効率重視の移動から、ドライブそのものをたのしんでもらうためのアプリ「SUBAROAD」について、話を聞いた
自動車メーカーの株式会社SUBARU(以下、SUBARU)が、クルマを単なる移動手段として捉えるのではなく、運転そのものをたのしめる新しいドライブ体験として、SUBARUオーナー向けに開発されたドライブアプリ「SUBAROAD」をリリースしました。
効率を最優先し目的地へ案内する従来のカーナビゲーションでは案内されなかったワインディングロードをはじめ、海や山など自然の景観を楽しめる道、地域の魅力を感じられる名所などのドライブコースを案内してくれます。
また、これに加え、クルマの位置情報とリアルタイムに連動した地域の歴史や物語を音声コンテンツにてお届けする機能や、定額制音楽ストリーミングサービスAWA®との連携により、その道や車窓から見える景色にぴったりの音楽を流す機能が搭載されています。
今回、SUBARUのクリエイティブパートナーとして「SUBAROAD」の企画・開発に携わっている、株式会社バスキュール コミュニケーションプランナー/プロジェクトデザイナーの佐々木大輔さんにこれまでの取り組みや「SUBAROAD」を開発した経緯や反響など、お話しをお伺いしました。
「SUBAROAD」を企画した経緯、目的を教えてください。
佐々木大輔さん(以下、佐々木):現在、自動車業界はGoogleやAppleなどのプラットフォーマーが参入するなど、CASE(Connected,Autonomous,Shared&Service,Electric)の時代を迎え、100年に1度の大変革に直面していると言われています。その状況下で、私たちは2018年にSUBARUのR&Dチームのみなさんとともに、SUBARUならではのデータ活用のあり方を模索しながら新しいドライブ体験をつくりだすことをミッションに掲げ、クルマとテクノロジーの未来をデザインする共創プロジェクト「SUBARU Digital Innovation Lab」を立ち上げました。
その共創プロジェクトの第一弾として開発を進めてきたのが、スマートフォンアプリ「SUBAROAD」です。ある調査を通じてわかったのが、SUBARUオーナーはクルマを移動手段として利用するだけではなく、「できるだけ長い時間クルマに乗っていたい」「目的地へ行くのにわざと遠回りをする」といったように、運転すること自体に価値を見出している方たちが多いということでした。そんな利便性や合理性だけを追求しないコアなファンを持つSUBARUだからこそ、近道よりも、発見や走りがいのある道を案内してくれるサービスがあったらおもしろいのでは? と考えたのが企画の経緯です。
「SUBAROAD」を企画してから実現するまでの取り組みを教えてください。
佐々木:核となるアイデアは早い段階で思いついていたのですが、ユーザー体験のデザインやアプリ開発には多くの試行錯誤が必要でした。例えば、走りがいのあるドライブコース、位置情報と連動する音声コンテンツ、スマートフォンアプリのUI/UXなど、「SUBAROAD」のユーザー体験を構成する要素は多岐に渡ってきます。このため、数々の試作モデルを開発し、実際に走行テストを繰り返しながら、最適解を探すのに時間を要しました。
試作を繰り返し、自分たちが目指したいゴールの解像度が上がっていくなかで、改めてビジョンを明確化するために、コピーライターと共にプロジェクトステートメントを開発しました。結果、このステートメントがチームの旗印となり、その後のプロジェクトの推進力を高め、AWA®を開発するavexさんや地図情報サービスを開発するmapboxさんをはじめとする多くの共創プレイヤーを巻き込む原動力にもなりました。
SUBARUオーナーをはじめ、まわりからはどのような反響がありましたか?
佐々木:ローンチに先駆けて実施した先行体験会では、嬉しいことに95%の方から新しいドライブ体験に対して「満足した」という回答をいただきました。
新しいドライブ体験として評価を頂いたことに加え、「伊豆の新たな魅力を発見できた」という声も多く聞かれ、伊豆の訪問回数が10回以上ある方の約85%が「新しい発見があった」と回答してくれました。
これらの声のおかげで、地域の魅力を発信するツールとしての「SUBAROAD」のポテンシャルを感じるとともに、エリアを全国に広げていくことの意義を感じましたし、また、「SUBAROAD」の取り組みそのものへの共感や、「SUBAROAD」を通じてSUBARU車の良さを再認識したという声も多く聞かれ、SUBARUブランドとオーナーとの新しいエンゲージメントの機会になっているという手応えも感じました。
「SUBAROAD」の最初の取り組みとして、伊豆を選んだ理由を教えてください。
佐々木:伊豆は既に人気のドライブスポットですが、ガイドブックで紹介されているような王道のドライブコース以外にも、個性的な道がたくさんあります。また、目には見えない歴史や物語にも富んでいる土地でもあります。王道とは異なるドライブをデザインする場として、そして地域の隠れた魅力を掘り起こす場として、伊豆はうってつけの舞台だと考えたからです。
また、実際の道を走りながらコースの検討や開発テストを行う長期開発であったため、私たちの拠点である東京からアクセスしやすいことも、伊豆を選んだ理由のひとつです。
佐々木さん個人としての、伊豆おすすめの”SUBAROAD”を教えてください。
佐々木:「SUBAROD」では、ドライブ中の位置情報と連動した音声やBGMを再生する「音声ARシステム」を提供しているのですが、高低差が45mもある2重らせんのループ橋「河津七滝ループ橋」や、あの有名な曲の舞台になった「新天城トンネル」などは、その場所ならではのBGMを楽しんでいただけるスポットとしておすすめです。その他にも、走りがいのあるワインディングロードや絶景が続く海岸沿いなど、伊豆にはBGMと供に走りたい道がたくさんあります。車窓から見える景色とリンクした音楽体験は、きっとドライブの気分を盛り上げてくれるとおもいます。
最後に「SUBAROAD」の魅力や今後の展望をお聞かせください。
佐々木:従来のカーナビが教えてくれる道は、一番効率的で走りやすい道です。ナビが言う通り、みんなが同じ道を走れば、道沿いには商売が生まれ、どの地域も同じような風景に変わっていきます。しかし、テクノロジーが進化し、正解ばかりを追い求める結果生まれるのは、同じ道や同じ景色になってしまいます。
「SUBAROAD」は、そんな効率化を重視するテクノロジートレンドへのアンチテーゼの意味合いもあります。一本外れた道にこそ、きっと地方の個性はあるはず。遠回りをするから気づくことだってあるはず。そんな想いから生まれた「SUBAROAD」のドライブをぜひ多くの方に体感いただきたいです。
今後の展望としては、全国へのエリア拡大を予定しています。現在、千葉/房総、奥多摩/甲州、群馬などの関東エリアの実装を進めており、その他の地域への展開も順次進めていきます。また、SUBARUオーナーのみなさまをはじめ、ミュージシャンや声優、シナリオライターなどのクリエイター、全国の自治体や企業など、プロジェクトのビジョンに共感いただけるさまざまなプレイヤーとの共創プログラムも展開していきたいと考えています。最新情報は「SUBAROAD 」のアプリや特設サイトにて発信していきますので、ぜひ今後の動きに注目いただけるとうれしいです。
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