品質へのこだわりや美味しさを「マンション広告」風に表現!?「どん兵衛ポエム」制作の舞台裏

Case:日清食品『どん兵衛ポエム』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回取り上げるのは、高級マンション広告を思わせるようなビジュアルとコピーが話題となった「どん兵衛ポエム」です。8月7日より、公式Webサイトがオープンし、新聞折込チラシ、ポケットティッシュ、タクシーのサイネージなど様々な媒体で展開されました。マンション広告ならではの独特な言い回しや、斬新な当て字、注釈にまでこだわったこれまでにない新しいアプローチの広告プロモーション。インパクトがありながらも、読み手を引き込み、しっかりと「日清のどん兵衛」のこだわりのおいしさを伝える内容となっています。

企画が立ち上がった経緯から、リリース後の反響、日清食品の企業風土まで、企画制作を担当した日清食品ホールディングス 宣伝部 安武雅之さんにお話を伺いました。

Interview & Text : まきだ まどか
「マンション広告」は、こだわりを伝えるベストな表現方法

―「どん兵衛ポエム」の企画が立ち上がった経緯について教えてください。

今年の春にスタートした星野源さんと吉岡里帆さんのCMでは、「日清のどん兵衛 きつねうどん」のふっくらおあげにスポットを当て、品質の特徴を伝えることを目指しています。どん兵衛の品質へのこだわり、どん兵衛ならではのおいしさをさらにみなさんにお伝えするにはどうすればいいかを考えるところからスタートし、これまでにない新しい表現領域に踏み込み、表現の豊かさを突き詰めていった結果、今回の「マンションポエム」に行き着いたのです。

―どういった思考を経て、マンションポエムに行き着いたのでしょうか?

これまでも、どん兵衛のブランドサイトには品質へのこだわりを伝えるページがありました。おあげはふっくら、天ぷらは後入れでサクサク、麺がまっすぐで太い、西日本と東日本でおだしの味が違うといったことを伝えています。ただ、しっかりと書かれてはいたのですが、内容的にはオーソドックスなもので、お客様の興味関心を引き付けるコンテンツではありませんでした。新しい表現に変えることで、どん兵衛のこだわりに関するページをお客様にも楽しんで読んでもらえるようにしようと考え始めたのがきっかけです。
そして行き着いたのが「マンション広告」の品質表現でした。マンションの広告は、一生に一度の買い物をさせようとする訳ですから、こだわりを伝えることを突き詰めた表現になっています。だからこそ、興味を抱いてもらいつつ、品質のこともしっかりと伝えられる表現としてマンションポエムがぴったりだと考えました。

―社内から反対などはなかったのですか?

反対は特にありませんでした。話題性に走りすぎていないか、どん兵衛の広告として合っているかという点で議論をしていき、最終的にはこだわりを伝えるのに適している表現だということで企画を固めました。

細部まで読み解きたくなる仕掛けで読み手を引き込む

―今回の広告のターゲット像を教えてください。

CMについては、主婦の方々へのアプローチが中心だったのですが、2015年からは若年層、特に18歳から25歳くらいまでのひとり暮らしをしている層をメインターゲットとしています。今回の企画は、それよりも少し上の世代に向けたコミュニケーションになっていて、マンション購入を検討するような働き盛りの世代をターゲットにしています。

―話題性を高めるために工夫したことについて教えてください。

マンション広告を多数収集し、独特な言葉選びやデザインなどを徹底的に研究しました。特に特徴的なのが、ふりがなの斬新さや、注釈の多様さです。マンション広告は素晴らしいものが多いので、それを超えるレベルのものを作るのが難しかったです。何度もやり取りを重ねて、コピーのブラッシュアップをしました。

―注釈にはどういったことが書かれているのですか?

どん兵衛のこだわりを表現するにあたり、メインのキャッチコピーだけではなく、下部に小さく書かれている注釈にまでこだわり抜きました。注釈を全部読むと、どん兵衛のこだわりが分かるようになっています。どこに注釈を入れて、注釈としてどんな文言を入れるのかというところにまでこだわっているので、ぜひ、注目して欲しいポイントです。

―「夜」と書いて、「こばら」と読ませるなど、当て字も斬新ですよね。広告もこだわって作っているのが分かるので、気になって、注釈など細かなところまで読んでしまいます。

「関西」と書いて、「HEAVEN」と読ませたり、「背徳」と書いて、「めん」と読ませたりもしています。「鰹聖域」を「かつおサンクチュアリ」と読ませることで、まず、受け手に「何だ?」と思ってもらう。そうすると、注釈を読んでくれるので、「そういうことか!」と分かる。そうやって読み進めるうちに、東日本のどん兵衛のだしは鰹だしが特徴で、それがこだわりのポイントなんだと分かるような構成にしました。こだわりのポイントをすでに知っている人でも面白くく読み進められるよう、情報に階層をつけています。

―どういったメディアに広告を出したのでしょうか。

駅貼りポスター、新聞折込チラシ、ポケットティッシュ、タクシーのサイネージです。マンション広告が出ていそうな媒体を選び、8月7日からスタートしました。「こんなところに広告が出ている」という驚きを感じて欲しかったので、いろいろな媒体を設定しました。

―リリースしてからの反応はいかがでしたか?

私たちとしては、交通広告から話題になることを想定していたのですが、意外とサイトの方が先に話題になりました。「マンションポエム広告のクオリティ高すぎ」「不動産広告は普段見飛ばすけど、仕掛けに気が付くと、凝視してしまう」というような反応が多くありました。マンション広告が好きな人たちにもポジティブな反応をもらいました。マンションポエム鑑賞家の方にもほめてもらい、マンション広告が好きな人たちに受け入れられたのがよかったですね。

世の中に無いものを生み出す企業精神がバズを作り出す

―日清食品のプロモーションは話題になることが多いと思います。どういったポリシーのもと、広告を作っているのでしょうか?

日清食品には、宣伝部だけではなく、すべての部署に求められている4つの考え方があります。「ユニーク」「ハッピー」「グローバル」「クリエイティブ」という4点です。常にこれまでにない新しい広告表現の手法を求めることを大切にしています。他がすでにやっていることであれば、いくらおもしろくてもやる意味はないという考え方です。

―そういった風土があるからこそ、話題を集めるプロモーションを多数作ることができるのですね。

そもそも日清食品は、それまで世の中になかったインスタントラーメンを創業者が発明したところからスタートしているので、他がやっていない新しいことを積極的に始めようという社内風土があります。商品開発でも、広告でも、ファーストエントリーに価値を置いています。社外に対してだけではなく、社内でも他にはないものを自分こそが作り出そうと競い合う風土があります。

―「ハッピー」にはどんな思いが込められているのですか。

楽しい気分で食べるときと、悲しい気分で食べるときでは、同じものを食べていてもおいしさの感じ方が違うと思います。「ハッピー」には、私たちの商品で人々をハッピーな気持ちにしたい、ハッピーな思いとともに商品を食べて欲しいという思いが込められています。広告の表現としても、ハッピーな気分になるものを求めています。

―あらゆる種類の広告を頻繁に出していますよね。

ターゲット設定をしていても、そのターゲットの人たちが抱く興味や関心は多種多様です。あらゆる切り口でプロモーションを実施し、話題を喚起したいと考えているので、結果的に高頻度で多種多様な展開になっています。

―Twitterなどを見ていると、社内の方も楽しんで広告を作られているのが伝わってきます。

はい!楽しんで作っています。今後も引き続き多種多様なプロモーションを行っていきます。引き続きご注目ください。

日清食品ホールディングス 宣伝部 安武雅之さん

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