「年賀状の天ぷら」や「煉瓦状」――毎年ユニークな年賀状を制作する株式会社人間にインタビュー

2021年仕事始めのタイミングでSNSで「もらった年賀状で一番大きい」「新聞が小さく見える」など、ざわざわさせた巨大すぎる年賀状。

 

この年賀状は、毎年おもしろい年賀状を生み出し続ける株式会社人間という会社の仕業。過去にも、「年賀状の天ぷら」や「煉瓦状」など、様々なおもしろい年賀状を生み出し、新年初笑いを作り出したり、迷惑をかけたりし続けています。

今回は、過去のものを一挙紹介するとともに、株式会社人間の代表取締役・山根シボルさんのインタビューをお届けいたします。

2020年「はやすぎる年賀状」

はやく動いているかのように見えるデザインの年賀状。コンセプトである「はやさ」を表現するため、デザインだけでなく年賀状がお正月よりもはやく届くよう手配したそうです。

2019年「煉瓦状」

厚さ:約3cm、重さ:約950gの本物のレンガを使用した年賀状。裏面にはふんだんにダジャレを使用したメッセージがひとつひとつ手書きで書かれています。

2018年「年賀状の天ぷら」

揚げたての衣を食品サンプルによってリアルに再現した年賀状。スーパーのお惣菜感にこだわったため、容器も本物のお惣菜用のパックを利用し、シールも業務用っぽさを再現しています。

2017年「不在連絡票型年賀状」

「ご不在連絡票」のパロディとなっている年賀状。特徴として「下記理由により持ち帰りました」という欄に「我々への関心がちょっとご不在ではないかと感じました」という逆恨みのようなコメントが記載されています。

2016年「妖怪ごみあしコスチューム」

株式会社人間のマスコットキャラクター「妖怪ごみあし」になれるコスチュームセットが封入された年賀状。通販で「妖怪ごみあし」のコスチュームを購入したという設定で、よく見かけるメーカーのチラシのようなデザインの「前年の活動のまとめ」も同封されていました。

2015年「人間新聞」

株式会社人間の2014年のニュースを新聞にしてまとめた年賀状。ただ、それだけではおもしろくないからと、それをさつまいもに包んで真空パックにして送りました。

2014年「ミニ人間ゲーム」

株式会社人間のボードゲームの1つである「人間ゲーム−コンプレックス人狼−」のミニサイズ(お正月限定版)を年賀状にしたもの。この年賀状には、カルタの代わりに親戚や家族と一緒に遊んで、お正月早々信頼関係が崩れるといいな……という思いが込められています。

2013年「ハリセン型会社案内」

会社概要が書かれたハリセン型の年賀状。ハリセンを広げると「人間の作品」など会社の情報がずらり書かれています。その裏には顔が描かれており、ハリセンの折り目と見る角度を変えると表情が変化します。

2012年「スパム年賀」

スパムの缶詰を送るというギャグをしたいがために制作した年賀状。缶詰の裏面にはスパムメール風の新年のあいさつが書かれています。

2011年「飛び出す年賀状」

年賀状がまとめて届くときに、首が飛び出すことを狙って作った主張の激しい年賀状。大量の年賀状と束になっていても一番に目がいくようになっています。

そこで今回、これらのユニークな年賀状が最初どのような経緯で企画、スタートしたのかなど株式会社人間の代表取締役・山根シボルさんにお話を伺いまいした。

――今年の「レジャーシート型年賀状」を受け取った方の反応はいかがでしたか?

10年間、変な年賀状をつくってきましたが、これまでのなかで一番反応がよかったです。多くの方がSNSで新年の挨拶とともに「レジャーシート型年賀状」の投稿をされているのが印象的でした。ここ数年の年賀状は、写真を撮ってもらうためにIQ低めのデザインを意識しているのですが、今回はその大きさを伝えるために全身が映るように撮影してくれた方が多かったように思います。大は小を兼ねますね。

――このユニークな年賀状は、最初どのような経緯で企画され、スタートしたのでしょうか。

弊社は常に“ボケる”ことを大事にしているので、「年賀状でもボケないといけない」という気持ちでスタートしました。2年目でスパムの年賀状「スパム年賀」を送ったときに結構良い反応をいただいて、そのあたりから「年賀状ってなんでも送っていいんだ」と勘違いしたので、ヘンテコなものを送ってみるという研究が始まりました。

煉瓦の年賀状「煉瓦状」を送った時はどうやって捨てたらいいの? という反応が返ってきて、みんな人からもらった年賀状を捨てていることが分かり、意外と人は薄情という研究成果も得られました。

――毎年、どのように企画し、作っていくのでしょうか?

毎年、全社員とアルバイト、学生インターン、外部パートナーが20人ほど集まってアイデアを持ち寄り、プレゼン大会が始まります。今回だと164案のアイデアが出たんですが、企画が好きな人たちが集まってるなと毎年実感します。ちなみに、煉瓦状は学生インターン、はやすぎる年賀状はぼく、今年のレジャーシート型年賀状は社外のデザイナーのアイデアが採用されました。

作り方についてですが、まずはそのアイデアが面白いかどうかだけで判断をしているので、作る段階になってはじめて作り方や送る方法を考えています。

例えば、2018年の「年賀状の天ぷら」の場合は、まず食品サンプルの作り方をリサーチし、食品サンプル職人を呼んで勉強会を開催して作り方を学んだあと、試作品を制作するといった流れでした。その後、試作品でテスト発送を行ってみると、ロウで作った天ぷらはポストに入ると壊れることが判明。そのため、硬化剤を塗ったり、ロウに色々混ぜてみたりと壊れにくい食品サンプルの作り方を研究しました。こうしてやっと納得のいく「年賀状の天ぷら」が完成しました。そこさらに量産する方法の検討や量産するスタッフの募集を行い、500個の食品サンプルの天ぷらを作成しました。このすべての工程が完了するまでに約1ヶ月かかりました。

株式会社人間では、毎年こうやっていろんな研究をしながら製作しています。ちなみに、私たちのこだわりとして、ポストに入らないものは年賀状ではないので、必ずポストに入るサイズで作っています。

――これまでに制作した年賀状のなかで最も評判の良かった年賀状は? 対して、評判が良くなかった年賀状は? それぞれその理由も教えてください。

評判の良かった年賀状は、2017年の「不在連絡票型年賀状」が日本郵便主催の「第32回 全日本DM大賞」において銅賞をいただきました。まさか某宅急便の不在票のパロディが受賞するとは思いませんでした。

逆に良くなかった年賀状は、2015年の「人間新聞」ですね。さつまいもをオリジナルの新聞で包んで送ったのですが、発送してから到着するまでに腐ってしまいました。さらに膨らんでいて、新聞の見出しが「人間爆発」と書いたため、年賀状を送った大手企業からちょっと怒られました。ナマモノは腐って膨らむことを学びました。

――1番思い入れのある、もしくは気に入っている年賀状を教えてください。

2018年の「年賀状の天ぷら」は、製作中の風景が異常でした。ロウを大きな鍋で煮込むインターン生。溶け出したロウで滑りやすくなったオフィスの床。オフィスに大量に並ぶかき揚げ。かなりカオスな状態になったのを覚えています。

デザインとして気に入ってる年賀状は、2020年の「はやすぎる年賀状」です。
撮影して遊んでくれることを想定したデザインでしたが、そのとおりの写真を投稿してくれて、達成感を味わえました。

――来年以降のアイデアはすでに考えていますか? もしなにか考えているようでしたら、すこし教えていただけるとうれしいです。

まだ考えてないですね。毎年12月になってから考えてます。ただ、今回ボツになった案が163個あるので、これはいつか活用したいと思っています。と言っても毎年良い企画が上がってくるので、その時が来たら考えると思います。ボツネタは誰か買い取ってください。

――株式会社人間として、今年の抱負があれば教えてください。

今年は株式会社人間を立ち上げて10周年ということで、「ヨコシマトリエンナーレ2021 ~邪の道はHEAVY~」と題して、ヨコシマな気持ちで生み出した10の企画を1年間で実施する“企画祭”を開催しています。「企画の研究所」「企画を供養するイベント」「ほしい企画と出会える店」「企画の学校」「企画の本」などを考えてます。まずはこれらの企画をどうにかやりきりたいです。

ただし、企画が10個のうち5個しか決まっていないので、一緒に企画を実施していただける企業やクリエイターがいれば助かります。PR EDGEさんも何かいっしょに企画しませんか?

2021年もどうなるかなんてわからないのにも関わらず、大風呂敷を広げてしまいましたが、会社を畳まなくてもいいようにがんばります。

株式会社人間
アイデアマン 山根シボル
1981年、大阪市西成区玉出生まれ。代表取締役、アイデアマン、クリエイティブディレクター、トイレットペーパーを交換する係。日々、奇想天外な企画をなんとかシボリだし、株式会社人間の「人間っぽさ」を担っている。人の目を見て話せない性格のせいで、人の顔覚えられないという弱点がある。アート好き、ゲーム好き、そして大のラジオ好きのサブカルオタクであり、広告業界のハガキ職人という気分で世の中を大喜利的に見ている。

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