチモーダルAIを活用し、自治体職員の書類検索の効率化・働き方改革を推進するための実証実験を2023年9月~2024年3月にかけて実施しました。

地方自治体、とくに広域自治体である都道府県は、取り扱う業務が幅広く、それに伴う書類や資料も多岐に渡ります。また、形式も保管場所もバラバラの現状があります。加えて、数年ごとの人事異動で引継ぎや業務知識習得の時間が確保しにくいことから、担当者の日々の業務負担が大きくなっているケースも少なくないという課題を抱えています。

富山県の地域課題を解決する実証実験プロジェクトである2023年度の「Digi-PoC TOYAMA」において、テーマの一つに「自治体職員の効率化・働き方改革推進」が設定され、創業以来、数々の自治体の窓口業務や庁内業務に深く携わっているインテックが本テーマについて採択されました。書式や保管方法が多岐にわたる自治体業務の書類をマルチモーダルAI活用でデータ化、生成AIによりスピーディに検索・利活用することで、複雑化・多様化する自治体の業務をDXで改善し、人口減少時代における行政経営の効率化や多忙な自治体職員のウェルビーイング向上につなげるものです。

今回の実証実験では、富山県の検証対象部門の職員の方々の協力のもと、DXによる業務改革を実現するためのユースケースを設定し、業務書類について、書類のデータ化、書類検索、データ活用の3点を検証しました。

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3.我孫子市がChatGPTを庁内で安全に活用する業務効率化ツール「Crew」の実証実験の記事公開

株式会社クラフターが提供するChatGPTを庁内で安全に活用する業務効率化ツール「Crew」の実証実験が実施され、我孫子市が取り組まれた内容を紹介した事例記事が公開されました。

・我孫子市導入事例記事はこちら:https://www.gocrew.jp/casestudies/abikoshi-crew

今回の実証実験については、2023年に入り全国的に生成AIの活用が自治体でも進んできたなかで、我孫子市でもどのような業務に活用できるか、実証的に確認をしたいという考えが背景にあったといいます。また、生成AIは、庁内業務の効率化や市民の利便性向上に大きく貢献する可能性がある一方で、日々さまざまな生成型AIサービスが生まれているので、それぞれのサービスで実現できることを具体的に精査する必要性を認識して行われました。

実際の業務活用に向けた試行を検討したなかで、既存のサービスだとなかなか提供されていない、ドキュメントから回答を生成する機能に魅力を感じて、Crewを選ぶことに。そして、今回の実証実験では書類のチャネルとテキストチャネルのどちらも試行。書類のチャネルでは主には条例・規則を踏まえたQ&Aの生成や、庁内のドキュメントを踏まえた新たな書類のドラフト作成などでの利用、テキストチャネルではコードの作成や文章生成で利用しています。

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4.パブリックテクノロジーズ、神奈川県横浜市と広島県尾道市にて、市役所GPTを用いた役所窓口DX化の可能性を検証

テクノロジーの力で地域の未来を創る株式会社パブリックテクノロジーズは、2024年度採択を受けた、神奈川県横浜市が主催する「スタートアップ社会実証・実装支援プログラム」と広島県が開催する「The Meet 広島オープンアクセラレーター」の最終成果発表会に参加し、市役所GPTを用いた役所窓口DX化の可能性について発表しました。

市役所GPTは、パブリックテクノロジーズが提供する役所の窓口サービスをデジタル化する次世代AIチャットボットサービスです。職員はQ&Aを作成する必要がなく、ウェブサイトなどを指定するだけで、問い合わせに最適化された回答をAIが生成します。住民が持つさまざまな疑問や手続きに関する質問に対して、高精度な回答をデジタル上で提供することで、役所の窓口で働く職員の業務負担の軽減が期待されています。

パブリックテクノロジーズは、市役所GPTを通じて、行政手続きの透明性と効率性を高めることで、住民と行政との間のコミュニケーションの質の向上を目指しています。今年度採択された2つのスタートアップ支援プログラムでは、市役所での実証実験と職員との意見交換会を実施。そこで得たフィードバックを軸に、市役所GPTの機能改善やユーザー体験の向上に努めるとしています。

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5. AI音声対話アバター「AI Avatar AOI」のシステムを活用し、長野県中野市の公認VTuber「信州なかの」をAI化

株式会社アドバンスト・メディアが提供するAI音声対話アバター「AI Avatar AOI(エーアイ アバター アオイ)」のシステムを活用し、長野県中野市の公認VTuber「信州なかの(しんしゅうなかの)」をAI化。2024年5月下旬より、展示会やイベントなどで農産物や観光情報など、中野市の魅力を発信する新たなコンテンツとして正式にデビューしました。

「AI Avatar AOI」が持つ独自の対話システムと、「ChatGPT」が連携することで、より品質の高いAI対話を実現。VTuberとしての「信州なかの」が持つ性格、口ぐせ、言い回しなど本来のキャラクター設定をそのまま再現しながら、自然な対話を可能にしています。さらに、キャラクターの感情表現やモーション、アニメーションの忠実な再現を目指し、「信州なかの」の収録音声をもとにした音声合成を開発。本来のキャラクターが持つ世界観を壊さないAI化を実現しています。

また、不適切な用語や意図しない応答を回避する独自のフィルタリング機能と、専門用語や固有名詞も高精度でテキスト化する辞書登録機能を活用しているため、さまざまな利用用途に応じた会話が可能です。

AI化した「信州なかの」が、3月23日(土)と24(日)の両日に開催された中野市および中野市産農産物などの魅力を発信する「SHINSHU NAKANO OUTDOOR FES 2024」に先行登場し、来訪者と自然な話し言葉で自由な対話を行いました。パソコン上の「信州なかの」と対話をした来訪者からは、「中野市の魅力を、その場ですぐに教えてくれるシステムに感動した」、「信州なかのちゃんとお話しができて楽しかった」など、高評価を得たとのことです。

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AI活用に取り組む地方自治体の事例まとめ

さまざまな生成AIソリューションが登場し、企業をはじめ自治体においても導入の検討や推進が活発化するなど、生成AI普及が進んでいることがわかります。

どのように活用され、現状抱えている課題を解決する一助となるのか、今後も注目していきたい市場となっています。

・※1参照元:自治体におけるAI・RPA活用促進(総務省)

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