就活生の想像力に火をつける採用広告。長倉製作所の“迷走戦略”が今年も話題に
静岡県沼津市に本社を構える株式会社長倉製作所は、冷間鍛造などの精密成型部品を手がける製造業の老舗企業。技術力には定評がある一方で、ニッチな業界であることから学生への認知が広がりづらいという課題を抱えてきました。
同社が展開する採用広告は、そんな背景を逆手に取り、“迷走”をキーワードにユーモアを交えながら企業の魅力を発信しています。
2024年にWebCMとして話題を呼んだシリーズを、2025年はTVCMへとスケールアップ。6月17日(火)より放映された新シリーズ「採用広告2.0」は、全6篇構成で“迷走感”を保ちながら、企業としての誠実さがにじむ仕上がりとなっています。
情報伝達が“面白さ”に変わる
シリーズの冒頭を飾る『2.0』篇では外国人社員が出演し、昨年の続編であるにもかかわらず「第2弾」や「パート2」ではなく「2.0」と表記していることに触れています。理由を明示する説明はありませんが、「私たちはなぜ2.0をつけるのでしょう」と語りかける構成が、遊び心と余韻を感じさせる印象的な導入となっています。
続く『製作所』篇では、企業名の読み方を真剣に説明する場面を描写。「製作所の“所”は“じょ”ではなく“しょ”です」と語る姿は、一見ネタのようでいて、実は企業名すら正しく認知されていない現実へのアプローチです。視聴者に「そこからか!」と思わせつつも、確実に印象に残る構成になっています。
ユーモアで伝える働き方と環境の“リアル”
『通勤』篇では、制服姿の外国人社員が沼津駅から2時間以上歩いて出勤する姿を淡々と映し、「当社は車通勤が可能です」と結論づけます。過剰な演出で“通勤の現実”を逆説的に伝えるユーモアが、長倉製作所らしい表現の妙を感じさせてくれる仕上がりです。
『快適』篇では、昨年エアコンを新調したという社内環境の改善について言及。「快適さもアップデートしました」と語る姿からは、働きやすさへのこだわりと、社員が気持ちよく働ける配慮を欠かさない企業姿勢が伝わってきます。
技術の高度さも、親しみやすく伝える工夫
『冷間鍛造』篇では自社の技術力に言及しながら、まずは「漢字が難しい」という点から説明を開始。ややこしい言葉だからこそ、あえて分かりやすくする姿勢が誠実で、難しいことを親しみやすく伝えようとする意図が見えてきます。
『型』篇では「型にハマらない発想を大切にしています」と語りながら、「でも型にハメる仕事です」と締めくくる、軽妙なオチが印象的。技術職であること、繊細なものづくりであることを、遊び心とともに表現しています。
OOH広告では「徒歩2時間16分」の衝撃コピー
さらに、TVCMと連動するかたちで、JR沼津駅の在来線改札内にはOOH広告も展開。こちらも「徒歩2時間16分」という驚きのコピーを起点に、「車通勤可」という利点をわかりやすく伝えています。
極端な表現を通じて、実直な情報を届ける構成が、TVCMと共鳴しながら訴求力を高めている点は目を見張るものがあります。
継続と進化でつくる、“ちゃんと伝わる”採用広報
同じ出演者を起用して表現のスタイルを継承しながら、構成や伝え方はしっかりアップデートされている点は本施策の魅力。シリーズ化された採用広告にありがちな“マンネリ”を避け、毎年異なる切り口で話題をつくり続けている姿勢は、他企業にとっても学びの多い取り組みといえるでしょう。
わかりにくさを“面白さ”に変える構成力
ニッチな業務内容だからこそ、「面白く伝える」ことが認知拡大の鍵になる。長倉製作所の採用広告は、まさにその実践例。真面目にふざけ、ふざけながら誠実に伝える手法で、就活生に「調べてみたい」と思わせる仕掛けを生み出しています。
採用活動において“迷走”を恐れず、“想像力”に訴えかける。そんな長倉製作所の戦略は、今年も就活市場において静かな存在感を放っています。
その他の広告事例についてはこちら
https://predge.jp/search/post?genre=24
会員登録、メルマガの受信設定はこちら
https://predge.jp/

0