わざと不愉快な動画を作り、生理貧困に悩む女性のためのキャンペーンを開始した英・日用品メーカー
生理用品を中心としたイギリスの日用品メーカーHey Girlsは、貧困が原因で生理用品を購入できない女性が10%もいるという問題に取り組むため、自社製のタンポンが1つ売れるごとに同一商品を1つ”Period Poverty(生理貧困)”に悩む女性に寄付するというキャンペーンを開始しました。
このキャンペーンのために公開された”Seeing Red(赤と向き合う)”と題された動画は、この理不尽な状況に対してHey Girlsが感じている怒りを視聴者と共有するために、心理学的に人が不快感や怒りを感じやすい要素をあえて盛り込むという方法で制作されたものとなっています。
“Trigger Warning: This film has been designed to provoke anger. Viewer discretion is advised(この動画は視聴者に怒りを感じさせるよう設計されています。閲覧する際はご注意ください)”という、表現しがたい不安を覚えざるを得ない注意書きからはじまる動画は、学校のトイレと思われる場所に駆け込み突然生理が来てしまい涙目になる女性からはじまります。
白い背景に赤い文字で”1 in 10 of us can’t afford to have our period(わたしたちの10人に1人は経済的理由で生理を処理することができません)”というメッセージが画面いっぱいに映されると、ノイズ音や歪曲された人の声などを組み合わせた聴覚的にも不快な音楽が大音量で流れます。激しい点滅や砂嵐のようなエフェクトとともに不穏なタッチで描かれたアニメーションのカットや、高笑いが立て続けに視聴者を襲います。
「どうしてタンポンを持ち歩いていないの?」というナレーションや、生理中の女性のイラストレーションをスマートフォンで見ながら嘲笑うかのような表情を浮かべる人たちの画が続く動画は、合間合間に”Inhale(深呼吸して)”というインサートが入り視聴者に落ち着くことを求めています。
最終的には”ANGRY? GOOD(怒った? ならよかった)”という、通常の広告動画では滅多に見ることのない言葉が映し出され、今回のキャンペーンの趣旨でもあるタンポン寄付の仕組みの説明が入ります。
貧困が原因で生理用品を買えない人がいる、という不条理な状況を視聴者の怒りに変換するため、企画を担当した広告代理店DDBは動画の公開前に何度も事前調査を行い、視聴者が感じた怒りの度合いが強ければ強いほど、現状を打破するためにHey Girls商品に対する購買意欲が高くなることから、動画がより不愉快な内容になるよう調整を重ねたということです。
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