「U.F.O.」ふたのキャベツを落とすプロダクト 無念の発売中止も…日清食品の「PRODUCT X」担当者に聞く

Case: 日清食品『キャベバンバン CBB-001』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、日清食品「PRODUCT X(プロダクト ペケ)」プロジェクトの第2弾「キャベバンバンCCB-001」を取り上げます。食にまつわるさまざまな問題に対して、日清食品独自の視点でアプローチする商品開発プロジェクト「PRODUCT X」。その第2弾として開発されたのが「日清焼そばU.F.O.」のふた裏に付着したキャベツを振動で落とすことができるデバイス「キャベバンバン CBB-001」です。日清食品グループオンラインストアにて、5月17日より5月31日までクラウドファンディングによる予約販売を実施。予約数が1,000個に達した場合、4,980円(税込)で購入が可能になるプロジェクトです。予約数が1,000個に達さず発売中止となるも、このデバイスはネット上で大きな話題となりました。

企画が立ち上がった経緯から商品開発の舞台裏までを、株式会社電通・電通ライブ コミュニケーションプランナー 加我俊介さんにお話を伺いました。

Interview & Text : まきだ まどか
日清食品の問題意識から始まった「#キャベバンバン」プロジェクト

―商品開発プロジェクト「PRODUCT X」がスタートした経緯について教えてください。

「PRODUCT X」は、日清食品グループオンラインストアのリニューアル1周年記念のプロモーションとしてスタートしました。オンラインストアへの接触欲求を喚起するため、この場だけで買える話題性のある商品を継続的に産み出すプラットフォームを作ろうと考え、「PRODUCT X」を提案しました。ド真面目な商品開発というよりは、日清食品さんらしいユーモアの視点を大事にしながら、食にまつわるさまざまな課題を解決する商品作りを目指した取り組みです。「社会課題」は最も確度の高い話題化の源泉であるという考えから課題解決型の商品開発としました。

―「日清焼そばU.F.O.」の「#キャベバンバン」キャンペーンを受けて「キャベバンバンCCB-001」のプロジェクトがスタートしたそうですね。

「#キャベバンバン」は、「日清焼そばU.F.O.」が今年3月上旬から展開していたブランドプロモーションで、湯切り後にキャベツがふたの裏に付着してそのまま捨てられるのを防ぐことを目的に、食べる前にふたをバンバンたたこうと呼び掛けた企画です。日清食品では、商品開発的な観点で、以前からこのキャベツがふたに付着することを問題視していたそうです。そういった問題意識が「#キャベバンバン」プロジェクトとなり、今回の「キャベバンバンCCB-001」につながりました。

「#キャベバンバン」プロジェクトがローンチする直前に、U.F.O.チームから私たち「PRODUCT X」チームにお声が掛かり、ふたに付着したキャベツを落とすデバイスを商品化できないかと相談がありました。U.F.O.のブランドマネージャーが針金と輪ゴムで独自に作ったプロトタイプがあり、既に試作品作りも進められていて、それをもとに商品化・販売できないかとのことでした。

―日清食品にもともとあった問題意識がかたちになったプロダクトだったのですね。

日清食品の社員の間では、ふたを叩いてから食べるというのが当たり前だったそうです。そのことを企画にしたのが、「#キャベバンバン」だったんです。実際に商品を作っているメーカーならではの発想だと思います。

日清食品の各ブランドの受け皿として「PRODUCT X」を機能させたい

―針金で作ったプロトタイプからどのように商品の開発を進めていったのですか?

ベースとなる機構はすでにでき上がっていたので、精度/意匠両面のクオリティを上げる作業でした。3Dプリンターで試作品を作っては、ゴムの位置や角度などを変えながら検証・改良。このプロセスを何回・何十回と繰り返し、ようやく完成に至りました。「#キャベバンバン」のキャンペーンからいかに時間をあけないで「キャベバンバンCCB-001」をリリースできるかが勝負だったので、スケジュールはタイトでした。

―どんな点にこだわりましたか?

今回の商品も機能・存在自体が“無駄(バカバカしい)”だからこそ、それとのギャップを作り出すために、商品原価とせめぎ合いながら、デザインを“無駄に”カッコよくする・スタイリッシュに仕上げることにこだわりました。「キャベバンバンCCB-001」をプレゼンテーションするPVにおいてもその点を意識して世界観を構築しています。

 

―某家電メーカーを連想させるような動画に仕上がっていますね。

「PRODUCT X」のキーワードは“無駄に”なのですが、「キャベバンバンCCB-001」はまさに存在自体が無駄ともいえます。手で叩けばいいものを、わざわざ4,980円もする商品を使ってふたに付いたキャベツを落とす。しかも、このデバイスを使ったとしても、ふたに付いたキャベツの除去率は81%。そこが最大のツッコミどころです。そういった“無駄”な要素について、ユーザーにつっこんでもらい、笑ってもらい、話題にしてもらえるよう表現したのがあの動画なんです。

表現については、動画を作る段階で、「キャベバンバンCCB-001」の商品がまだできあがっていなかったという制約を勘案して、フルCG前提で企画を考えました。その結果、最大のツッコミどころである「除去率(81%)」を最大限引き立てることをゴールに、商品のCGとナレーションで無駄にカッコよくプレゼンテーションする動画に仕上げることになりました。

―「#キャベバンバン」のキャンペーンで一度話題になっているので、ユーザーも受け入れやすかったのではないでしょうか。

「#キャベバンバン」キャンペーンからそこまで間をあけずに展開できたので、企画背景の説明なしに「キャベバンバンCCB-001」の話題に入っていけました。ユーザーの理解の速度が速かったですね。メディアの方も取り上げやすかったと思います。

現在、さまざまな企業がSNSを起点に話題化を狙ったバズプロモーションを展開していますが、そのほとんどが2~3日で情報消費されてしまっています。作り手としても、この世の中の情報消費の早さにどう対応していけばよいか、ずっと頭を悩ませていました。その点、今回はひとつの着眼点/企画で、「#キャベバンバン」と「キャベバンバンCCB-001」で2度の話題化に成功した事例となりました。

日清食品では、それぞれのブランドでおもしろいプロモーションをたくさん展開しています。そこで作られる話題を「PRODUCT X」で商品化することで、話題化文脈の主語を変え、もうひとつのニュースを作ることができます。「PRODUCT X」は日清食品グループオンラインストアのプロジェクトですので、それぞれのブランドのキャンペーンの受け皿として機能させていきたいと考えています。

クラウドファンディング目標予約数は達成ならず

―メディアでも多く取り上げられていたようですね。

日本テレビ、NHK、朝日新聞、日経新聞、Yahoo! トップでは2回取り上げられました。合計約500媒体で取り上げてもらいました。企画の再利用としては、十分すぎる露出量ではないでしょうか。

―ユーザーからはどんな反応がありましたか?

「日清食品さんは相変わらずおバカなことするねw」というあたたかい声が基本ですが、もちろん悪くいわれることもあります。クライアントさんも私たちも、話題最大化を狙うからには賛否両論が基本というスタンスで臨んでいます。

―クラウドファンディングで掲げていた予約数1,000個は達成したのでしょうか?

残念ながら予約数839個で、第1弾の「音彦」同様、販売には至りませんでした。予約してくださったお客さまには予約がキャンセルされた旨のメールをお送りしています。達成できなかったことについても、ユーザーの投稿を起点に多くのメディアで取り上げてもらっていますが、私たちは大真面目に販売を目標にしていたので、オフィシャルでは大々的な報告は特にしていません。クライアントさんも真剣に商品化を目指していたので、商品化が叶わず悔しがっていました。

―発売延期等の対応も可能性としてはあったと思いますが、発売中止とした理由はありますか?

もちろん実際に販売したいとは思っていますが、プロモーション視点では、クラウドファンディングが成功した、失敗したという結果はそこまで大事ではないと考えています。商品化が実現したらそれはそれで盛り上がっていたとは思いますが、できなかったとしても話題作りには十分貢献できているからです。4,980円という価格設定と1,000個のロットという条件も、商品を販売する=事業として成立させるためのギリギリのラインでした。

―「PRODUCT X」今後の構想は動き出しているのですか?

リリースのタイミングは未定ですが、構想段階の企画はいくつかあります。今後もオリジナル商品はもちろんのこと、日清食品のいろいろなブランドが展開するバズプロモーションの受け皿として、今回のような話題を再利用した商品開発を積極的に手掛けられたらと考えています。オンラインストアを企業/ブランド横断のプラットフォームとして、世の中の情報処理の早さに抗いながら、話題の継続化、(商品開発による)話題の収益化に挑戦していきたいと思っています。

 

株式会社電通・電通ライブ コミュニケーションプランナー 加我俊介さん

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