【速報】カンヌライオンズ2024「Engagement」部門グランプリ受賞作品まとめ

2024年6月にフランス・カンヌで開催されている「Cannes Lions 2024」。時代の言の葉に乗ることでユーザーを巻き込み、大きな話題を獲得することができた作品を賞賛する「Engagement」部門において、多くの企業の興味関心を引いた作品を評価する「Creative B2B Lions」、データを最大限活用した作品を評価する「Creative Data Lions」、斬新なターゲットの絞り方がなされた作品を評価する「Direct Lions」、シームレスにクリエイティブとメディアを融合させた作品を評価する「Media Lions」、戦略的なコミュニケーション手段が取られた作品を評価する「PR Lions」、SNSとインフルエンサーの力を最大化させた作品を評価する「Social & Influencer Lions」の6つの賞におけるグランプリをご紹介します。

Creative B2B Lions

Meet Marina Prieto(JCDecaux)

世界最大規模のOOHネットワークJCDecauxがスペイン・マドリード市内を走る地下鉄の交通媒体を活用したB2B事例が見事にグランプリを受賞。新型コロナウイルス感染症以降世界中で交通媒体をはじめとしたOOHの売上が激減し、さまざまな国と地域の媒体社が赤字に悩んでいました。そんな中JCDecauxは“広告主側にOOHの力を知ってもらうためにはどうしたらいいのか?”という問いについて考え詰めた結果、たどり着いたのが“100歳の一般人女性のインスタグラム投稿を広告として掲出する”という意外な答えでした。

マドリード市内の地下鉄のいたるところに、ある日突然現れた謎の老婆の写真。意外な事態を目の前にした通行人が写真を撮ったりSNSにアップロードしたりするうちに、各社メディアも注目しはじめました。“一体この女性は何者なんだ?”というニュースはいずれスペイン全土へと広がり、最終的にはなんと14もの国でニュースとして取り上げられることに。

結果としてアップルやアマゾンをはじめとした185もの新規クライアントを獲得するにいたり、JCDecauxのOOH関連の売上は2倍に。外出頻度とともに減っていったかのように見えた交通媒体の強みを再度力強く打ち出すと同時に、1人の老婆の人生をフィーチャーすることで誰も傷つかないコミュニケーションが完成しました。

Creative Data Lions

Room for Everyone(Mastercard)

2022年に断行されたロシアのウクライナ侵攻がきっかけで、実に155万人ものウクライナ人が隣国のポーランドへと亡命しました。難民支援に多くの税金が使われる中、ポーランド国内の機運は徐々に悪化していき、本来戦争の被害者でもあるウクライナ人難民へのフラストレーションが溜まっていってしまったのです。この状況を変えるためにマスターカードが行ったデータ活用型の企業支援事例が見事グランプリに輝きました。

“Room for Everyone(皆で1つになれる)”というタイトルの施策は、マスターカードが保有するビッグデータを活用することで特定の個人商店の隣にどういうお店が開業すれば相乗効果が見込めるのか、という試算を発表し、それを一般公開したのです。宝飾店のとなりに本屋ができるとどちらも儲かる確率が高い……レストランの隣に理髪店ができるとどちらも客数の増加が見込める確率が高い……世界中で使われているクレジットカード会社ならではのアプローチで職を求めるウクライナ人難民に起業を提案し、結果的にポーランド経済の活性化を促しました。

終わりの見えない紛争が原因で生活が変わってしまった人々に、データを活用することで再起のチャンスを与えつつ、経済全体を前進させようと試みたアプローチが評価され受賞に至ったようです。

Direct Lions

The Everyday Tactician(X Box)

Entertainment Lions for Gaming Lionsでもグランプリを受賞したX Boxの事例が見事Direct Lionsでもグランプリに輝き、2冠を達成しました。

リアルなサッカークラブのデータを分析しながら最強のサッカーチームを作り上げることが醍醐味のこのゲームが着目したのは、サッカーが盛んな地域における深刻なレベル格差でした。強豪チームは莫大な予算と豊富な知見を持ち合わせたスタッフを揃えている中、中堅以下のチームの多くはお金や人などあらゆるリソースが枯渇しているため、ランクを上げることができないという課題があります。その内の人的リソースを解決するために、Football Manager 2024はBromley FCという中堅クラブとタイアップし、あえてプロではなくゲーム内で豊富な経験を積み重ねてきた一般人ゲーマーを戦術家としてチームのスタッフに招き入れたいという求人募集を行ったのです。

多くの応募が集まる中、最終的には1人の男性が採用され、彼のサポートの下Bromley FCは着実にその順位を上げることに成功。15億を超えるインプレッションを叩き出したことや、Football Manager 2024のプレイヤー総数を190%も上昇させたことが評価され、見事グランプリを獲得しました。

Media Lions

Handshake Hunt(Mercado Libre)

ラテンアメリカ圏で高い知名度を誇る大手オンラインマーケットプレイスのMercado Libreは、2023年のブラックフライデーのタイミングに合わせていわゆる一般的な広告を打つのではなく、テレビ番組の中で“ある動作”が映ったときにだけ表示されるQRコードを流すという新たな試みを行いました。メディアのあり方を再定義し、小売各社が全力を注ぐ商戦期であるブラックフライデーの成果を最大化させたアプローチが評価され、見事グランプリを獲得しています。

“Handshake Hunt(握手探し)”というタイトルが付けられた施策の内容は、ブラックフライデー期間中に特定のテレビ局で放映される番組を見ている際に誰かが握手をするシーンが流れると画面の左下に謎のQRコードが映し出されるというもの。コードを読み取ると、番組の内容に適した商品が限定価格で買えるようになっており、この仕組みに気づいたユーザーの間で瞬く間に噂が広まりました。

“企業ロゴが握手をしている人の形をしているから”というシンプル極まりない理由で生まれた割引施策は、結果的にシェアを4%、売上を80%も伸ばすことに成功し、あらゆるブラックフライデーキャンペーンを差し置いてユーザーの第一想起の地位を獲得することに成功しています。

PR Lions

The Misheard Version(Specsavers)

イギリスを中心にメガネを販売する大手小売会社のSpecsaversは、商品の販売以外にも視力検査や聴力検査をはじめとしたサービスも提供しています。日本では健康診断の一環として多くの人が受けている聴力検査ですが、イギリスではあまり浸透しておらず、特に年齢層が上がるにつれて“年をとっていると感じたくないから”という理由だけで受診しない人も一定数いると言われています。そんな状況を変えるためにSpecsaversが行ったのは、イギリス中を巻き込んだ壮大な“聴力検査どっきり”でした。

英語圏で最も有名なミームになってしまったと言っても過言ではない歌手・Rick Astleyの名曲Never Gonna Give You Upは、とにかく空耳が多い曲として知られています。本来の歌詞とは違う言葉に聞こえてしまう、という特徴を聴力検査と繋げようと試みたSpecsaversは、なんとあえて正しい歌詞と間違った歌詞を置き換えたバージョンをRick Astley本人に再録してもらうことに。

聴力検査の啓発を目的としたキャンペーンであるということは一切伝えることなく、SNS上で大きな話題を生みました。結果的にYouTube上に公開された動画は瞬く間に2,000万回再生を突破し、Specsaversの聴力検査の予約数は1,220%も上昇。グーグルの検索ワードの最上位に“聴力検査”が挙がるなど、文字通り国中を巻き込んだ盛大な実験が完成したのでした。インターネットミームの文脈をしっかりと理解した上で、メディア費を使うことなく最大のPR成果を生み出した点が評価され、見事グランプリの座を手にすることができたようです。

Social & Influencer Lions

Michael CeraVe(CeraVe)

ロレアルグループが販売するスキンケアブランドCeraVeがスーパーボウルの直前から行った壮大なタレント巻き込み型施策がグランプリを受賞。さまざまなコメディー映画への出演で知られる人気俳優Michael Ceraを起用し、キャンペーンそのものを“陰謀論”と結びつけることで多くのアメリカ人を巻き込んだ話題を生み出しました。

ある日、アメリカ国内で活動する複数のSNSインフルエンサー宛にMicheal Cera本人名義でメールと箱が届きます。中には手紙とCeraVeの商品が入っており、直接言及はしないもののまるでCeraVeはMichael Ceraが生み出した商品であるかのような匂わせをすることで瞬く間にSNSにはさまざまな憶測が投稿されました。「わたしたちはみんなMichael Ceraの思うままにCeraVeを買っていたのかもしれない」「彼はただの役者なんかではなく天才科学者だ」といったように、冗談なのか本気なのかがわからない、けれどももしかしたら実際にそうかもしれないと思えるギリギリのラインを攻めた動画や投稿があふれ返ったのです。

そんな中、スーパーボウル中に実際にMichael Ceraが出演したCeraVeのCMが放送されることとなり、リアルタイムで視聴していたユーザーたちはパニック状態に。SNSで見て冗談だと思っていた憶測が事実だった、と再び議論が爆発したのです……が、実はこの一連の流れはすべて“名前が似ているから”というだけの理由で行われたCeraVe側の仕込みであり、まんまとSNS中を巻き込んだ壮大なジョークが完成したのです。

300億を超える圧倒的なインプレッション数と、25%もの売上伸長、そして2,200%も検索数を押し上げることに成功した実績が評価され、見事グランプリに輝くことができたようです。

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