密室で何かが起こる!?「映画館」を舞台にしたサプライズ満載のプロモーション11選

Case: Creative advertising at movie theaters

今回は「映画館」を舞台にした、密室かつ暗闇空間ならではのキャンペーンを11選ご紹介!

映画を観に来たお客さんに対し、巨大スクリーンを活用したダイナミックな映像はもちろんのこと、観客を巻き込んだゲリラプロモーションやスマホを使ったゲームイベントなど、サプライズ感・インパクト共に抜群の事例をまとめてご紹介します。

1.映画館でのサプライズ・プロモーション “事件の重要な証人は…!?”


[国名:南アフリカ/企業名:FOX Crime Network]

ミステリーやサスペンス系のドラマを専門とするTVチャンネル「FOX Crime Network」が、南アフリカでの開局と新番組の宣伝のために映画館で行ったキャンペーン。映画本編の前に、新番組の予告編を上映しました。

殺人事件の現場に捜査官が到着。薄暗い中、事件を紐解く手がかりはないかと、慎重にあたりを見回します。そして手に持っている懐中電灯を観客席脇の壁の方に向けると…血しぶきのような痕跡とともに「次はお前の番だ」「助けて!」と書かれた文字が、不気味に浮かび上がったのです。

この文字は“UVライトをあてると目に見える”という、特殊なインクを用いて書かれています。この塗料を使って「次はお前の番だ」と書いたシートを、事前に観客席の左右の壁に貼っておいたのです。

そして予告映像を流し、捜査官が懐中電灯を壁の方に向けると同時に、こちらもあらかじめ設置しておいたUVライトを壁に照射し、文字を浮かび上がらせたという仕掛け。

観客をストーリーの一部に見立て、“事件の重要な証人”にするという気の利いた演出に、会場は大盛り上がり。一夜にしてツイッターやフェイスブックを通じて瞬く間に広まり、視聴者数も予想より大幅に増えたそうです。

2.3週間で6千人の試乗予約! 映画館のスクリーンを利用した、マツダ新型車のゲームPR


[国名:カナダ/企業名:Mazda]

マツダが発表した最新車種「Mazda3」のプロモーション。実施されたのは、カナダ・トロント市内の数ヶ所の映画館。上映前のひと時に観客席を“車の運転席”に見立て、迫力満点の“レーシングゲーム”を行ったのです。

ハンドル操作はスマートフォンで専用アプリをダウンロードして行います。スマホを両手で持って、右に傾けると車は右に曲がり、左に傾ければ左にハンドルを切るといった具合。都心の高速道路を猛スピードで疾走します。

ゲームはそれぞれの観客が同時にプレイできるようになっていて、互いに順位を競い合います。スクリーンにはリアルタイムに順位も反映され、優勝者はその日の映画代が無料になるという特典も。

さらにこのアプリを通して、Mazda3の実際の試乗を予約することもできるようになっており、当プロモーションの開始からわずか3週間の間に6,000人以上の人が試乗の予約をしたといいます。

3.映画の観客に“間違った本編を見せる”ことで真意を訴える世界初のPR


[国名:イスラエル/団体名:EMDA Israeli Alzheimer Association]

アルツハイマー患者の支援団体「EMDA Israeli Alzheimer Association」による、『世界アルツハイマー意識喚起週間』に合わせて、イスラエル市民へのアルツハイマーに関する理解を深めることを目的としたプロモーション。舞台は、同国最大のシネマコンプレックスです。

観客が入り、映画本編が始まりますが、上映予定の映画とは違う映画がスクリーンに映し出され、観客の皆さんは「あれ、会場間違えたかな」と感じて不安になります。あちこちで「この映画ちがうよ!」と言ったり、間違った会場に入ったのだと、席を立つ人も現れます。

観客たちが当惑している中、しばらくしてスクリーンには以下のテロップが映し出されます。

『いいえ、あなたは会場を間違えていません。正しい会場にいますよ。』
『私たちはただあなたに、アルツハイマー患者と同じような「認知機能(空間認識機能)が失われたのではないか」とひどく当惑してしまう不安な感情を体験させたかったのです。』
『実のところそのような体験をしている人がイスラエル国内に10万人もいるのです。』

『伝える』のではなく、実際に『疑似体験をさせて“本当の意味で” 納得させる』というアプローチ。

「アルツハイマーになると、こんなに大変なんだよ」と何百回見たり、聞いたり、読んだりするよりも病気の本質について理解が深まる施策です。

4.炭酸ジュースの中にXperiaが!? ソニーが仕掛けた超絶巧妙な映画タイアップ


[国名:スウェーデン/企業名:SONY]

映画007シリーズの最新作「Skyfall」とタイアップした、ソニー・エリクソンのサプライズプロモーション。

封切週の週末2日間に、映画館に来た007のファン全員にSonyのロゴが入った炭酸ジュースを配布します。毎上映前にシアター内のスクリーンに「Welcome」と表示し、入口でカップを受け取った人の中から一人に、“防水”が特長のXperiaの新商品が与えられることがアナウンスされます。

すると突然、客席のどこかから着信音が鳴り響きます。「あれっ、何か俺のジュースの中から音が聞こえてくるな」とおもむろに男性がカップを開けてみると、そのカップの中に炭酸ジュースにまみれた新型Xperiaが入っているという企画。もちろん、そのままXperiaを持って帰れます。

このスタントに対して、週末2日間の毎上映中に会場内は大いに盛り上がったといいます。スパイ映画の王道「007」の世界観を反映させながら、防水機能が特長の新商品を見事に訴求しています。

5.真のヒーローは“ここ”にいる! 映画の予告編を利用した心温まるプロモーション


[国名:カナダ/団体名:SickKids Foundation]

病気の子供を支援するカナダの慈善団体「SickKids Foundation」による、様々な病気と闘う子供たちへの理解とサポートを募ることを目的としたプロモーション。トロントのとある映画館で実施されました。

いつも通り始まった映画の予告編。主人公とおぼしきヒーローが颯爽と登場したところで、突然フィルムが切り替わります。「真のヒーローを称えよう!」とのメッセージに続いて映し出されたのは、病院のベッドの上で笑顔を見せる当時5才のアントニオ君。

白血病を患い闘病中にも関わらず、ジョークを飛ばしたり愛らしい笑顔を振りまいているアントニオ君の映像に会場は一気に引き込まれます。無事治療を終え退院したというアントニオ君に対して、当時の担当医から応援メッセージも流れます。

そして、アントニオ君はまさに“この日”から学校に通うことができるようになったと、ナレーションが告げます。朝の登校風景が流れたところで、再びスクリーンが切り替わり、客席でポップコーンを頬張る一人の少年が映し出されました。そう、この少年こそ、アントニオ君だったのです。

真のヒーローの登場に、会場は大きな温かい拍手で包まれます。アントニオ君は照れながらも拍手に応え立ち上がりました。本編以上に(!?)観客の心を捉えることに成功した素敵なゲリラプロモーションでした。

6.『寄付をするか否か』で異なるストーリーが展開するショートフィルム


[国名:ニュージーランド/企業名:Pedigree]

大手ドッグフードブランド・Pedigreeによるプロモーション。ニュージーランドでは毎年数千頭もの犬たちが、飼い主に捨てられたり迷子になったりして住む場所を失っているという事実を周知し、捨て犬を保護して里親を見つける活動への寄付を呼びかけるため実施されました。

映画を観に来たお客さんに、劇場に入る際に募金を呼びかけます。ぺディグリーの活動に賛同し、募金をした人には『黄色い3Dメガネ』を、募金をしなかった人には『赤い3Dメガネ』を手渡しました。

観客が着席し、映画本編が始まる前に、飼い主に捨てられた一匹の犬を描いたショートムービーを上映したのですが、黄色いメガネをかけた人と、赤いメガネをかけた人とでは、全く異なる映像が見える仕掛けが施されていたのです。

黄色いメガネをかけた人が見た映像(上記YouTubeの映像)は、捨てられた犬は施設に引き取られて健康を取り戻し、心優しい里親に引き取られる、というハッピーエンド。一方で赤いメガネをかけた人が見た映像は、捨て犬は誰にも助けられることなく、鎖でつながれたまま、というストーリー。

私たちからの寄付が捨てられた犬の命の分かれ目になるかもしれない、という事をダイレクトに訴えかけています。

7.映画のラブシーンに、コーラをすする自分が出演!?


[国名:デンマーク/企業名:Coca Cola]

皆さんは映画館で映画の鑑賞中、ズルズル音を立ててドリンクを飲む人やムシャムシャポップコーンを頬張る人の音が気になったことはありませんか?コカ・コーラでは、驚きのスタントを通じて「上映中はお静かに願います!」というマナー告知を行いました。

舞台となったのは、デンマーク・コペンハーゲンのとある映画館。待合ロビーに大きな緑のスクリーンと、スクリーン前を行き来する人を撮影する隠しカメラを設置します。ターゲットは映画を見るために来館した多くのお客さん。

何も知らず、緑のスクリーンの前でコーラをズルズル飲んだり、携帯電話で話したりするお客さんをこっそり撮影します。映像は即座に合成され、本編上映前に流れる予告篇映像に組み込みました。映画館で実際に流れた予告編は、最も静かに見たい、つまり最も音が気になる「ラブシーン」。

そこに、突如、先ほどロビーで隠し撮りしたズルズル音を立ててコーラを飲むお客さんや、まるでラブシーンにくぎ付けになっているかのように見える表情を浮かべるお客さんや、携帯電話で話すことに夢中になっているお客さんの映像が現れ、ラブシーンとまさかの“共演”を果たします。

突然のドッキリ映像に、お客さんは大喜び。同時に、何気なく立ててしまっている音が映画にもたらす影響を実感することになりました。

8.外国語を習得するメリットとは?

[国名:セルビア/企業名:Kontext Language School]

セルビアの語学学校「Kontext Language School」による映画館を活用したサプライズプロモーション。映画館の待合スペースに、『コーヒー1杯無料サービス致します。スタッフまでお声掛けください』と“母国語ではない”ドイツ語で書かれたメッセージボードを設置しました。

そして映画の上映前にスクリーンに母国語で「あなたは無料のコーヒーサービスを逃しまたよ。外国語を習ってみてもよいのでは!?」というメッセージを表示しました。

結果、異例のスピードで40人以上の新規申し込みを獲得したそうです。映画館の待合スペースで多くのお客さんに「これ、何が書いてあるんだ?」と疑問に思わせた上で、スクリーンでなぞ解きをするという企画でした。

9.映画館で誘拐発生!? Amnesty Internationalによる人権侵害啓発プロモーション


[国名:ウクライナ/団体名:Amnesty International]

世界最大の国際人権NGOであるアムネスティ・インターナショナルが、世界中に蔓延る人権侵害問題の啓発のため、ウクライナのとある映画館で実施した迫力満点のプロモーション。

映画上映中に突如放映が中断され、迷彩服に目だし帽を被った男たちが突然乱入してきます。男たちは「席を立つな!」と叫び声をあげたかと思うと、突如前から2列目に座る若い男性を誘拐します。

すると、一人の観客の男性が立ち上がり、「不当逮捕だ!逮捕状はあるのか!」と果敢に立ち向かいます。「私は弁護士だぞ!君たちにこんなことをする権利はないはずだ!」と大声で交戦しますが、この男性もまた迷彩服の男に連れ去られてしまいます。

異様な光景を目の当たりにし、会場が凍てついたところで種明かし。スクリーンに「今ご覧いただいたのは、プロの俳優による芝居ですが、このような出来事が現実に起こっています」とのメッセージが映し出されると、観客たちは安堵で静かな拍手を送りました。

10.史上初! 観客参加型のホラー映画


[国名:ドイツ/企業名:13th Street]

ホラー映画専門チャンネルの「13th street」が「Last Call」という“観客参加型”の映画を製作しました。

観客は映画のチケットを購入する際に全員が自身の携帯電話番号を登録します。すると映画の上映中、各場面(ストーリーの展開を左右する場面)で、選ばれたひとりの観客の携帯に映画の中のキャストから電話が掛ってくるのです。

選ばれた観客は携帯電話を通して、キャストに映画の次の展開を指示することができます。ストーリーは観客の指示通りに進んでいき、各上映回ごとに異なる展開を見せます。

音声認識システムを活用したインタラクティブな映画。映画の展開や結末は多数用意されており、選ばれた観客によって映画のエンディングまでも異なっていたそうです。ぜひ映画館に足を運んでみたいと思わせるユニークなイベントでした。

11.映画館でのゲリラプロモーション“館内に侵入したゾンビの末路とは…


[国名:南アフリカ/ブランド名:The Walking Dead]

ゾンビによる世界の終末後の物語を描く、米人気テレビドラマ「The Walking Dead」の新シーズンを告知する映画館を舞台にしたゲリラプロモーション。

本編の上映前に『恋愛ドラマの予告編』に視線をやりながら、リラックスする観客たち。予告編も中盤に入るところで、一体のリアルなゾンビが映画館内に侵入し、観客を驚かせはじめます。

階段を下りてきて徐々にスクリーンの方に近づいてくるゾンビ。そんな血に飢えたゾンビの姿などお構い無しに、恋愛ドラマの予告編では、二人の男女によるクライマックスが繰り広げられていくかと思いきや…突如出演している女性が拳銃を手にし、スクリーンの外にいるゾンビに狙いを定め、銃弾を発射します。大きな銃声が轟くと同時に、銃弾に撃たれ奇声をあげてその場にうずくまるゾンビ。

「何が起こったのか」と唖然とした観客。スクリーンには「Life goes on again.」(また人生は続く)という意味深なメッセージの後に、「The Walking Dead」の新シーズンの簡単な予告編を流してネタバラシをするという流れでした。

観客はここでプロモーションの主旨がわかり、館内は大きな歓声に包まれました。スクリーンの「中」と「外」を連動させるという発想が何とも大胆ですね。こういうサプライジングな企画は、ただ斬新というだけでなく、観衆の印象にも強く残りやすいと思います。

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