【速報】カンヌライオンズ2024「Good」部門グランプリ受賞作品まとめ

2024年6月(現地時間)にフランス・カンヌで開催された「Cannes Lions 2024」。社会通念を前進させるソーシャルグッドな作品に贈られる「Good」部門において、特定の文化に影響を及ぼした作品を評価する「Glass: The Lion for Change」、国や地域を超越して社会そのものの改善を図った作品を評価する「Grand Prix for Good」、SDGsな作品を評価する「Sustainable Development Goals Lions」の3つの賞におけるグランプリをご紹介します。

Glass: The Lion for Change

Transition Body Lotion(Unilever)

人口に対するLGBTQ+の人の割合が約8%と言われており、一般的にも性別適合手術の技術が発達しているというイメージを持たれがちなタイにおいて、トランスジェンダーの人々に特化した商品を発売したユニリーバの事例が見事グランプリを獲得しました。「社会的な変化のきっかけは、時に政治ではなく1つの商品がもたらすこともある」と現地のSNSインフルエンサーに言わしめた同商品は、今後タイだけでなくさまざまな国と地域を超え販売されることが期待されています。

トランスジェンダーの人は性別適合手術を受けたあと、ホルモンバランスの変化によって体質や肌質が少しずつ変わっていってしまうというデータがあります。男性用と女性用で異なる成分配合がなされたボディーローションは市場にたくさん出回っていますが“男性と女性の間”、すなわち性別適合手術を受けた直後にホルモンバランスが徐々に変わっていく段階の人用のスキンケア商品は今まで販売されていませんでした。そんな人専用の商品を、ユニリーバはワセリンブランドで発売したのです。

2年にもわたる研究開発を経て誕生したボディーローションはSNS上での好意度100%、1.58億ものインプレッションを獲得し、社会そのものを前進させる可能性を秘めているという点が評価につながりグランプリの座を手にしました。

Grand Prix for Good

The First Speech(Reporters Without Borders)

言論の自由の保証のために活動する非政府組織のReporters Withour Borders(国境なき記者団)は、特定の政治派閥や思想にとらわれることなくすべての人が正しい情報に正しい形で触れることができる世界を作るためにさまざまな媒体を通じて日々発信を行なっています。そんな国境なき記者団が公開した3種類の長尺啓発動画が、社会全体をよりよくするための気づきを作ったとして見事グランプリに輝きました。

“The First Speech(就任後の初スピーチ)”というタイトルで公開されたシリーズは、今となっては他国への侵攻を推し進めたり独裁者として知られてしまった国の主導者たちの就任演説の内容を、その国の国民の当時の表情を再現した映像とともに紹介しています。ロシアのバージョンでは「すべての国民が誇りに思い、世界中から信頼される国にすることを約束します。これまでわたしたちが成し遂げてきたことを胸に、民主主義のあるべき姿を守っていきましょう」という演説を抜粋。心打たれるスピーチではありますが、実はこれはプーチン大統領が2000年にロシアの大統領に就任した際の演説なのでした。

“The Loss of Freedom is Never Obvious at First(自由の喪失は最初は気づきにくいものである)”というキャッチコピーで締めくくる動画は、どんなに立派な就任演説であってもその後大きく方針を変えてしまうことがある国の主導者たちの有り様を浮き彫りにし、その追求と言論の自由を追い求める国境なき記者団の活動が有意義であるということを、強烈なインパクトとともに打ち出しました。

同時の公開されたベネズエラのバージョンとトルコのバージョンではそれぞれマドゥロ大統領とエルドアン大統領の就任演説を同じフォーマットで紹介。近隣国への侵攻を行なったり独裁者として世界中で知れ渡ってしまった主導者たちの過去に、勇気を持ってスポットライトを当てたことが評価されたようです。

Sustainable Development Goals

Cars to Work(Renault)

Creative Commerce Lionsでもグランプリを受賞したルノーの事例が見事Sustainable Development Goalsでもグランプリに輝き、2冠を達成しました。今フランス国内では、移動手段が原因で職に就けない人が増加しつつあります。一説によると54%もの求職者が“職場までの交通手段がないから”という理由で仕事を断った経験があると答えており、特に都市郊外や田舎のエリアに住んでいる人々に適切な交通手段を与えることは経済の発展へと直結するという見方もできるでしょう。そんな状況を変えるために大手自動車メーカーのルノーは広告代理店グループのPublicisとともに新たなサービスを開始しました。

“Cars to Work(通勤のための車)”というタイトルが付けられた施策は、働くために自動車を必要とする無職の人を対象に、ルノー車を買う場合は仕事が見つかるまではローンの支払いを免除するという内容。仕事をするためには車が必要なのに、車を買うためには仕事が必要……そんな負のジレンマを解決することが目的です。

交通手段さえ確保できれば自身のスキルを活かすことができる……そんな困っている人に直接手を差し伸べ、ローンの返済期間を先延ばしにするというビジネス上の決断を行うことができた勇気、そして経済全体を活性化させようと試みた点が評価へと繋がったのではないでしょうか。

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