カンヌライオンズ2021「Reach」グランプリ受賞作品まとめ

6月21日〜25日にオンラインにて開催された「Cannes Lions 2021」。あらゆる手法を駆使して多くの人の心に触れた作品に贈られる「Reach」部門において、データを最大限活用した作品を評価する「Creative Data Lions」、優れた戦略を持ち合わせた作品を評価する「Creative Strategy Lions」、斬新なターゲットの絞り方がなされた作品を評価する「Direct Lions」、シームレスにクリエイティブとメディアを融合させた作品を評価する「Media Lions」、戦略的なコミュニケーション手段が取られた作品を評価する「PR Lions」、SNSとインフルエンサーの力を最大化させた作品を評価する「Social & Influencer Lions」の6つの賞におけるグランプリをご紹介します。

Creative Data Lions

「SAYLISTS」(Warner Bros)

言語障害と戦う子どもにとって克服への近道は苦手なフレーズを繰り返すことだと言われていますが、集中力が途切れやすい子どもからすると”何度も繰り返す”という工程はとても難しい作業です。これを解決するため、イギリスのWarner BrosはAppleと協業し、Apple Musicで子どもが楽しみながら同じフレーズを繰り返し練習することができるプレイリスト「Saylists(おしゃべりリスト)」を公開しました。

「Saylists」では、Apple Musicが誇る7,000万曲ものライブラリから、”Th”や”Ch”などの発音が難しいと言われている特定の音を含んだ人気アーティストの曲(The Black Eyed PeasやColdplay、Rihanna)のみが抜き出され、それぞれが個別のプレイリストとしてアーカイブされており、子どもたちはこの楽曲を繰り返し聞いて発音の練習をすることで飽きずに練習することができるのです。

Creative Strategy Lions

「CAN’T TOUCH THIS」(Cheetos)

スナック菓子のCheetosは、Cheetosを食べているときに頼まれごとをしても手が粉だらけだから気軽に物に触ることができない、という一見ネガティブな状況を逆手に取り、さまざまなお願いを断る男性の姿をユーモアたっぷりに描いたCMを制作しました。

MC Hammerの往年の名曲「U Can’t Touch This」を起用したCMでは、上司から書類を運ぶよう頼まれたとしても、知り合いに赤ちゃんを抱いてくれと頼まれたとしても、肩に乗った蜘蛛を取るよう頼まれたとしても、Cheetos Popcornを食べているから手が汚れていて触れないという理由のみで断る男性のようすが映されています。

商品を食べているときの人の心理をうまく捉え、それを最適な形でCMとしてアウトプットした点が高く評価されたようです。

The Direct Lions

「STEVENAGE CHALLENGE」(Burger King)

「Experience」部門のBrand Experience & Activation Lionsでもグランプリを獲得したBurger Kingの「Stevenage Challenge」が、「Reach」部門のDirect Lionsと後述するSocial & Influencer Lionsでグランプリの座に輝きました。

イギリスのサッカーリーグにおいて最弱クラスのクラブチーム・StevenageをBurger Kingがスポンサードしたことで、ユニフォームの前面に載ったロゴが、現実世界のみならず人気サッカーゲーム「FIFA 20」においても反映されました。

これを機にBurger Kingが、世界中の「FIFA 20」プレイヤーに対し、Stevenageがゴールを決めた瞬間の映像をSNSにシェアするとBurger Kingの無料券やクーポンなどをプレゼントするキャンペーンを実施。このキャンペーンのおかげで、多くのプライヤーがゲーム内でトップレベルの選手たちをStevenageに移籍させた結果、25,000を超えるゴールシーンがSNS上に拡散され、瞬く間に「FIFA 20」において最も人気なクラブチームになりました。

Media Lions

「BOARDS OF CHANGE」(City of Chicago)

黒人の基本的人権を守る活動・Black Lives Matterの際、店舗や住宅の窓が割られるのを防ぐため、多くの若いアーティストたちのグラフィティアートが描かれたバリケード。それらを、多くの黒人たちが投票者として登録していない声なき市民と言われないよう、そして彼らが今後投票に参加し、二度と同じような活動を起こす必要がないように統領選挙の投票ブースとして作り直したのがCity of Chicago。

この投票ブースが設置されたことによって政治に参加することの重要性を改めて理解した黒人たちはこぞって投票者登録を行い、シカゴ市の投票数は過去最高の数値を更新することができました。

「NAMING THE INVISIBLE BY DIGITAL BIRTH REGISTRATION」(Telenor)

6,000万人もの国民が戸籍登録をしていないと言われているパキスタンでは、健康保険をはじめとした公共サービスを利用できない人たちがいることが大きな社会課題として掲げられていますが、この課題を出生登録から解決するために、通信会社のTelenorが、戸籍登録が簡単にできるスマートフォン用アプリを開発しました。

出生登録を5つのステップに分解し、スマートフォンが普及していない地域には専用の職員を派遣し代理申請を行った結果、426もの村で120万人もの新生児の出生登録を行うことに成功しました。

PR Lions

「CONTRACT FOR CHANGE」(ABInBev)

ビールメーカーABInBevは、アメリカにおいてオーガニックな農家を増やすために「Contract for Change(進歩のための契約)」という名前の独自の契約を発表。これは、有機栽培に切り替えることで最初の3年間はABInBevが主要な顧客になることと、切り替え期間中に発生した作物を通常の1.25倍の価格で買い取ること、さらには切り替えにかかる費用や技術面でサポートすることを約束した契約になっています。

オーガニックに切り替えたくても顧客の保証もないうえ、多額の初期費用がかかってしまうという課題をすべて取り除いた本契約は、104,000エーカーもの土地をオーガニック栽培用に切り替えることに成功しました。

「THE BREAD EXAM」(Spinneys and the Lebanese Breast Cancer Foundation)

イスラム教の国・レバノンでは、女性が自身の身体について語ることは文化的なタブーとされており、深刻な健康被害にもなりうる乳がんについてすら公共の場で話すことができません。この文化的背景を逆手に利用し、大手量販店のSpinneysが、乳がんの自己検診をパン作りに例えることで広く伝える施策「The Bread Exam(パン検診)」を発表しました。

現地の有名なパン職人Um Aliが”円を描くように生地をこねる”や”優しくつまむ”など、誰もが簡単にできるセルフチェックの手順を説明した動画の公開のおかげで、レバノンの女性の間では、乳がん検診の隠語として”Have you baked bread?(パン生地こねたことある?)”という質問が日常的に使用されるようになりました。

Social & Influencer Lions

「SUPERB OWL」(Reddit)

オンラインニュースサイトRedditが、アメリカで広告放映枠が最も高額とされるSuper Bowl期間中にわずか5秒のCMを公開し、そのあまりの短さに衝撃を受けた多くの視聴者が”Reddit CM”と検索した結果、多額の予算が注ぎ込まれた他社を差し置き、RedditがSuper Bowl期間中に最もSNS上で話題を巻き起こしたCMとなりました。

自動車のCMかと思いきや、突然映像が途切れてRedditのロゴとともにテキストだらけの静止画が画面に映し出されるという内容のもので、「すごい、本当に成功しちゃった。あなたがこれを読んでくれているということは、わたしたちの読みが当たったということ。Super Bowlの広告枠は高いから長尺のCMなんて作れなかったんです。だからこそ、わずか5秒分のアイデアに賭けて、マーケティング予算のすべてを注ぎ込むことにしたんです」というメッセージは、Redditが常に熱意を持った人たちが議論を行うサイトであり続けたいという想いが込められています。

「STEVENAGE CHALLENGE」(Burger King)

「Experience」部門のBrand Experience & Activation Lionsと、同じく「Reach」部門のDirect Lionsでもグランプリを獲得したBurger Kingの「Stevenage Challenge」が、Social & Influencer Lionsでもグランプリを獲得しました。

Burger Kingがスポンサードすることによって最弱クラスのサッカーチームがゲーム上で世界トップレベルの選手をある種のインフルエンサーとして活用する手法が評価につながったようです。

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