【速報】カンヌライオンズ2025「Engagement」部門グランプリ受賞作品まとめ
2025年6月にフランス・カンヌで開催されている「Cannes Lions 2025」。時代の言の葉に乗ることでユーザーを巻き込み、大きな話題を獲得することができた作品を賞賛する「Engagement」部門において、クリエイティブの力でB2B企業の業績を大きく伸ばすことに成功した作品を評価する「Creative B2B Lions」、データを最大限活用した作品を評価する「Creative Data Lions」、斬新なターゲットの絞り方がなされた作品を評価する「Direct Lions」、シームレスにクリエイティブとメディアを融合させた作品を評価する「Media Lions」、戦略的なコミュニケーション手段が取られた作品を評価する「PR Lions」、SNSを舞台に活躍するクリエイターたちの力を最大化させた作品を評価する「Social & Creator Lions」の6つの賞におけるグランプリをご紹介します。
Creative B2B Lions
Act Like You Know(GoDaddy)
ドメインレジストラ(インターネット上で特定のドメインを利用できるよう登録、管理の手続きを行う会社)として世界トップレベルのシェアを誇るアメリカのGoDaddy。同社が提供しているD2C事業者向けのAIホームページ制作サービスのGoDaddy Airoが、とある人気俳優を起用した“本気度マックス”な大規模施策が見事グランプリを獲得しました。
施策の内容としては、映画・アントマンなどでお馴染みのハリウッド俳優Walton GogginsがGoDaddy Airoを利用し、自らゴーグル型サングラス事業を興す様子を紹介するというもの。
文字に起こすとシンプルに見える施策ですが、Goggins Gogglesという名前でローンチされたこのブランドは今もなお実際にサングラスを販売しており、キャンペーン用の期間限定のサイトではなくWalton Goggins本人による、れっきとした事業なのです。
SEO対策やSNS用広告の制作も可能なGoDaddy Airoの機能を存分に発揮し、よくあるWebサイト制作会社としてではなく、マーケティングからクリエイティブ制作まで一気通貫して支援を行うサービスであるということを、実例を通じてアピールしたのです。
多くの話題を呼んだこの施策は、最終的にGoDaddy Airoのサイト流入数を87%も増加させ、Goggins Goggles自体も垂直立ち上げさせることに成功。多くの競合が存在するD2C事業者向けのマーケットにおいて、圧倒的な存在感を放つことに成功した点が評価されたのではないでしょうか。
Creative Data Lions
Efficient Way to Pay(Consul Appliances)
ブラジルに住んでいる生活困窮家庭の65%は25年以上前に購入された家電製品を使っており、結果的に月々の電気代は一般家庭と比べて160%も高くなってしまっているという調査結果があります。
経済的理由からより効率的に電気を使う最新家電を買うことができず、毎月必要以上に電気代を払い続けている……そんな状況を打破するために現地の家電メーカーConsul Appliancesと広告代理店がタッグを組んで開発した、まったく新しい形の支払い方法がグランプリを獲得しました。
“Efficient Way to Pay(効率的な支払い方法)”というタイトルの施策の目的は、まとまったお金がない家庭の経済的負担を増やすことなく最新の家電を届けるという、一見すると不可能にすら思えるもの。
その不可能を可能に変えた仕組みとしては、生活困窮家庭が最新の家電を注文した段階では一切の金銭のやりとりは行われず、新しい家電に替えたことで浮いた月々の電気代を購入代金に充てるという内容。無利子で、支払い終わったあとはもちろんそのまま使い続けてもいい……まさに企業とユーザーの間で理想的なWin-Winの関係を構築することに成功しました。
1,280もの家庭がこの支払い方法を利用して最新家電を手に入れることができ、Consul Appliancesとしてもこれまでリーチできていなかった顧客層と出会うことができました。“商品を売る”という目的に対して“貧困家庭の経済的事情”と“旧式家電と最新家電の消費電力差”という、まったく異なる軸のデータを活用した着眼点が評価されたのでしょう。
Direct Lions
Three Words(AXA)
家庭内暴力(DV)に苦しむ多くの人にとって最も危険な場所は街灯のない夜道でも、治安の悪い歓楽街でもなく、自宅である……特にフランスでは女性がDV被害者になってしまうことが多く、逃げ場のない環境が原因で命を落としてしまうという残酷な事件も発生しています。
そんな状況を変えるために立ち上がったのが、同国大手の保険会社であるAXA。フランスでは法律上加入が必須とされている住宅保険の規約の一部に“ある言葉”を追記することで、誰にも助けを求めることができない女性たちに救いの道を提供したのです。その勇気ある行動と社会的な意義が評価され、見事にグランプリの受賞へと繋がりました。
一般的に、保険会社の規約には「火事や洪水、浸水の際には避難用の仮の住まいを提供する」と書かれており、AXAはここに「DV被害に遭ってしまった場合を含む」と追筆。自宅が住めない場所になってしまう理由は必ずしも災害関連ではなく、むしろその原因は内側にある時もある……そんな当たり前の事実と向き合う姿勢が評価されたのでしょう。
規約の更新から1ヶ月の間に121人もの女性がAXAに問い合わせを行い、実際に保護されました。同時期に契約数は9%も伸長し、長らく業界2位だったブランド好意度も一気に1位へと躍り出ることに成功しました。社会問題と向き合うためのサービスを正しい形で宣伝することが、命を救うことにも繋がる。そんな実例になれた施策だったのではないでしょうか。
Media Lions
Real Beauty Redefined for the AI Era(Dove)
“本当の美しさ”はメディアで描かれているものではなく内なるものであり、すべての人は平等に美しい……そんなメッセージを20年以上発信し続けてきた美容ブランドのDoveが、AI生成画像が蔓延する現代社会に向けて公開した大規模なキャンペーンがグランプリの座に輝きました。
AI画像生成ツールによってどんどん美しさの定義が画一的になっていくことに危機感を覚えたDoveは、世界最大級の画像検索プラットフォームであるPinterestとコラボ。
Pinterest上でユーザーに“美しいと感じるものや人”を選び続けてもらうことでAIにさまざまな形の美しさを学習させることに成功したのです。体型、肌色、伸長、年齢、顔の造形……マスメディアが紹介する美しさだけをAIに学んでほしくないという、Doveらしい哲学が伺えます。
最初はPinterestを中心としたデジタル上で展開されていたキャンペーンも、最終的にはニューヨークやロンドン、カナダやブラジルといった欧米圏の国々のサイネージへと進出。さまざまなメディアを通じて多くの人の目に触れることで、これからのあるべき美しさの形を考えるきっかけとなったようです。
40億ものアーンドインプレッションを獲得したDoveらしさがあふれるこの施策、将来的にはどう世間の価値観に影響を与えるのか、期待が寄せられています。
PR Lions
Lucky Yatra(Indian Railways)
日々750万人もの乗客を運んでいるインド・ムンバイの鉄道。その全乗客が運営会社であるIndian Railwaysにとって本当の意味での“お客様”ではない……実は多くの人は切符を買わずして勝手に乗車しているのです。
これによってIndian Railwaysには多額の損害が生じており、駅員を配置するも対応しきれずにいるという課題がありました。そんな状況を変えるために同社が行った“あるインサイト”に基づいた施策がグランプリを獲得しました。
その“あるインサイト”というのは、インド人は宝くじが大好きだということ。なんと切符に印字される発行番号を活用することで、切符そのものを宝くじへと変えてしまったのです。毎日10000ルピー(約17000円)が当たり、1週間に1回は50000ルピー(約84000円)もの高額当選者が出るという噂が話題となり、瞬く間に多くの人が切符を買い求めるようになりました。
取り締まれる人数に限界があるのであれば、無賃乗車をしている乗客たちが自ら切符を買いたくなるような仕掛けを作ればいい……よく考えればシンプルな発想から生まれたこの施策は、とにかく強烈なインパクトと行動変容を促すPR的なアプローチが評価へと繋がったようです。
Social & Creator Lions
Vaseline Verified(Unilever)
Health & Wellness Lionsでもグランプリを獲得したユニリーバの施策が、SNSクリエイターを巻き込みながらUGC(ユーザー生成コンテンツ)の創出を促す新たな座組を発明したとしてSocial & Creator Lionsにおいてもグランプリを受賞しました。
日本でもさまざまな用途で愛用されているユニリーバの軟膏・ワセリン。軟膏剤としてはもちろんのこと、保湿剤や潤滑剤としても知られているワセリンの使い道はまさに無限大。
そんな汎用性の高い商品だからこそ、多くのユーザーがSNSでオリジナルの使い方を紹介しており、その一部は実際に有効ではある一方で一部は本来ユニリーバが意図していない危険な用途であるともされています。この事実に着目した同社は、これ以上ないくらい“本気で”SNS上のUGCと向き合った事例を実施したのです。
施策の内容としては、インターネット上に存在する350万もの“ワセリンの意外な使い道を紹介する動画”をすべてユニリーバが確認し、それらの有効性を実際に研究所で検証するというシンプルな内容。実際に有効であることが認められた使い道を紹介していたユーザーにはユニリーバから簡易的なトロフィーが届き、彼ら1人1人を公式アンバサダーとして任命したのです。
メーカーお墨付きの称号を得たユーザーたちはこの意外な展開に驚きを隠しきれず、自らワセリンの宣伝を行うことで次々とUGCの数は増えていき、結果的にSNS上で6,300万ものエンゲージメントと700万ものオーガニックリーチを獲得。売上も43%伸長し、ユーザーからのポジティブな声も87%を達成しました。
UGCを資産として捉えしっかりと活用することでブランド名の波及を爆発的にブーストさせつつ、メーカーとして正しい情報を選別するという責任感あふれる姿勢が評価されたのでしょう。
それにしても、350万もの既存のUGCすべてをチェックするという途方もない作業と向き合えたこと自体がすごいことかもしれません。
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▷「Health」部門グランプリ受賞作品まとめ(https://predge.jp/319168/)
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