今後200年、300年とファンを増やしていくために。高級車ブランド「アストンマーティン」のPR戦略
Case: 幅広い層にブランドを広めるアストンマーティンのPR活動
マーケティングにおいて、ROIやCPA、CPIなど、目に見える“数字”を追求する企業がある一方、一朝一夕には築けない“ブランド”を大切に育んでいく企業もあります。
後者を重視している企業の1社が、1913年の創業から100年以上も続くイギリスの高級スポーツカーブランド「アストンマーティン」。なんと、これまでに出荷した台数の9割が今も現役というほど、世界中のオーナーから愛されているブランドです。また、映画『007』シリーズで主人公のジェームズ・ボンドを乗せるボンドカーとしても最多の登場回数を誇り、それぞれの時代で憧れの自動車として注目を集めてきました。
そのような歴史あるブランドのアジアパシフィックでの広報活動を担っているのが、アストンマーティン ジャパンリミテッドでMarketing PR Coordinatorを務める坂本 裕美氏です。ブランドの価値を高めるためにどのような意識で広報・マーケティング活動に取り組んでいるのか、グローバル企業のアジア展開を統括する企業の担当者としてどんなところに気を付けながら各国での展開を図っているのか、お話を伺ってきました。
販売支援、未来のオーナーへの訴求、一般層への認知拡大。PRが担う3つの役割
――ブランドを大切にする企業の広報・マーケティング担当者として、日々の業務の中でどのようなところに気を配っていますか?
アストンマーティンが企業理念として掲げているのは「Power, Beauty and Soul」です。アストンマーティンは、単に車という移動手段ではなく、世界観、つまり100年の歴史、文化、走る芸術品をお届けいたします。他では決して体験することのできない、アストンマーティンならではの体験をお届けすることがわれわれの務めであると考えております。
普段の業務からこの理念・思いを何度も思い出し、アストンマーティンの魅力を正しく伝えられるように心掛けています。
PRをする上で、大きく分けて3つの目的を持って情報を発信するようにしています。1つは、販売に直接つながるようなメッセージを私たちの顧客層に向けて発信すること。2点目が、数年後に車のオーナーになってくださるかもしれない若手・中堅層に、アストンマーティンの魅力を伝えていくこと。そして最後に、子供から全てを極めた成功者まで、あらゆる層にアストンマーティンというブランドを知っていただくことです。
タキシードでビシッとドレスアップしてパーティへ行ったり、そのままサーキットへ乗り込んでもスポーティーに走りこなせるというアストンマーティンならではの世界観をより多くの人へ伝えていかなければなりません。
今後も200年、300年と続くブランドに育てるための挑戦
――幅広い年齢層に向けてメッセージを届けようとしているんですね。
「アストンマーティン」と言えば、「ビジネスに成功して財を成した中堅・シニアの方でないと乗れない」といったイメージを持たれている方がいらっしゃるかもしれません。
ですが、決して若い方が乗れない車ではないのです。どの年代にも愛されるブランドであるために、「ブランドを傷つけないために露出を厳しく制限する」という減点式の思考ではなく、「意味のあることなら、ブランドを広めるために積極的に挑戦してみる」という加点式の思考で業務に取り組み、より多くの方にアストンマーティンのファンになっていただきたいと考えています。
幅広い層に向けてメッセージを発信していけば、メッセージを受け取ってくれた子供たちが将来、アストンマーティンのオーナーになってくれるかもしれません。そうして今後も200年、300年と続くブランドに、アストンマーティンを育てていきたいのです。
日常の一コマにアストンマーティンを。ライフスタイル系メディアにアプローチ
――「今後も200年、300年と続くブランドに育てていく」ため、PR時にはどのような工夫をしていますか?
新型車を発表するときには、当然、自動車関連の専門誌や大手メディアにアプローチするようにしているのですが、それだけでなく、ライフスタイル系のメディアやファッション誌などにも積極的にコミュニケーションを取るようにしています。
「日常生活を切り取った一場面の中に、ちょっとしたラグジュアリーなアイテムとして、アストンマーティンの新車をさりげなく入れてみませんか?」と提案してみるわけですね。その結果、あるメディアが興味を持ってくれて、モデルさんと一緒にアストンマーティンを紹介してくれたことがありました。実際に、「この車って何ですか?」という問い合わせにもつながりましたね。
今以上にアストンマーティンのブランドを広めていくためには、ライフスタイル系・ファッション系のメディアとの関係を強めていく必要があると考えています。
国ごとに違う言語・文化の違いを意識し、戦略を変えて情報発信
――続いては、グローバル企業のアジアパシフィックをカバーする広報・マーケティング担当者として、意識している点を伺えないでしょうか。
私たちは、日本・韓国・香港・台湾・シンガポール・マレーシア・タイという7つの国・地域での展開を統括しています。そして今後は、インドネシア、フィリピン含むアジア諸国での展開をシンガポールチームと共に統括していきます。
同じアジアといえども、国ごとに言語・文化が違います。国によって、右ハンドルか左ハンドルか、雨量は多いか少ないかといった環境が違います。高級車が好きなのかスポーツカーが好きなのかといった国民性も違いますし、テレビCMが最適な国もあれば雑誌での露出が重要な国もあり、効果的なアプローチ方法も異なります。
ですから、事前に売上予測を立てても、なかなか予測どおりには進みません。毎週、売上と施策の進捗を見ながら、電話やメールを使って各国のディーラーと綿密にコミュニケーションを取り、国ごとに適切な手を打てるように留意していますね。
そうして各国のディーラーの意見を尊重しながら施策を考えていくわけですが、逆に日本から成功事例を共有し、各国のディーラーに勧めてみるなどして、できるだけ売上を押し上げられるように努めています。
『国内各地で開催するイベントへの集客効率化にPR TIMESを活用』
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