世界一の喫煙所……究極の体験を提供するand tokyo × JTが目指したもの|後編

2025年7月に期間限定で、東京・原宿にオープンした「世界一の喫煙所」が大きな話題を呼びました。(紹介記事はこちらから)

JT(日本たばこ産業株式会社)の新商品「Ploom AURA」の全国拡販にあわせて展開された、体験型ポップアップストアとなる「THE SMOKING LOUNGE by Ploom」。プレミアムな音響システムとカルチャーの融合により、これまでにない喫煙体験を提供するものです。

この革新的な施策の背景には、どのような戦略と想いがあったのかーー主催のand tokyo株式会社の西村さんと、協賛されているJTの原さんに、企画の経緯から実施後の手応えまでをお聞きしました。

施策の背景や企画立ち上げのプロセスをお聞きした前編に続き、後編では実際にオープンしてみての反響や今後の展望などをお届けします。前編はこちら

専門的なスピーカーの話がありましたが、そのような情報はどこからインプットされているのでしょうか?

西村 and tokyoは広告のビジネスをメインに行っていますが、グループ会社に音楽専門の部署も持っています。そこには日本のトップレベルのアーティストが所属していて、彼らのマネジメントも行っています。

私は両方の部署にまたがって関わっているので、直接アーティストとコミュニケーションしたり、一緒に世界のフェスに行ったりしています。その時に主催者の人たちと一緒に連れて行かれる、会員制でクローズドな場所が世界にはいろいろあるんです。そういう空間を直に見て、それをどういう形で日本に落とし込むかというのを考えています。

今回のターゲット層はどのように設定されていたのでしょうか?

西村 まず情報リーチしていくときに、KOL(Key Opinion Leader:キーオピニオンリーダー)をピラミッドで3つの層に分けています。ティア1、ティア2、ティア3という分け方で、ティア1が自分で0から1で情報やクリエイティブを作って発信できる層、ティア2がアーリーアダプター層としてティア1が発信したものをいち早くキャッチして発信していく層、ティア3が消費層です。

マス層にアプローチしないと実際の売上には繋がらないんですが、マス層に向けてだけコミュニケーションすると、上のティア1、ティア2層がまったく反応しないクリエイティブになってしまいます。ですから、いかにティア1、ティア2層が反応して、彼らが来たいと思う空間やコンテンツを作れるかをまず前提に考えています。

実際の売上という効果を考えたマス層をターゲットに据えてますが、その際には年齢や男女比はとくに絞らず、全喫煙者をターゲットに考えていました。

 

実際に、オープンしてからの反響はいかがでしたか?

西村:私はもともとPR業界にいたので、たばこのプロモーションが大変だというのは分かっていました。JTさんとの話で目標とする露出数が掲げられていましたが、それは個人的にはハードルが高いなと思う数字でした。

でも、蓋を開けてみたら予想していた倍以上のメディアの方々に来場いただき、実際のレセプションパーティーでのKOLの反応も、想像していた以上に用意したコンテンツが自走してさまざまな角度で情報が広がっていった印象を感じています。

 初日もオープン前に50人ぐらい並んでいたんですよね。正直、実際にどれくらいの人が来てくれるのか不安はありましたが、初日から待ってくださるお客さんを見て、これはすごくいいものになるかもしれないという手応えを感じました。

通常のアプローチではかなり制約があるので、言えることと言えないこと、できることとできないことがありますが、今回はメディアや来場者といった第三者の方々を通じて発信することで、通常よりも潤沢な情報量や熱量で広げてもらうことができました。制約が多い業界のなかで、すごくありがたかったですし、こういうやり方もあるんだなという学びにもなりました。

実際の来場者について、傾向はいかがでしたか?

西村 今来ていただいているお客様は、何かしらのメディアやKOLの情報を見て、ここに来たいという目的を持って来てくれている人がほとんどです。

ただ、意外だったのは人気のピザショップ「PIZZA SLICE」やカフェ「RoJean」のフードや、スペシャルティコーヒー店「POOLSIDE COFFEE」といった飲食メニューのために訪れる人もいることですね。非喫煙者と一緒に利用する人もいますし、まわりのオフィスから昼休み時間帯や会社終わりに立ち寄るリピーターも多いんです。

では、今回やってみて感じた課題はありますか?

西村  喫煙所というルールに則って外観を施工しているので、中身が見せられない状況なんです。そのため、目的を持った人しか入りづらい状況になってしまっています。こういう施設があることが周りからも見える状態であれば、おそらくもっと人が来ると思います。

そこを何かしらのアプローチでクリアできれば、今よりももっと何倍も人が来る場所になるし、Ploomを体験してもらうきっかけももっと作れると思います。

今回の施策を経て、今後の展望を教えてください。

 PR施策は今のPloomにとってすごく大事だと思っています。規制でタッチポイントが限られているなか、なかなかお客様にブランドを浸透させることが難しい業界です。加熱式たばこ市場で追いかける立場としては、いかに第三者の方々からクレディビリティ、つまりは信頼性を持った情報としてお客様に広く届けるかが重要だと思っています。

また、施策の継続性もすごく大事で、今回7月いっぱいこのポップアップを協賛させていただきますが、そこで終わってしまうと、次にいろいろな情報や新たな施策が出てきてPloomのことはすぐ忘れられてしまいます。今後もさまざまな角度でPR施策の取り組みを継続していき、アーリーアダプターの方々との関係も作っていけるようにしていきたいと思っています。

それには、より多くのお客様に興味を持っていただけるようなコンテンツを作っていく必要があります。新しいコンテンツを作っていかないと、メディアの方にも一般のお客様にも興味を維持してもらえないので、そうやってコンテンツを作りながら、最後どうPloomに落とし込み、トライに至る良質なブランド認知を形成していくかというストーリーの設計が今後の課題だと思います。

1階に出店しているお店も個性的な顔ぶれですね。

西村 はい、スピーカー以外にも、今回協力してもらっている仲間がたくさんいます。下の階にいる飲食店や、金曜日の夜にバーに入ってもらっているライオンというミュージックバーなど、彼らもそれぞれがティア1層に近い感覚でお店をやっている人たちです。

通常の広告文脈だと、例えばPloomの世界観の中では絶対に協力してもらえないようなお店の人たちをどうやって口説くかが重要でした。彼らとも普段からコミュニケーションしているので、どういう空間を作れば入ってもらえるかがイメージできていたのが勝利ポイントです。

訪れるKOLたちも、ただ最先端のスピーカーがあるというだけでは、ここまで広がらなかったと思います。今回の施策は、立体的に協力してくれている方たちのおかげで実現できたので、and tokyoだけでできたということではないことをお伝えしたいです。

内装や提供されるコーヒーのストローにも、鮮やかな水色がポイントであしらわれています。Ploomの新しいブランドカラーとして配色していますが、2階に上がる際に通る階段の装飾も同じ色になっていて、それはじつは鳥居をイメージしていて異空間にワープするような意識が持てるようになっています。

今回のポップアップを通じて、ブランドのイメージを進化させる意味合いもあった、と?

 Ploomはこれまで20代といった若年成人喫煙者の獲得にも課題がありました。今回、若者に人気がある原宿の地で、新しい接点を構築し、彼らから支持が高いアーティストや、芸人、そしてカフェダイナーなどといったコラボレーション施策を展開したことにより、Ploomに興味を持っていただくきっかけになったと思っています。

今回、協賛させてもらった以上は一定のメディアに取り上げてもらうことを目標にしていましたが、結果は想定をはるかに上回る露出件数でした。おそらくPloomのコンテンツだけではこんなにメディアの方に取り上げてもらえなかったと思います。

世界一の音響や、1階のカフェダイナーとのコラボレーションなど、喫煙時間をより豊かにしてくれる……そういったコンテンツを複合的に組み合わせた施策にできたことで、Ploomの紹介をメディアもKOLも思い思いの切り口で発信してくれたと実感しています。そういった文脈の作り方が、情報発信施策においてものすごく大事なんだなと感じました。今後も継続してタッチポイントを作ることやブランドイメージの発信をしていく際に、参考にしていきたいです。

(後編・了)

2025年8月26日(火)に公開された前編では、施策の背景や企画立ち上げのプロセスをお伺いしています。前編はこちら

(取材・文/見野 歩)

・※関連プレスリリース:新型デバイス「Ploom AURA」 新たばこスティック「EVO」の全国発売記念 「Ploom」が”世界一の喫煙所”「THE SMOKING LOUNGE」に協賛

その他のインタビュー記事についてはこちら
https://predge.jp/search/post?othres=31
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