♪ゾ ゾ ゾゾゾのゾ―― の歌と豪華キャストで話題に。ZOZOTOWN「ゾゾゾの鬼太郎」実現の舞台裏

Case: ZOZOTOWN「ゾゾゾの鬼太郎」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回はECファッションサイト ZOZOTOWNによる2年半ぶりの新TVCM「ゾゾゾの鬼太郎」を取り上げます。人気アニメシリーズ「ゲゲゲの鬼太郎」のリメイクと豪華キャストに注目が集まった本CM。誰もが知っている原作のリメイクに挑んだ経緯や、制作のこだわりなど、株式会社HAKUHODO THE DAY エグゼクティブクリエイティブディレクター 佐藤夏生さんにお話を伺いました。

Interview & Text : 香川 妙美
記憶に強く残る響きを、CMの軸に

—今回のCMが生まれた経緯をお聞かせください。

今回のCMは、アプリのリニューアルが訴求ポイントでした。ですが、それをそのまま説明するのではなく、存在として何か強く記憶に残せるものにしたいな、と。それでいうと、ZOZOTOWNは、ユーザーから「ゾゾ」と呼ばれているのですが、その響きがすごく掴みがあるんです。なので、そこをCMの真ん中に出来ないかなと思いました。で、真っ先に思いついたのが、『ゾゾゾの鬼太郎』。ここからが大変で。本物へのオマージュを込めながらも、広告だからこその新しさを打ち出さないと。その部分を表現するのに相当苦心しました。

—特にこだわった部分を教えてください。

まずは、キャスティングですね。課題はZOZOTOWNの間口を広げることなので、誰もが知っている親しみやすい方ということで、女優の大島優子さんに鬼太郎役をお願いしました。そして、ファッションECですから、とびっきりおしゃれなイメージを打ち出したいとも思っていたので脇を固めるねずみ男と猫むすめは、ファッションのイメージの強い方を起用したい。そこで、俳優の浅野忠信さん、モデルの土屋アンナさんをキャスティングしました。

衣装にもすごくこだわりました。打ち合わせだけでも10回はしたと思います。CMではそこまで見えませんが、鬼太郎のちゃんちゃんこはすべてビーズでできていて、猫むすめの衣装にある刺しゅうやタッセルもすべて手縫いなんです。浅野さん(ねずみ男役)の鼻ピアスも数種類用意して、挿す角度を何度も試したり、そういうディティールをとても大切にしました。

衣装は当初、別の案があったんです。そのときは、「かっこいい」って盛り上がったのですが、しばらくするとどこか気取った感じが気になりはじめてしっくりこない。オシャレにしすぎてなんかパリコレみたいだなと。妖怪っぽくないなと。妖怪とは何なのか。何をどう表現すると妖怪に見えるのか。その凄みがでるのか。そこを突き詰めていったら、「清貧さ」にたどり着きました。

—清貧さ、というと。

ゲゲゲの鬼太郎って、お化けでもモンスターでもなく、妖怪なんです。妖怪って日本独自の存在なんですよね。どこかおぞましくて人間とは違う生活習慣のなかで生きている。たとえば、お風呂に入ったり、着替えたりするイメージはないですよね。でも、みすぼらしい感じはしないし、不潔な感じもしない。そのサマを「清貧さ」という言葉にしたら腹に落ちたんです。妖怪っぽさを表現することは、清貧さをまとうことなんだなと。

―このほかにこだわった部分はありますか?

そうですね。どう見せるのかという部分ですかね。佇まいのつくりかた、とでも言いましょうか。この点は、キャストの3人がただ立っているだけで鬼太郎の世界観が成立することが大事だなと思って、動の部分は周りの浮遊霊(バレリーナ)のダンスに委ねました。

―CMではついキャストに目が行きがちですが、一反木綿がひらりと飛ぶシーンや浮遊している目玉おやじ等、観るほどに奥深さがあります。

その部分は、監督の黒田さんのこだわりが強いですね。ディティールをとても大切にされる方なので、じっくり観ていただくと色々な発見があると思います。

原作のイメージは超えられない。でも、ファンの期待値は超えられる

―原作をリメイクしたTVCMを昨今よく見かけますが、佐藤さんが今回、本CMを手がけるにあたって大切にされたことは何でしょうか。

CMに限らず、映画やドラマもそうだと思うのですが、リメイク作品って原作の持つイメージを超えることはできません。ただ、それを承知のうえでファンの期待値を超えることはできると思っています。そのためには、作者やファンが大切にしているものを理解した上で、原作とは違うインパクトに挑まなければいけません。簡単ではありませんが、中途半端なものをつくってファンをがっかりさせたくないですから。その点、ゾゾゾの鬼太郎は、妖怪らしさをとことん追求し細部までこだわり抜くことで、その期待に向き合えたんじゃないかと思っています。

―CMの反響はいかがですか。

手ごたえを感じていますし、原作とはひと味違う鬼太郎を打ち出せた点は、すごく良かったと思っています。

HAKUHODO THE DAY
エグゼクティブクリエイティブディレクター
佐藤夏生さん

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