長野五輪会場がエクストリーマーの聖地に?日産X-TRAILの手がける「遊び場づくり」

Case: THE “PLAY” LIST

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、日産自動車「THE “PLAY” LIST」を取り上げます。こちらはX-TRAILのマーケティング施策として、エクストリーマーたちの遊び場を作るというコンセプトで展開されているもの。「THE “PLAY” LIST」#1として選ばれたのは1998年長野五輪のボブスレー会場。今年、来年からの製氷中止が発表されたこの施設をエクストリーマーたちの遊び場として再定義。有名エクストリーマーを起用したコンセプトムービーや、一般から参加を募りエクストリーマーたちが楽しめるイベントをこの場で展開。X-TRAILのスポーティーなイメージの訴求とともに、休眠施設の新たな活用法を提案する施策となりました。

この施策の狙いについて、日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チームマーケティングマネージャーオフィス チーフマーケティングマネージャー 山脇考樹さん、TBWAHAKUHODO インタラクティブプラナー 鈴木徹さん、TBWAHAKUHODO CMプラナーコピーライター 田中裕二さん、TBWAHAKUHODO アートディレクター 木村洋さん、TBWAHAKUHODO PRプラナー 小林秀行さんにお話を伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人
エクストリーマーたちの抱える課題を解決

—まずは、今回の施策の狙いについて伺えますか。

山脇:X-TRAILに乗っていない方、次の車としてX-TRAILを考えていない方、そういった方にX-TRAILのモデルチェンジやこの車種の魅力を伝えていく、というところがまずマーケティング活動全体の狙いです。Mクラス以上のSUVの中ではシェアNo.1のポジションではあるのですが、それでも、これから乗っていただきたい方はたくさんいらっしゃいます。

その中でコアなコミュニケーションターゲットは30代の男性で、かつエクストリーマーとしてアウトドアに本気で取り組む、新しいことにチャレンジしたいという方です。そんな方のアクティブな生活をサポートできる車でありたいと考えています。

—その前提があった上で、どのように今回の「THE “PLAY” LIST」という施策に行き着いたのでしょうか。

鈴木:プロパイロットという同一車線での自動追従機能がついているのですが、この機能があることで、いくら遊び疲れていても帰り道は楽チンなドライブができます。ただそんなエクストリーマーにとっては遊ぶ場所自体が足りない…そこで遊び場を作ろうというのが意図です。コピーとしても「遊びつくせ。走りつくせ。」という表現をしています。

山脇:日産自動車では、ニッサン・インテリジェント・モビリティという活動を推進しており、プロパイロットを装着したのはセレナに次いで2車種目です。そういった「技術の日産」という側面もありながらも「ぶっちぎった」企画であること。その前提の中でエクストリーマーの世界観にマッチした構造を考えました。

小林:実際に、エクストリーマーたちに調査を行ったところ、彼らには「公園などで遊びづらくなっている」という課題がありました。

鈴木:メッカである渋谷の宮下公園がなくなるなど、遊べる場所が限られていたり、遊べたとしても「スケボーの音がうるさい」などと追い出されているような感覚があったり、彼らの90%以上が「自分たちの遊び場が足りていない」と感じていました。ならば、遊ぶ場所も用意した上で、行き帰りの楽チンな移動が快適なX-TRAILに触れてもらえる体験を作ろうと考えました。

—長野五輪のボブスレー会場を使ったという点はとてもインパクトがありますが、どのように見つけたのでしょうか?

鈴木:大前提として、エクストリーマーには「ダメと言われる場所でやってみたい」「まだ誰も滑っていないところでやってみたい」という精神性があることが分かりました。そこから我々や博報堂ルートでも日本全国の使われていない施設を探して、その中の一つとしてこの会場が浮上しました。

山脇:この案に惹かれたのは、製氷中止が発表されたかつて五輪で使われた施設を利用するという社会性もあることですね。その場所を有効活用する手助けにもなれば、さらに話題として広がる可能性があるなと。

鈴木:エクストリーマーにとっての聖地をX-TRAILが作り上げ、その聖地を作り上げたX-TRAILをエクストリーマーが愛するという構造が出来ればよいなと思っていまして、そのためにも誰もが「聖地」と呼べる場所にしたいという面もありました。

—長野市の方はこの提案を受けて、どのような反応でしたか?

小林:ちょうど今後の使い道を模索していこうという時期だったと思うのですが、スポーツ振興課に積極的な担当者の方がいて、やるなら楽しんでいただこうと前のめりになってくださいました。

X-TRAILがエクストリーマーの仲間であることを表現

—実際にエクストリーマーを集めたイベントを行う前に、トップクラスのエクストリーマーを起用したコンセプトムービーやビジュアルを撮影されていますが、こちらで大変だった点・こだわられた点を教えていただけますか?

田中:私はムービーを担当しましたが、実際に走ってみると結構危ないということがわかった中で広告としてギリギリの、安全とスリルの狭間を攻めていくことに腐心しました。ただエクストリーマーがすごいと思ったのは、だんだん慣れてくることですね。

木村:ビジュアルを作る時に気をつけたのは、「with エクストリーマー」一緒に作り上げていく感覚です。エクストリーマーの様々な写真を研究して「今までと同じ写真」「見たことある写真」ではなく、どういう写真を撮ったら「見たことない写真」になるのかということをヒアリングしながら作り上げていきました。

[コンセプトムービー]
田中:今回ムービーでも様々なかっこいい事例を参考に探しましたが、ほとんど海外のもので。日本でエクストリーマーがあまり日の目を見ていないなと感じました。エクストリーマーと向かい合っているブランド、エクストリーマーに近いブランドであることを意識して表現しました。

—イベントの方はいかがでしたか?

小林: いい天気にも恵まれ、タフなコースでもスリルを楽しむ雰囲気で、終始笑顔が絶えませんでした。イベントとして当然安全性に配慮するわけですが、楽しさとの間をどこに取るか、前日まで山脇さんとは議論を重ねていました。

山脇:やはり遠くから来てくださって「遊び場として物足りないな」と思われてはいけないなと。実際にやってみると、ちょうどいいバランスをとれたかなと思います。

—ムービーではX-TRAILがエクストリーマーに並走していますが、イベントの方ではどのように活用したのでしょうか?

小林:送迎という案もあったのですが、予想以上に参加車が増えたのでマイクロバスでの送迎になりました。その分コースのすぐそばに車を置いて展示やトライをしてもらいました。

鈴木:「with エクストリーマー」という言葉に尽きると思っています。X-TRAILもエクストリーマーの仲間であると。ムービーでも仲間として一緒に走り、イベントでも仲間としてすぐそばにいる感じを意識しました。

地元テレビ局からの思わぬ反響

—反響についてはいかがでしたか?

山脇:参加した方からのSNSでの発信を通して、我々が届けたいターゲットに届けられたのでは、リアルなイベントをやったからこそ広がったのではと思っています。当日は「もっと滑りたい」などとエクストリーマーの方からの声もたくさん聞くことができましたし。

小林:参加した方が自ら相当時間をかけてエディットした動画を公開してくれたのですが、その動画を見て「まさにこういう風に届けたかった!」と思いました。

木村:私は以前ロサンゼルスにいたのですが、一般の方もエクストリーマーに寛容だなと感じました。日本にもそういった土壌を作れたらと思いますし、イベントにいらした方からも「来年もやってください!」と言われたり、12:00スタートにも関わらず5:30にはすでにいらしている姿を見たり、そういった熱に触れられたことは良かったですね。

—NHKや長野朝日放送など、地元TV局からも多くの取材があったそうですね。

小林:ディレクターの方が「あそこは長野の人にとっては一種のシンボル」だとおっしゃっていました。主に30-40代の方にとっては憧れの場所で、完成した当時「すごいものができた」という評判だったそうです。その中で製氷中止となることは少なからず寂しかったようで、その施設をどう有効に活用するか、という面から注目してくれました。

—今後の構想についても聞かせて下さい。

山脇:今回のような企画を継続していくことで、X-TRAILがエクストリーマーの頼れる仲間・相棒であるということ、そしてX-TRAILがニッサン・インテリジェント・モビリティでさらに進化したということを訴求していきたいですね。

小林:仲間になるためには一緒に遊ぶことは自然ですよね。これからもX-TRAILとエクストリーマーが仲良くなれたらいいなと思っています。

鈴木:我々はX-TRAIL JAM(2001年から2008年まで東京ドームで行われていたスノーボード大会)を見て育った世代ですが、今、自分たちがお手伝いする世代になった時に何ができるか、ということだと思います。X-TRAILの持つDNAは全く変わっていないと思うので。

山脇:また今後という面では、どうしてもエクストリームスポーツを突き詰めていくと男臭くなるのですが、サーフィンなど女性やお子さまもたくさん参加していただけるようなスポーツとの相性も、今の立ち位置をベースにしながらも、探っていけたらいいなと思います。

(写真提供:日産自動車株式会社)

日産自動車株式会社 日本マーケティング本部 チームマーケティングマネージャーオフィス チーフマーケティングマネージャー 山脇考樹さん(左から1番目)、TBWAHAKUHODO インタラクティブプラナー 鈴木徹さん(左から2番目)、TBWAHAKUHODO CMプラナーコピーライター 田中裕二さん(左から3番目)、TBWAHAKUHODO アートディレクター 木村洋さん(左から4番目)、TBWAHAKUHODO PRプラナー 小林秀行さん(左から5番目)

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