日本の伝統技術が「カンヌライオンズ2023」で金賞を受賞、その技術とは

ドイツ・ミュンヘンを中心に事業を展開する日系繊維スタートアップ「AIZOME」とクリエイティブエージェンシーServiceplan Innovationが共同で実施したプロジェクト『AIZOME WASTECARE』が、2023年6月19~23日にフランス・カンヌで開催された世界を代表するクリエイティブの祭典である「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」においてデザイン部門でゴールドを受賞しました。

AIZOMEは、日本の伝統的な藍染をベースにした染色技術を用いることで、化学物質を一切使用せずに、抗菌・抗炎症・抗酸化作用などをはじめとした薬用効果のあるベッドシーツや枕カバーなどの寝具を製造・販売しています。この製造工程のオーガニックさや製品自体の薬効から、染色後に残る「廃水」に注目。そして、廃水の持つ特徴を生かして開発されたのが、プレミアムスキンケア製品「WASTECARE™」です。寝具をメインとしたAIZOMEの製品ラインナップを鑑みて、「夜用美容液」というコンセプトで開発されています。

繊維産業は世界の水質汚染の約20%の原因になっているというデータもあるほど、廃水の無毒化や適切な処理は業界全体で取り組むべき大きな課題となっています。化学物質を一切使用せず、藍と水のみを使用した100%オーガニックな染色方法である藍染を採用することによって課題解決の一助となるうえ、製造工程で出る廃水をもスキンケア製品として有効活用することで、さらに社会貢献につなげています。

いっぽう、今回受賞した「カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバル(Cannes Lions International Festival of Creativity)」は、世界にある数々の広告・コミュニケーション関連のアワードやフェスティバルの中でも、エントリー数・来場者数ともに最大規模を誇り、期間中には約100カ国から15,000人以上の来場者が集まるもの。アワードは全30部門(2023年には、 Sustainable Development Goals部門が新設)あり、毎年2万点を超えるエントリーが集います。 各部門に応募された作品の中から、審査員の厳正な評価とディスカッションを経て、部門ごとにグランプリ・ゴールド・シルバー・ブロンズが選出されます。また、クリエイター オブ ザ イヤーなどの特別賞も毎年選出されるほか、世界中の多様な業界のプロフェッショナルが一堂に会し、国や業界を超えて連日非常に盛んな交流が行われるまたとない場としても機能しています。そんな名誉あるカンヌライオンズのデザイン部門でのゴールドの受賞。日本の伝統的な染色技術である藍染に、超音波を用いて進化させた染色技術「AIZOME ULTRA」によってテキスタイル製品を生み出すとともに、製造工程で出る廃水までもスキンケア製品として成立させたアイデアの独自性と技術力の高さで成立した、今回の受賞プロジェクト「AIZOME WASTECARE」は、まさに受賞に値する革新性あるものでしょう。人間の社会活動によって、地球が汚染されることもあれば、人間の知恵と技術で汚染を防ぐこともできる、サステナブルな製品設計に、これからの社会に必要な企業の在り方を感じさせる事例でした。

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