篠崎愛が電話で“小悪魔っぷり”を炸裂!『世界初の通話連動型MV』制作の狙いと舞台裏

Case: 篠崎愛『URA SHINOZAKI-ほんとうの愛を、知っていますか?』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、グラビアアイドル、そして歌手として活動する、篠崎愛さんのメジャーデビューシングル『口の悪い女』のリリースに合わせて公開された、世界初の通話連動型MVサイト『URA SHINOZAKI-ほんとうの愛を、知っていますか?』について取り上げます。

企画の経緯から、メディアを意識した戦略、制作をスムーズに進めるための工夫、そしてその反響までを、株式会社東急エージェンシー クリエイティブディレクターの野澤直龍さん、同社 統合プランナーの酒井亮祐さん、同社 コピーライター/統合プランナーの丸本翔一さん、そして株式会社 monopo テクニカルディレクターの宮川涼さんにお話を伺いました。

Interview & Text : 坂巻 渚
メジャーデビューを機に伝える、アーティストとしての「新しい篠崎愛」

—まず、今回のプロモーションに携わられた経緯からお教えいただけますか。

野澤:メジャーデビューを機に、アーティストとしての篠崎愛をどのように打ち出していくか、という所からスタートしました。

酒井: これまでの篠崎さんと言うと、「癒し系グラドル」というイメージが一般的。しかし今回は、『口の悪い女』のように“ブラックな裏の側面“を打ち出し、パブリックイメージを覆すことで「アーティストとしての篠崎愛」を浸透させようということになりました。

—「通話連動型MV」というアイデアにはどのように辿り着いたのですか?

野澤:「アーティストとしての篠崎愛」と言っても、一方的に新しいイメージを押し付けるだけでは、世の中にはなかなか受け入れてもらえません。そこでアイデアを考える際はまず、「メディアに取り上げてもらうこと」を意識しました。まずは、ニュース系メディアに企画への興味を持ってもらい、世の中へ発信してもらう、そして、その情報に触れた生活者にもSNSでシェアしてもらう、という流れの中で「アーティスト篠崎愛」というイメージが形成されていく、というコミュニケーション構造がいいのだろうな、と。

あとは、「ファンがちゃんとやりたくなる要素」を意識しました。篠崎愛と電話できるなんて、ファンにとって最高ですからね。「もしも、自分が篠崎愛の友達だったら?」という設定も心をくすぐりますし、新しい篠崎さんの1面を自然に知ってもらえる施策として、最終的にこのアイデアに決まりました。

丸本:正直、話題になるであろう強いアイデアは沢山出ていたのですが、「篠崎さんのパーソナリティが伝わる企画」「篠崎さんだからやるべき企画」という点にはこだわりました。

“リアルさ”をとことん追究。いち早く実施した「デザイン検証」と「デモ体験」

—サイトを制作するにあたり、特にこだわられた点はありますか?

野澤:今回のプロモーションでは、拡散が重要なポイントだったので、シェアされるためのデザイン検証は徹底して行いました。インパクトの残るビジュアルとして機能させるため、紅い唇の絵を大々的に使ったのもそういった意図があります。

宮川:「シェアのしやすさ」と「引きの強さ」を意識し、サイトは全て一画面の構成にしています。スマホの通話画面やLINE風画面についても、アニメーションの細かい部分までこだわり、リアルさを追求しました。実際、メディアに取り上げてもらった記事でも予想通りのキャプチャが使われていたので、こだわった甲斐がありました。

—電話のセリフもかなりリアルですよね。セリフはどのように考えられたのですか?

酒井:リアリティがとにかく大事だったので、まずは篠崎愛が言いそうな言葉や使いそうな顔文字をリサーチし、盛り込んでセリフのたたきを作りました。その上で、最終的にご本人とディスカッションをして修正を加えていきました。ただ、セリフとMVの連動が難しかったですね。両方のタイミングが少しでもずれると、それだけで噛み合わなくなってしまうので。セリフの長さを考慮しながら、面白い内容になるよう、試行錯誤を重ねました。

野澤:篠崎さんに確認してもらう前に、「通話体験のデモ」も行いました。作ったセリフを女性に話してもらって録音し、検証を重ねていくことで、違和感のない通話体験に近づけたと思います。

—電話を切るとメッセージが送られてくるというアイデアも面白かったです。思わず返信しそうになりました(笑)

酒井:途中で電話を切ったり、動画の再生を止めると、たたみかけるようにスマホに“お怒り”のメッセージが送られてくるようになっています。電話を切った後にメッセージでダメ押しがくるというのは、実生活で体験したことのある方も多いと思います(笑) 篠崎さんの小悪魔感を感じてもらえる大きなポイントだったと思います。

—企画を聞いた時の篠崎さんの反応はいかがでしたか?

丸本:その場で、「面白そう。これやりたい!」と言っていただきました。こういう企画は、いかに本人に「やりたい!」と思ってもらえるかが重要なので嬉しかったですね。

野澤:今回かなり早い段階から、宮川さんに「デモサイト」を用意してもらい、篠崎さんが企画をイメージしやすいような環境作りを心掛けました。

丸本:プロトタイプを最初に用意したからこそ、篠崎さんにも沢山意見を言っていただくことができ、かなり早いペースで本人を巻き込みながらブラッシュアップできたと思います。

—社内での反応はいかがでしたか?

野澤:基本的には高評価でよかったのですが、中には「恥ずかしくて会社ではできない…」という人たちも結構いました(笑)

丸本:職場ではできない人や、家にPCがない人もいるので、その人たちにコンテンツを体験したように感じてもらうためにも、最初にメディアを押さえることは重要だと考えました。メディアに掲載されれば、やってくれる人も増えますし、やってない人にも「これ面白いよね!」と感じてもらうことができるので。

「質」と「量」ともに、理想的なメディアの盛り上がり

—実際に、リリース後のメディアの反響はいかがでしたか?

野澤:200以上のメディアに記事を取り上げてもらうことができ、アーティストのメジャーデビュー施策としては異例の好数字を出すことができました。

丸本:通常、歌手のデビューというだけだと、音楽系のメディアには取り上げてもらえても、それ以外のメディアで取り上げてもらうことはなかなか難しいんです。しかし今回は、ネタになる企画を戦略的に用意してあったので、エンタメ系やオモシロ系のメディアにも取り上げてもらうことができました。そして、その先にある、Yahoo!やグノシーなどの大手ニュースサイトにも転載され、さらにまたバイラルメディアにも掲載されるという、非常にいい構造を作ることができました。

酒井:記事の質も高く、メディアが実際にコンテンツを体験した様子を、順を追って細かくまとめてくれていました。もともと期待はしていたものの、メディアのコントロールはできないので、実現すると嬉しいですね。

野澤:あとは、Yahoo!急上昇検索ワードで、「iPhone7」「イタリア地震」などといった社会的に関心の高いワードと並んで「篠崎愛 通話連動型MV」が表示されたことを見ても、この構造がしっかり機能できたのではないかなと。

—拡散のいいサイクルが出来上がっていたのですね!SNSでの反響はいかがでしたか?

酒井:今回はスマホとPCの両方がないと再生できないので、「やりました」というコメントはあまりなかったものの、メディアの記事を見た人が「これ面白そう。後でやる!」というコメントと一緒に、記事をシェアしてくれていました。

丸本:あとは、記事を見た一般の方が自発的にブログに書いてくれたり、NAVERまとめを作ってくれたり。また、NAVERまとめは個人とは思えないほど質がかなり高く、たった1日で5万PVを越えていました。今回のように結果を出すことができたのは、ユーザーやメディアのインサイトを捉えられていたからだと思います。

野澤:「篠崎愛がメジャーデビューしたんだ!」「篠崎愛が面白いことやってる!」というコメントが多く目立ち、まずは、篠崎愛のメジャーデビュー、そして歌手としての新しい篠崎愛を多くの層に伝えることができたと感じています。今後もこういったコミュニケーションを継続することで、「アーティストとしての篠崎愛」という像を定着させて、そこから楽曲を知ってもらい、そして篠崎さんのファンになってもらうという、いい構図を作っていけたらいいですね。今回はその第一歩として、まずは道筋を作れたと思います。

株式会社 東急エージェンシー コピーライター/統合プランナー 丸本翔一さん(左から1人目)
株式会社 東急エージェンシー クリエイティブディレクター 野澤直龍さん(左から2人目)
株式会社 東急エージェンシー 統合プランナー 酒井亮祐さん(左から3人目)
株式会社monopo テクニカルディレクター 宮川涼さん(左から4人目)

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