Webで話題をつくり、テレビ向けには絵づくり。メディアごとに見せ方を変え、サイト流入数を数倍に増やしたエステー

Case: デジタルPRで事前に話題をつくり、テレビ・新聞関係者の注目を集めたエステーのPR活動

新聞、ラジオ、雑誌、テレビ、そしてWeb。さまざまなメディアがある中で、企業の広報・宣伝担当者には、各メディアの特性を踏まえた企画力が求められているのではないでしょうか。

そんなメディアごとの特性を生かしたPR展開で、成功を収めたのがエステー株式会社。「消臭力」「ムシューダ」などの生活日用品メーカーで、同社の社名を聞いてすぐ、ポルトガルの少年・ミゲル君が高らかに「消~臭~力~」と歌い上げるテレビCMを思い出した人も多いのではないでしょうか。

同社は「ミュージカルの楽しさ・素晴らしさを伝えたい」との思いから、1998年からオリジナルミュージカルを主催。今夏も「赤毛のアン」を開催予定で、3~4月にかけてそのPR活動を展開しました。今年はWebとテレビでメディア特性に合わせた情報の出し方をすることで、「赤毛のアン」の特設サイトには前年比で数倍の流入があったそうです。

同社はどのような情報の出し方でPRを展開したのでしょうか。同社コーポレートコミュニケーション部門 部門長 兼 広報部 部長の中村吉見氏にお話を伺いました。

 

興味を引くような情報を流してWebで話題をつくり、テレビ向けには栄える絵づくり

――貴社はミュージカル「赤毛のアン」のPRをする上で、Webやテレビといったメディアごとの特性を踏まえて情報を出すように心掛けたと伺いました。どのような工夫をしたのか、詳しく教えていただけないでしょうか。

コーポレートコミュニケーション部門 部門長 兼 広報部 部長 中村吉見氏

当社は社会・文化活動の1つとして、ミュージカルを毎年主催しています。今年で18年目になりまして、13年前から「赤毛のアン」を上演しています。

その「赤毛のアン」で、今年から主役のアン・シャーリー役が変わることになりました。昨年まではモーニング娘。の元メンバーである高橋愛さん。今年は上白石萌音さんを迎えることになったんですね。

上白石さんは、第7回「東宝シンデレラ」オーディション審査員特別賞に選ばれ、2014年上映の「舞妓はレディ」主演で日本アカデミー賞 新人俳優賞を受賞した若手女優。まだ17歳で非常に将来有望な方です。

ただ残念なことに、現時点では「上白石萌音」という名前をご存知の方はそれほど多くはありません。「今年からアン役は上白石萌音さんになります」とストレートにPRするだけでは、注目を集めることは難しいと考えました。

そこでPR会社・PR TIMESの方とPR戦略について話し合い、まずは3月初旬に「17才。上白石萌音が赤毛のアンになる。」というプレスリリースを主にWebニュースメディア向けに配信しました。最初に上白石さんの人物紹介をして、Webニュースメディアに記事掲載してもらえないかと働き掛けたのです。

そのとき、メディア関係者に伝えたのは、2月に実施したミュージカル宣伝用のスチール写真を撮影したときのエピソードです。彼女の公式YouTubeチャンネルでもその歌声が披露されていますが、彼女はスキマスイッチの「奏」という曲が好きで、写真撮影中にアカペラで歌ってくれたんです。そうしたら、撮影場所の近くで打ち合わせをしていたスタッフたちが聞き惚れてしまい、思わずみんな無言に。そんなエピソードを伝えたら、メディアの方が興味を持ってくれたようで、ニュース記事として掲載してくれました。

そのように、あらかじめWebで話題をつくっておいた後で、記者会見を3月17日に開き、主にテレビ・新聞のメディア関係者を招きました。
テレビ・新聞関係の仕事をしているアンテナの鋭い人たちは、日ごろからWebニュースで最新動向をチェックしているものです。事前にWebメディアに向けて興味を引くような情報を流して上白石さんの話題をつくっておくことで、テレビ・新聞関係者の興味を引き出しておこうという狙いがありました。

そうして開いた記者会見で意識したのは、特にテレビ番組向けの絵をつくること。テレビと言えば、音と映像です。テレビ番組で流すときに栄える場面を演出しようと、上白石さんにクライマックスで歌唱するシーンを披露してもらったんです。

もう1つ、上白石さんの魅力を伝えるだけでなく、「赤毛のアン」自体にも興味を持ってもらうことが重要でした。17歳の上白石さんが登場したとき、ベテランの出演者たちが温かく迎えてくれる。「赤毛のアン」の世界を連想させるそんな場面も用意しておきました。

そうしたPR戦略が奏功したのか、3月初旬のWebメディアに向けて発信した情報は209サイトに掲載され、17日の記者会見後にも「めざましテレビ」などのテレビ番組3件と新聞8紙、Webメディア191サイトに取り上げてもらえました。

その結果、「赤毛のアン」の特設サイトへの流入数は、前年と比べて3倍以上に増えましたね。

月9で1回だけのCM特別版を放映。口コミで注目を集めるため、直前にWebでPR

――貴社では他案件のPRでも、そのようにメディアごとの特性を意識して戦略を練っているのでしょうか。可能でしたら、特性を踏まえて情報発信した他の事例も教えてください。

そうですね。WebならWeb、テレビならテレビと、各メディアの特性を踏まえてPR施策を考えるようにしています。

最近も、Webとテレビの特性を踏まえ、ある仕掛けを施しました。当社はフジテレビの月9ドラマ枠でテレビCMを流していまして、そのCMを1回だけ、別の映像に変えたんです。

仕掛けたのは、4月27日放映回で流した「ムシューダ」のCMです。そのCMには高橋愛さんに主婦役で出演してもらっているのですが、彼女は実生活でも2014年に結婚したばかり。共演者の主婦役を呼び「アドリブで高橋さんに新婚生活について質問してもらえませんか?」とお願いしておいて、CM撮影中に「結婚してから、どう?」と聞いてもらったところ、高橋さんが「えっ!?」と予期せぬ質問で戸惑った表情をしたんです。そのときに撮影した表情がすごくかわいかったとスタッフの間で好評で、「これはCMに使おう!」と27日に1回限り流すことになりました。

そのCMを流すという情報は、放送当日の27日午後、プレスリリースで流しました。直前に情報を流しておくことで「どうやら今晩の月9限定で、こんなCMが流れるらしい」とネットニュースから口コミが拡散することに期待したわけです。

テレビでは非常に魅力的な映像を見せて、そこに注目してもらうため、すぐに情報発信できて即効性があるWebで話題をつくる。27日の展開でも、そんな狙いを持ってPR戦略を組み立てていました。

『メディア特性を踏まえて最適な情報を提供。記事掲載件数を約5倍に増やしたエステーの広報活動』
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