大阪和田萬のごま廃棄ロス削減に向けたアイデア商品「なんでもごまんぞく」

「世界中に本当のおいしさを届ける」をモットーとする株式会社和田萬は、天下の台所・大阪天満で産声を上げ140余年、1883年創業の老舗ごま専門メーカーです。現在は、ごまの加工・販売はもちろん、ごまの廃棄ロス削減や国産ごまの自給率向上にも取り組んでいます。

和田萬の製品は現在、米国をはじめ13カ国に輸出されており、じつは売上の約20%を海外市場が占めています。とくに米国やフランスでは30件以上の星付きシェフに、サラダやパスタ、ピザなどの創作料理にごまが取り入れられ、和田萬の焙煎技術が高い評価を受けているといいます。

また、2023年4月には本社の1Fにカフェ「IRUAERU」をオープンし、ごまラテやごまモナカなど美味しく健康に良い食事と、生活に関連するワークショップや絵画の展示通じて日常の幸せを感じてもらう場を提供するなど、新たな挑戦も始めています。

さらに、和田萬は現在、焙煎や加工の過程で発生するごまの廃棄ロスに挑んでいます。ごまの製造過程では、皮がめくれたり土や枝が混ざったりするため、全体の15~20%が廃棄されてしまうだけでなく、ごま油を製造する際には約70%が搾りかすとして廃棄されてしまうのだとか。

しかし、この搾りかすにはカルシウムなどの栄養が豊富に含まれており、廃棄するのはもったいないとの思いから、新たな食品として開発ができるのではないかと可能性を見出しました。

そこで、これまで廃棄されてきた「ごま搾りかす」に再度火を入れ、しょうゆで味付けし、和え物やふりかけとして使える万能調味料「なんでもごまんぞく」を開発。この「なんでもごまんぞく」は、炒める、混ぜる、かけるといったさまざまな調理法で手軽に使用でき、和風・洋風を問わず多様な料理に適しています。

また、同商品はアミノ酸、酵母エキス、たん白加水分解物を使用していないため、健康を意識した方にもおすすめです。忙しい日々の食卓に、簡単で美味しい一品を提供する調味料として、発売直後から多くの方に支持される商品となりました。

和田萬がつくりだす、国産ごま栽培の大きな輪

0.03%――じつは、この数字は、現在の日本におけるごまの自給率だそうです。今や日本の食卓に欠かせない存在と言っても過言ではないごまですが、ほとんどが海外からの輸入に依存している現状があります。ごまは栽培の機械化が難しく、収穫の際に混在したごま以外の混雑物を取り除くために手作業が多くなり手間がかかることから、農家からは敬遠されがちなのです。

このまま生産者が減っていっては国産ごまが消滅してしまうのではないか、そんな危機感から和田萬では自社でのごま栽培に取り組み始めたといいます。2001年から社をあげて「国産ごまプロジェクト」を開始。最大の産地・鹿児島県喜界島をはじめ、主産地の九州、島根、兵庫、富山など20件前後の生産者に契約栽培をお願いすることで、開拓エリアを広げてきました。

そうした取り組みを続けた結果、現在では年間製造量は約15トン、国産ごまの生産の30%以上のシェアを獲得するまでとなりました。さらに、2009年からは、奈良県内で和田萬の社員とお客様といっしょにごまを育てる「ごまオーナー制度」を開始。社内とお客様で生産者の苦労や思いを共有することで、国産ごま栽培に対しての大きな輪をつくり続けています。

ごまの製造過程でどうしても廃棄されてしまう部分をアイデア商品へと変換。ただ単に廃棄ロス削減とするだけでなく、料理にアレンジを加えられるおいしくて栄養価も高い人気商品へとつなげているところが素敵です。

また、和食に多く使われるごまの現状を捉え、国内自給率を高める取り組みにより大きな成果を遂げています。自社の商品をまっすぐに見つめ、改善できる余地を探して取り組むことは、社会貢献でもありますが、ひいては自社の商品を取り巻く市場環境を整備することにもつながることを、あらためて感じさせてくれる事例となっています。

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