カミソリブランド「Schick」が配信する、デザインされたプレスリリースの魅力と目的を担当者に聞いた
カミソリやヒゲ剃りのブランド「Schick」と男性用スキンケアブランド「Bulldog」を販売するシック・ジャパン株式会社(以下、シック)が、通常のテキストや画像で構成されるプレスリリースとは異なり、その企業や商品情報にあったデザインを施したプレスリリース=「デザインリリース」を配信しています。
この「デザインリリース」は、メディアの方に視覚情報から感覚的にブランドや商品の世界観を感じとってもらうために採用しているとのことで、実際メディアからの反応も「一目で情報がわかる」「読む前から内容をイメージできる」と上々のようです。
今回は、この「デザインリリース」の意図とともに、作成に至った経緯などをシックのマーケティング本部・マーケティングコミュニケーションマネジャーの古川滋子さんと、シックのPR全般を担当しているPR会社のアウル株式会社(以下、アウル)のマーケティング・セールスマネージャーの伊集朝平さんにお話を伺いました。
シックとアウルの出会いからこれまでの取り組み
アウルさんはいつからシックさんのPRを担当されているのでしょうか。
伊集朝平さん(以下、伊集):2020年4月からです。シックさんはSchickとBulldogブランドにて男性用と女性用商材をそれぞれ展開していますが、最初は女性用商材のみを担当させていただいておりました。そこから半年後の2020年10月からは女性用商材に加え、男性用商材と企業のコーポレート全般のPRを担当させていただいております。
シックさんは、当初どのような悩みや課題があってアウルさんにPRをお願いしたのでしょうか。
古川滋子さん(以下、古川):それまで弊社にはPRを専門に担当するポジションがなく、当時はアウルさんとは別の複数のPR会社さんにPR業務をお願いしていました。しかし、製品ブランドSchick全体のブランディングをより強化していきたいという期待もあり、弊社内にPRやブランディングを専門に担当するポジションを設立、またカテゴリーをまたいでSchick全体をまとめて担当してくださる新たなパートナーとしてアウルさんを迎え入れました。
では、アウルさんとご一緒してからのこれまでの取り組みを教えてください。
伊集:まずは商品の情報をお客さまにしっかりと届けるために、企業や製品ブランド、商品の情報を整理し、そのうえでそれらの情報をプレスリリースに落とし込むなど、仕組みを構築するところからはじめました。これに加え、2021年には大規模なプレスイベントを1年間に2回おこなったことで、結果メディアへの露出数は前年の約4倍という大きな成果に繋がりました。
これらの取り組みを通して、アウルさんが他のPR会社さんより優れていると感じた点はどこですか。
古川:ロジカルかつシステマティックなところです。PR会社の多くが、人とのネットワークを駆使し、いわゆるメディアプロモートで掲載を獲得するなかで、アウルさんはデジタルの力を駆使して市場情報を分析した上で、弊社内の各メンバーから情報の吸い上げを行い、その情報を整理し付加価値をつけることで掲載を獲得してます。ここが最大の魅力だと考えています。
では、アウルさん自身はどこが自社の強みだと思いますか。
伊集:まさに古川さんがお話してくださったデジタルの力を駆使してPRをするところが強みだと思っています。一例ですが、自社で開発した独自のツールを用いて、「どのような文脈であれば世の中の人の心に響くのか」「それぞれのメディアの取り上げ方の特徴」などを細かく分析したうえでPRの企画を立てています。
ありがとうございます。次にアウルさんにPRを依頼してよかったというエピソードなどあれば教えてください。
古川:カミソリはとても身近にあるアイテムであるため、コモディティ化しているコンテンツです。そのなかで男性のヒゲまわりに関する調査をするなど、カミソリをベースにさまざまな切り口でPRをしてくれるところです。また、「エヴァンゲリオン」や「鬼滅の刃」などのアニメのキャラクターとコラボ商品を開発する際に、時として私たち以上にアニメのストーリーやキャラクターの特徴を理解したうえで社内から情報を吸い上げ整理するよう携わってくれており、PR以外の知識の深さにも魅力を感じました。
続いて、アウルさんが事業会社さんのPRのお手伝いをする際に大切にしていることはありますか。
伊集:もちろん、メディアへの露出数や広告換算費は大切ですが、それ以上に、正しい内容でメディアに掲載され企業やブランドの利益に繋がることが大切だと考えています。そのため、「売り上げを伸ばすにはどのメディアに取り上げていただくのがいいのか」「どのような情報を発信していくべきなのか」などは日々強く考えています。
古川:まさに私たちも同じ考えで、伝えたい内容とかけ離れた取り上げ方をされてしまうのは企業やブランドの利益につながらないので、しっかりと本来伝えたい内容でメディアに掲載されることにこそ価値があると思っています。
他の事業会社さんもあるなかで、特にシックさんをPRする際に大切にしていることや工夫していることはありますか。
伊集:シックさんは、ひとつひとつの発言や取り組みが世の中に大きな影響を与える会社であると考えているため、世の中の見本になるような行動を心がけています。例えば、近年、世界中でSDGsやサスティナブルなどが注目されていることから、Bulldogを筆頭にパッケージをプラスチックから紙素材に変えた環境に配慮した商品などを展開しています。
アウルの強みのひとつである「デザインリリース」
アウルさんの魅力のひとつに、「デザインリリース」があると思いますが、こちらをはじめたのはいつ頃からでしょうか。また、はじめることになったきっかけもあわせて教えてください。
伊集:約3年前からです。それより前から、企業の公式文書であるプレスリリースに、会社やブランドの世界観を表現することでブランディングをしていこうという考えがありました。一方で、通常のプレスリリースのようにテキストや画像の情報だけでは限界があると感じていたため、視覚情報から感覚的にそれらを読み取ることのできる「デザインリリース」をはじめました。
そもそも「デザインリリース」という考えが生まれたきっかけは何だったのでしょうか。
伊集:私たちにとって、PR会社とは「編集提案をする仕事」だと思っています。そのため、情報整理や設計のプロであるメディアの方に送るプレスリリースには、商品やサービス情報をはじめ、企業やブランドなどの情報がすべて網羅、整理されている必要があるべきだと考えています。その考えを突き詰めていった結果、「デザインリリース」という概念が誕生しました。
では、シックさんから出した最初の「デザインリリース」はどのような内容のものだったのでしょうか。また、そのときにシックさんがはじめて「デザインリリース」を見た時の感想もあわせて教えてください。
古川:最初の「デザインリリース」は、スヌーピーとのコラボ商品の発表時です。
当時は、少ない時間でこれほどのクオリティのものを作成いただけて本当に驚きました。製品担当から「がんばって作った商品をこのようにかわいらしくデザインされたプレスリリースでメディアや世間の人に届けてもらえるのはとてもうれしい」といった声があったほか、社員から「商品がよりかわいく見える」「私もこのコラボ商品を欲しい」という声も上がりました。
いまお見せいただいたような「デザインリリース」はどのようにして作成されているのか、その流れを教えてください。
伊集:「デザインリリース」の作成には、テキストとデザインの作成をそれぞれの担当が並行しておこなっています。大まかな流れとしては、まず、シックさんからご共有いただいた商品情報をデザイナーに伝え、その情報をもとにデザイン案を2〜3パターン作成します。そのなかから最もイメージに合うデザインをシックさんに選んでもらい、そこへライターが並行して作成したテキストを入れ込みます。作業時間としては、通常のプレスリリースに比べ時間を要するため1ヶ月〜1ヶ月半前から着手するケースが多いです。
デザイン案はアウルさんが作成し提示するとのことですが、シックさんからデザインの要望をすることはあるのでしょうか。
古川:いつも新商品の情報をお伝えするタイミングにあわせてデザインイメージをお伝えして、それに基づいて作成していただいています。例えば、こちらが過去に作成いただいたデザイン案の一例となります。
この時はシェーバーを「毛の処理をするツール」としてではなく、コスメ感のある「上級者向けの美容ツール」として訴求したいとお願いをしました。そのため、デザインにはシェーバーで顔の産毛を剃った後に顔全体がパッと明るくなるイメージを組み込んでいただいています。
こちらの「デザインリリース」を見たメディアさんからはどのような反響をいただきましたか。
伊集:メディアの方からは「プレスリリースがデザインされていることで、テキストを読む前にこれは私たちのメディアの読者層に合っているのがわかるのでとても良いですね」と言っていただきました。
最近では、お付き合いのあるメディアの方にシックさんのプレスリリースのお話をすると、「あのデザインされているプレスリリースのことだよね」と言われるケースが増え、徐々に認知されてきた実感があります。
「デザインリリース」について色々お話をしていただきましたが、お二人の考える「デザインリリース」の魅力や良さをずばり教えていただけないでしょうか。
伊集:通常のテキストや画像で構成されるプレスリリースと比較し、視覚情報から感覚的に会社やブランド、商品の世界観を感じとることができるため、よりメディアの方の目にとまりやすく、手に取ってもらえる可能性が高いところだと思います。また、会社のブランディングをすることもできるのでとても魅力的です。
古川:アウルさんがおっしゃる通り、テキストと画像のみの通常のプレスリリースにデザインを追加することで、会社の世界観を表現することができるうえに見た目も華やかになるので、自信を持ってメディアをはじめ世の中に情報を発信することができるところです。
この1年半で得られたもの。そして今後の展開
シックさんはアウルさんにPRをお願いする前と後ではどのような変化がありましたか。
古川:メディアへの露出数が増えたことで社員から「ニュースに取り上げられることが多くなりましたね」と声をかけてもらうことが増えました。今後もこのように世間で話題になることで、社員がより商品や仕事に誇りと自信を持ってもらえるようになればと思います。
では最後に、シックさんとアウルさんで今後どのような施策をおこなっていきたいかなどあれば、できる範囲で教えていただけますでしょうか。
古川:私たちが取り組んでいるプロジェクトのひとつに「毛について、話そう。#BodyHairPositive」があります。このプロジェクトは、世の中の人にもっと毛に対してポジティブに考えてもらうことを目的に2021年3月に発足されたものです。
「私たちの肌に毛が生えることは自然なこと。なくしたい毛と残したい毛は部位によってちがうし、ケアしたい時とそのままにしておきたい時も気分によって変わる。自分にとってここちいいスタイルを誰もが見つけられるように。まずは自分と、そして周りと、話してみることからはじめよう。」というメッセージと共に、「自分らしくあること。私らしくあることが、美しさそのもの」といったメッセージを社会に語りかけています。自分らしくあることが、自己肯定に繋がり、日々の幸せに結びつくような、こうした取り組みをアウルさんとともに強化していきたいと思っています。
今後の活動にも注目しております。本日はありがとうございました。
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