2021年版「ピッカピカの一年生」新CMがスタート!制作の裏側は……?

「ピッカピカの 一年生♪」というメロディでおなじみ、小学館の児童学習誌『小学一年生』のテレビCM『ピッカピカの一年生』の2021年度版が公開されました。今年のサウンドロゴは、来年春に自身のお子さんが小学一年生になる桐谷健太さんが担当しています。

昨年、約25年の時を経て復活した同CM。その際は、Twitterで960万回以上、YouTubeで360万回以上再生されるなど、大きな反響を呼びました。そして今年も、日本全国津々浦々めぐり、来春に小学1年生となる子どもたちが将来の夢や好きなものについてカメラの前で語っています。

本動画は、テレビCMはもちろん、YouTubeやTwitter、Instagram の『小学一年生』編集部公式アカウントでも公開されており、SNSでは、昨年と同様、2021年度版の子どもたち全員の動画を1日1投稿ずつほぼ毎日公開していくそうです。

https://youtu.be/g9TvrMJ8exM

 

『小学一年生』編集部公式Twitter: https://twitter.com/sho1hen

1978年から十数年にわたり放送され、多くの人々に愛されてきたこのCM。制作の方法や、令和になって復活した際の反響など、小学館担当者にお聞きしました。

――どの時代のCMも、子どもたちがとても自然で、だからこそ生まれるおもしろさがありますよね。具体的には、どのような方法でアプローチして、子どもたちの素を引き出しているのでしょうか?

担当者:撮影時、現場スタッフが最も大変なところです(笑)。「どうすれば引き出せるか」という絶対的なノウハウがあれば、私自身が授かりたい部分もあるので、正直、いろいろと話したり笑わせたりするという一般的なことしか申し上げられないのが残念です。

ただし、“子どもたちの素”のどの部分を抽出するようにしているかというご質問であれば、なんとかできると思います。それは、「『言語化』できない、もしくは『言語化しようと一生懸命考えている』部分」です。

……というのは、ある程度の年齢になると、人は話す時だけでなく、頭の中で考える時も「言葉(日本語)」で考えます。でも、まだ子どもは全てを言語で考えているわけではありません。だから「オトナが言語で指示」しても、その言葉を子どもたちが理解して、その対応を言語化することは、能力的に不可能です。(例外として、“大人の言語を理解し、且つそれを言語で反応できる”子役タレントのような子どもも、いるにはいますが……)

彼らの年齢では何かを考える時、言語にしないまま、自分の「何か」を使って必死に考えたり表現してくれます。その頑張り(?)がとても一生懸命がゆえに、素晴らしくユニークな反応として、こちらにも伝わって来るのです。

――毎回、日本全国を周っていますが、撮影する場所や撮影する子どもたちはどのように決めているのですか?

担当者:その時々でニュースなどで世間の注目を集めたり話題になる地域が毎年あると思います。ただ「人の関心は束の間である」ことも事実です。常に少し経つと忘れられてしまいます。だから観てもらった時に、「あっ、あそこの子どもたち、元気にやってるんだ、よかった」とか、ちょっと前の記憶を喚起してもらえると有り難いです。

そして、もう一つは季節感です。来春に新一年生になるわけですが、(春になる前の)季節がわかる景色を観てもらうことで、逆に春爛漫の風景をイメージしてもらうことが、これまで御覧いただいた方々の言葉からわかりました。「いまは葉っぱが赤いけど、この子たちが入学する時はコレが桜になってるんですね」というような反応を何度も頂戴したのを覚えています。

ただ、いずれにせよ、やはり主役は子どもたち。上記ふたつの意図とは関係なく、採用の基準は、やはり子どもたちの「声」です。

――このCMは、1978年から十数年にわたって放送されてきたということもあり、昨年の復活は本当に多くの人が懐かしく感じたと思います。実際には、どのような反響が寄せられましたか?

担当:「懐かしさ」という観点でCMへの反応を振り返った時、いちばん多くて、しかもいちばん驚いたのは、「25年間やっていなかった? 嘘でしょ? 私、何年か前に観ましたよ」というものでした。

「ピッカピカの一年生♪」のメロディーだけは、ジングルとして使い続けていたことが大きかったんだと思います。それだけで、多くの方々は僅かな映像の記憶をもとにして、ご自分の脳内でオリジナルのCMを再構築されていたようなんです。「昔観た、あの回がよかったなぁ」と言いながら、実際には放映したことのないビジュアル展開をうれしそうにお話しになる方々が本当に多かった。“もし自分の子どもが出ていたら……”みたいな気持ちで、脳内プロデュースされていたのかもしれません(笑)。

でも、「『愛されるモノを創る』ということは、こういうことを言うのだろうな」とも改めて思いました。つまり「みんなが自分も参加したい、その一部としてつながっていたい」という気持ちが持てるものを創るということです。オリジナルを創られた先輩方の偉大さが、よくわかりました。

――最近は、SNSでの公開も行っていますが、昔のテレビCMのみの時代と比べて、どのような違いを感じますか?

担当者:昔ならば、「よかった」とか「感動しました」とかの、あくまで感想が主流だった気がします。少なくとも送り手の耳に入るのは、それのみと言ってもよいかと思います。でも昨年、いちばん驚いたのは、イラストやアニメーション、または自らが出演(!)して、オリジナルを真似た動画をアップされた方が多くいらっしゃったということです。

前のご質問にもつながりますが、「楽しいものには、自分も加わりたい」という気持ちこそが、こちらにとっても大きな喜びとなり、そしてCMの効果が大きく広がっていく要因になると思います。むしろ私自身が、そのことを長く忘れていたことが恥ずかしい。というのも、アンケートとかモニタリングの「反応」よりも「意見」や「結果」ばかりを気にしていたからです。

昔、面白いCMとかがあると、真似して皆を笑わせる子がクラスにいませんでしたか? CMに流れるBGMを、替え歌も交えながら歌う子どもが少なからずいたと思います。そう、今のようにSNSで発信する機会は確かにありませんでした。けれど昔から「面白いものには、誰もが自分のいる世界で自分なりに参加していた」んです。前回のSNSでの反応は、その事を個人的に思い出させてくれたという点が大きかった。

――最後に「今年は大変なことが多かったけれど…」担当者として、このCMに込めた想いを教えてください。

担当者:卒園式・入学式さえままならなかったのが2020年でした。今回CMに登場してくれた子どもたちが小学校に入る来春も、コロナは収まっていないでしょう。どういう状況かは、想像もつきません。本当に大変な時期に直面されていると思います。

ただ、今年は「超」が付くほど特別ですが、ご質問の「大変な~」というセンテンスに関していえば、これから彼らが成長していく道こそ、必ず「大変な」ことが起きます。それだけは経験上まちがいありません。私は60年近く生きていますが、それでも毎日が大変です(情けないことですが……笑)。

でも少し先の未来に、「あの時は大変だったよね」と“自分を語る時のネタ”に使えるような状況になっていれば、どうでしょう? それはそれで「おいしい経験」にできることも、これまた経験上まちがいありません。

最初にいただいたご質問ともつながるかもしれませんが、子どもたちには「彼らの年齢だからこそ持てる勇気」があります。言葉で考えた理屈ではなく、もともと生き物として備わっている「未来への希望」のようなものです。それがベースにあるからこそ、子どもたちの「大変さに負けないパワー」はとても大きく、しかも前向きな力が持てるのだとも思います。

今回の子どもたちが将来おとなになったとき、「自分が小学一年生に入学する時は、えらく世の中が大変でさぁ~」と笑って話せるように……ガンバレ! ピッカピカの新一年生!!

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