8年越しのアップデート――藤井隆『light showers』収録曲を生成AIでMVに

吉本興業所属の“アーティスト”藤井隆さんが2017年に発表した4作目の音楽アルバム『light showers』。「90年代のCMソングみたいな曲」を集めたという架空のタイアップ曲を収録した作品です。

発売当初は、上記のように架空CF群のまとめ動画を作成・公開したこの作品。その発売から8年を経て、Googleが自社の生成AI群の実力を可視化するためのモデルケースとして、藤井隆さんのアルバム『light showers』に収録された楽曲のミュージックビデオを制作・公開。Google社が開発・提供するGeminiをはじめとした生成AIアプリ群の“現在地”を社会に示すためのデモンストレーションといえる取り組みです。

今回制作された全10曲のフル尺MVは、GoogleのAI「Gemini」や映像生成AI「Veo 3」、画像生成AI「Nano Banana」など最新技術を駆使して制作されました。『light showers』は、制作時から、全ての収録曲がタイアップに選ばれ、それぞれに15秒CFが付いているという架空の設定で作られた作品であり、このデモンストレーションにぴったりの“素材”。この “15秒CF” という短尺企画が、生成AIによる拡張表現と非常に親和性が高かったことから実現したといえます。

全曲MVの制作を請け負ったGoogleの視点では、この作品が「AIがどこまで担えるか」を示す格好のショーケースだと言えます。AIがクリエイティブ領域に介入する際の実力値を、具体的なアウトプットで広く提示することこそが今回の企画のコアにあります。

制作に用いられたGeminiは、Googleが今最も注力しているマルチモーダルAIであり、テキスト・画像・映像の生成や編集を横断的に扱える点が特徴です。さらに、Veo 3、Nano Bananaといった映像・画像生成AIを組み合わせることで、従来の手作業では工数や制作時間が膨らむ作業を効率的に進められることを示しました。この事例は、既存コンテンツをAIがどこまで“再構築”できるのか という問いに対する実践的な回答だととらえられます。

また、今回の発表では、収録曲すべてを一挙公開(公式の動画再生リストはこちら) という形式を取りました。単発ではなく、シリーズとして成立するクオリティーを最初からまとめて見せることで、「これは偶然の成功ではなく、生成AIが体系的に映像制作を支援できる段階に来ている」というメッセージを強く印象づけます。

2025年12月16日(火)には、ライブ配信イベントを実施。そこには博多大吉さん、椿鬼奴さんも出演し、制作の裏側や技術的背景について語るトークが行われました。また、制作で協働した映像監督3名と藤井隆さんがビハインドストーリーを語る動画も公開されています。

この取り組みは、藤井隆さんならびにその音楽作品を素材にして、Googleが 「生成AIはクリエイティブ制作の実戦フェーズに入った」 と社会に提示するための実例です。過去の資産をAIが再編集し、新たな価値を生み出すプロセスは、広告・PR業界においても大きなヒントをもたらすことでしょう。Googleが描く「制作の未来」を示す象徴的な事例として、今後も多方面で議論を呼びそうです。

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