世界一の喫煙所……究極の体験を提供するand tokyo × JTが目指したもの|前編
2025年7月に期間限定で、東京・原宿にオープンした「世界一の喫煙所」が大きな話題を呼びました。(紹介記事はこちらから)
JT(日本たばこ産業株式会社)の新商品「Ploom AURA」の全国拡販にあわせて展開された、体験型ポップアップストア「THE SMOKING LOUNGE by Ploom」。プレミアムな音響システムとカルチャーの融合により、これまでにない喫煙体験を提供するものです。
この革新的な施策の背景には、どのような戦略と想いがあったのかーー主催のand tokyo株式会社の西村さんと、協賛するJTの原さんに、企画の経緯から実施後の手応えまでをお聞きしました。
施策の背景や企画立ち上げのプロセスをお聞きした前編と、実際にオープンしてみての反響や今後の展望などをお聞きした後編でお届けします。
※前後編の前編、後編はこちらから(2025年8月27日12時公開予定)
まず、今回の企画における、それぞれの立ち位置を教えてください。
西村 and tokyoの西村です。弊社が今回の体験型ポップアップストアの主催として関わらせていただいています。
原 JTのRRP商品企画部の原です。今回、弊社は協賛という立場で、and tokyoさんが取り組まれるコンセプトに共感して協賛させていただく形になりました。
施策の背景には、どんなことがあったのでしょうか。
西村 まず前提として、and tokyoの会社理念があります。私たちはクリエイティブエージェンシーとして創業12期目を迎える会社なのですが、創業当初から弊社が掲げているのは「Ad as a Content(コンテンツとしての広告)」というコンセプトです。
広告に溢れた世の中において、本当に企業/商品のためになる活動として、ユーザーが自発的に見たい体験したいと思う「コンテンツ」をつくり、企業やステークホルダーの想いをそのコンテンツのストーリーに沿って混ぜ込んでいくことでブランド貢献を図ることを、弊社は生業としてきました。
今回の「世界一の喫煙所」は、昨今の喫煙者の置かれている環境に対しての一つの解答と考えています。
弊社は仕事柄、メディアやKOL(Key Opinion Leader:キーオピニオンリーダー)と深い関係値を持っていますが、その中の喫煙者からの声として日頃から「喫煙者が肩身の狭い世のなかで、喫煙者のパラダイスみたいなものを作れたらいいよね」という会話がされていました。
喫煙はだいたい3分から5分の短い時間だと思いますが、喫煙者にとってどういう時間になるのかを考えたときに、マインドチェンジや仕事の合間の切り替え、喫煙所での上下関係のない会話、クリエイティブな思考の切り替えやリラックスなど、さまざまな「その人にとっての最高の瞬間」があると考えました。
喫煙についてはもちろん、さまざまな社会的問題をはらんでいることを我々も理解しておりますが、好きな人にとって、最高の時間を過ごす瞬間には人を動かす力があり、それ自体がコンテンツとなりえる、と確信し、行きついたのがその最高の瞬間をより良いものにするために、「世界一の喫煙所」というものがあれば、喫煙者にとってのパラダイスなのではないか、という構想でした。
原 企画のアイデアを聞かされたときの第一印象としては「待ってました」というのが近いです。
今年の5月に投入させていただいたPloom AURAという新しいブランドは、デバイス内のヒーターでたばこスティックを加熱する加熱式たばこ製品です。現在、健康志向の高まりや喫煙場所の減少などにより、紙巻きたばこの販売本数は減少傾向にありますが、加熱式たばこは右肩上がりという状況があります。すでに、加熱式たばこセグメントはたばこ市場全体の4割以上の市場規模にまで成長しています。今後ビジネスを続けていくうえで、このセグメントで支持されるブランドとなることは、とても重要だと考えています。
そのなかで今、我々のPloomブランドは、加熱式たばこ市場への参入遅れが響き、3番手と出遅れているんですね。3番手から2番手、そして1番手を目指していくうえで、Ploom AURAは、私たちの加熱式たばこ事業の成長ドライバーになる商品と強い自信がありました。
ただ一方で、最大の課題は、Ploomというブランドがまだ十分に知られていないことと、すごく良い商品だと自負しているけれど、吸いたいと思ってもらえていないことでした。認知からトライしてみたいと変化させるところまで、なかなか至っていなかったんです。
トライさえしてもらえれば、お客様には味を中心に格別の一服を愉しんでいただける強い自信があったので、それを広く伝え、興味を持っていただけるコンテンツが欲しいと思っていたタイミングで、and tokyoさんから企画のアイデアのお話をいただいたんです。
その「味への自信」について詳しく教えてください。
原 私たちが最も自信を持ってお客様に伝えたいことは、「Ploom AURAがいちばんおいしい」ということです。Ploom AURAが提供する味わいが、本当にお客様に受け入れられるかを確認するため、487名のお客様によるブラインドテストをおこないました。その結果、Ploom AURAが「いちばんおいしい」と最多の56%のお客様から回答を得ており、多くのお客様から支持されると強く確信しています。
また、Ploom AURAの投入に合わせて、Ploomのために誕生した加熱式たばこスティックブランドのEVOも投入しました。Ploom AURAのポテンシャルを最大限引き出すため、最高級品質のたばこ葉のみを厳選使用した逸品で、最高峰のうまさをお愉しみいただけます。デバイスのPloom AURAはグローバルモデルのため、基本的には世界共通商品です。ただし、日本人はメンソール強めを好む傾向があるのに対して、ヨーロッパなどは弱めが好まれるなど味の好みに違いがあります。
たばこスティックのフレーバーに関しては、弊社ブレンダーが調合を細かく変えて何度も何度も繰り返しテイスティングして、日本人のお客様にこれだと思える商品に仕上げています。だからこそ、味を知ってもらうことができれば、選んでもらえるという自信があります。
今回の「世界一の喫煙所」というコンセプトはどのように実現していったのでしょうか。
西村 JTさんとのディスカッションで、Ploom AURAは今までのPloomシリーズの中で史上最高傑作で、吸えば良さがわかるから全ての喫煙者に試してもらいたいという話をうかがいました。では、どうすれば東京都内や関東近郊の喫煙者を体験場所に集められるかを考えたときに、「世界一の喫煙所」と銘打てればインパクトがあるなと感じていました。問題は何をもって世界一なのかということで、次の段階ではそこを突き詰めていきました。
私たちand tokyoが得意とする音楽やカルチャーの文脈になりますが、世界一音響の良い喫煙所で、たばこを吸いながら好きな音楽を最高の音響空間で聞いて、そこにコーヒーやおいしい食べ物があったとしたら、そこで吸う一服は至高の体験になるんじゃないかと考えました。
音響についても、何をもって世界一なのかにこだわりました。今回採用したのはDevonのスピーカーです。ニューヨークのアーティストで、音に対してストイックに向き合っている方が作っているもので、ビンテージハイファイの知識と現代の音響技術を組み合わせて音を追求し続けているものなんです。
もともとはニューヨークのSaturdays NYCというショップの音響システムとして使われ、その後エースホテルのロビーにも採用されています。また、Supremeの世界14店舗のスピーカーや、ブルックリンのPublic Recordsというレコードバーなど、さまざまなカルチャースポットの音響を手がけています。
さらに、ノルウェーのNNNNという高級スピーカーブランドとのコラボレーションモデルの最大級サイズのものが日本初登場ということであれば、世界一と言えるんじゃないかと考えました。
そこまでのこだわりを持った提案ですが、実現面での試行錯誤もあったのでは?
原 そうですね。すり合わせの議論が相当数ありました。僕らもカルチャー領域は疎いところがあったので、音響の話をされたときは正直よく分からなかったんです。ただ、従来のアプローチだけでは興味を持っていただけないお客様は多くいると認識していました。そして、僕らが普段やっているアプローチとはまったく違うアプローチだったので、目的は常々共通認識を取りながらも、手法については一定の信頼を置く必要があるとも思っていました。
僕らが重視していることに、「味で選ばれる一服」というPloomのコンセプトがあります。この一服にはいろいろな要素が含まれていて、その中でも味がいちばん大事だと思っています。でも一服は味だけではなく、吸う場所の環境もありますし、五感でいうと聴覚を刺激する音や、味覚や嗅覚にしてもたばこだけでなく、飲み物や食事と一緒に楽しむといった複合的な体験で一服はより昇華されるものと考えています。
その五感による体験を拡張させて、我々の商品をより美味しく味わっていただくというコンセプトはすごくマッチしていると感じました。世界一の音響で音楽を聞きながら、たばこに合うフードを飲食しながらPloomを吸ったら、お客様にPloomによる最高の一服をより愉しんでいただけるはずと思い、最後は「ぜひやりましょう」となりました。
週末には、イベントも実施されていますが、これも来場を促す目的ですか?
西村 はい。平日は、アーティストから提供いただいたいくつかのプレイリストを時間ごとに流しています。せっかくの音響システムですから、週末はちょっとリッチに音楽LIVEで生の音とともに一服を楽しめる機会を創出しています。
原 お笑い芸人のトークライブでは、みなさん喫煙者ですから喫煙にまつわる話をしてもらっています。普段Ploomに興味をもたれないお客様も、音楽やお笑いが楽しめるなら行ってみようかという理由になってくれることがポイントだと思っています。
そして、それらをきっかけに来場いただいた多くのお客様が実際にPloom AURAを体験し、その感想をSNSなどにそれぞれの言葉で投稿してくださいました。自分たちの広告では制約があってなかなか伝えきれないPloomの良さを、体験談として自発的に発信してもらえたなと。会場のあちこちでPloom AURAを吸いながら、思い思いに写真を撮って投稿してもらうことで、通常の広告ではリーチできなかったお客様に興味を持っていただくUGC(User Generated Contents:ユーザー生成コンテンツ)が生まれていると実感しました。
今回実施に至らなかったけれど、他にも検討されたアイデアがあれば教えてください。
西村 じつは映画との組み合わせも実現してみたかったんです。飲食と喫煙ができる映画館というのは一定の需要がありそうだし、最高の喫煙体験になるだろうと思ったんですが、実現するには課題も多く……残念ながら今回は断念しました。今回トークライブに出演してくださったオズワルドの伊藤さんもヘビースモーカーで、映画館でずっと吸わずに座っていられないという話もでていたのですが、いつか課題をクリアして、実現できたらいいなと思っているアイデアのひとつですね。
施策実施までの準備期間は、どのくらいかかったのでしょうか?
西村 最初の提案は、今年の年始ぐらいでしたね。
原 昨年末ぐらいからアイデアベースのお話をいただいて、本格的に議論を始めたのは年明けぐらいでした。今回の施策では、社内のいくつかの関係部署から何名か出てもらってクロスファンクショナルなプロジェクトとして実行しました。さまざまな議論や詰めの作業の際には、個別最適な話に寄りすぎて、本来の施策目的とはズレた話になることも正直ありました。
そのため、やりとりを重ねるなかで、KGIとKPIを明確にしておくことは大切だなと感じました。個別の議論が散っていってしまったとしても、最後に全体を見たときにちゃんとKGIとKPIに繋がっているかどうかという観点で最適解が取れるようになりましたし、スピード感を持って実行できて実施に至りました。
(前半・了)
2025年8月27日(水)に公開する後編では、さらに実際に感じられた手応えや今後の展望とともにお届けします。
後編はこちら
(取材・文/見野 歩)
・※関連プレスリリース:新型デバイス「Ploom AURA」 新たばこスティック「EVO」の全国発売記念 「Ploom」が”世界一の喫煙所”「THE SMOKING LOUNGE」に協賛
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