“あるある”部屋からババンギダ選手起用まで。ウイイレ好きのスタッフだからこそ作れた、共感型キャンペーン「#ウイイレまたやろーぜ」
Case:KONAMI 「ウイニングイレブン」20周年記念キャンペーン
話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。
今回は、国民的人気サッカーゲーム「ウイニングイレブン」(以下、ウイイレ)の20周年記念キャンペーンについて取り上げます。キャンペーン開始の経緯から、あるあるが詰まった「ウイイレ部屋」、ババンギダ選手起用の裏話、そしてウイイレの今後についてまで、株式会社コナミデジタルエンタテインメント プロモーション企画本部の斎藤亘さん、同社 第3制作本部の緑川一徳さん、株式会社読売広告社 営業局の日髙茂樹さん、同社 統合プロモーション局の皆川壮一郎さんにお話を伺いました。
ウイイレ好きのスタッフのみが集結。ユーザー視点で生まれた、ファンの心に響くキャンペーン。
—ウイイレ20周年記念キャンペーン実施の経緯を教えて頂けますか。
斎藤:もともと社内のミーティングでもよくウイイレの思い出話で盛り上がることがあり、いつかウイイレの“あるある”を盛り込んだキャンペーンが出来たら面白いのではと思っていました。僕も含め、学生時代にウイイレに熱中していた30代が、今は仕事や家族のことで忙しく、なかなかゲームをする機会がなくなってしまっているんですよね。そんなユーザーに対して、なんとか最新のウイイレの魅力や無料版「ウイニングイレブンmyClub」についても知ってもらいたいと思い、読売広告社さんにご相談したのが今回のキャンペーンの始まりです。
—以前ウイイレにハマっていて今は離れてしまっている方が、今回のターゲットということですね。
斎藤:はい、学生時代にウイイレにハマっていた30代の男性です。実際に周りを見ても、結婚したり、子供が生まれたりで、休みの日でもなかなかゲームで遊べないという人が結構多いんですよね。そこで今回の企画の軸は、ターゲットが「気軽にウイイレで遊べる場所」を作るということになりました。
—「ウイイレ部屋」のアイディアはどのように生まれたのですか?
皆川:「気軽にウイイレで遊べる場所」ということで、最初はターゲットが住めるシェアハウスを作るという案が出ました。結局その案は大掛かりすぎて難しいということになったのですが、その後も「部屋」という言葉だけが頭の中に残っていました。麻雀で言うと、家で麻雀をやる人が少ない割に今でも根強く雀荘が残っているように、ウイイレも家とは別にウイイレで遊ぶ用の部屋があってもいいのでは、と思ったんです。そこから最終的に「ウイイレ部屋」という案に辿り着きました。
斎藤:重要なのは、いかにターゲットの心に訴えかけて当時の楽しい気持ちを思い出してもらうかでした。更にウイイレの“あるある”を絡めることで、ターゲットに当時の気持ちを思い出してもらいやすくなり、SNSなどでも拡散されていくことをイメージしていました。
皆川:そこで、みんなでワイワイ遊んだ気持ちや空間、雰囲気を全部パッキングした部屋を作り、イベントや動画という形にしていくことになったんです。
<ウイニングイレブンプレイヤーズハウスで実際に再現された「ウイイレ部屋」>
—部屋の中には、沢山の“あるある”が詰め込まれていると思いますが、何かアンケートなどを取られて参考にしたのですか?
皆川:僕ら自身がまさにターゲットだったので、特に調査などはしませんでした。みんなから自然と“あるある”が出てきたという感じです。特に今回は少しでもターゲットの心に訴えかけたいという想いがあったので、スタッフについてもウイイレ好きの人だけを集めました。特に監督はウイイレが大好きで、動画内でゲームをしていた人たちの名前も実は監督の実際の友人の名前なんです。監督を中心に、KONAMIさんや僕ら自身の中にある思い出を積み上げていって出来上がったのが「ウイイレ部屋」ですね。
斎藤:壁にかかっているユニフォームはバイエルンやミランのものなのですが、これもサッカー好きだからこそ喜びそうなものを選びました。僕もそうだったのですが、当時ウイイレで海外の選手の名前を覚えた方が結構いらっしゃるんですよね。ユーザー視点で小道具を選んだことで、昔を思い出させるいい部屋が出来たと感じています。
—イベントでは、「ウイイレガールズ」と対戦もできるようになっていたんですよね。
斎藤:はい、ウイイレの一番の魅力は、今も昔も変わらず、誰かと対戦することだと考えています。ウイイレの良さを思い出してもらうには、部屋だけでなく誰かと対戦できる場面を用意したいと思い、彼女たちに来てもらいました。
—動画の中でも、友達同士が対戦してかなり盛り上がっていましたよね。動画にもかなりこだわりが詰まっているように感じられました。
斎藤:動画内に盛り込んだ“あるある”はかなりこだわって考えましたね。“あるある”を通じて、昔を思い出したり、面識のないユーザーさん同士でも仲間意識のようなものを感じることができるのだと思います。動画の中は15個、イベントの壁画には100個ほどの“あるある”が描かれているのですが、“あるある”の候補が多すぎて絞るのが大変でした。みんな個人的にウイイレへの思い入れが強すぎるんだと思います(笑)。
<採用されたウイイレ“あるある”(一部抜粋)>
<動画「#ウイイレまたやろーぜ」のワンシーン>
—特に動画はSNSでもかなり話題になりましたよね。
斎藤:Twitterで沢山コメントをいただいています。「またみんなでウイイレしたくなった!」「昔を思い出して涙が出てきた。」という声は非常に多いですね。もともとユーザーさんのエモーショナルな部分に訴えかけるというのが一番の目的だったので、目に見える形でそういった声を知れるのは嬉しい限りです。
チームが更に一体に。ババンギダ選手を起用したTwitterキャンペーンによる予想外の効果。
—イベントと動画の他に、Twitterキャンペーンも実施されていますが、このキャンペーンの中心的存在として起用されたババンギダ選手はどのように選ばれたのですか?
斎藤:ババンギダ選手は何故かこの世代の心に残っているんですよね。足がものすごく早い割に、シュートがあまり決まらないことで有名なのですが、そこがまた愛らしいというか(笑)。実は今回の企画はスケジュールがものすごくタイトで、制作チームにダメ元で依頼をしたのですが、ババンギダ選手を使ったキャンペーンだと伝えた途端、快く受け入れてくれました。制作チームの中でも愛されている選手なんですよね。
緑川: その時期はちょうどリリースを控えており、忙しい時期ではあったのですが、ババンギダ選手と聞いたらやるしかないと思いました(笑)。チーム全体が盛り上がったくらいです。
—ババンギダ選手のパワーはすごいですね!スケジュールはそんなにタイトだったんですか?
日髙:かなりタイトでしたね。昨年12月にイベントや動画も含め、今回のキャンペーンの最初のご提案をしたのですが、方向性が決まったのが1月と、実質準備期間は2ヶ月弱でした。タイトなスケジュールではあったものの、ババンギダ選手の起用がみんなのモチベーションを上げた気がしています。通常、選手の搭載には、半年ほどかかるのですが、今回に関してはKONAMIさんが2ヶ月弱ほどで対応してくださいました。
緑川:選手をゲームに搭載するには、顔の作成、選手の動き、能力パラメーターなどなど、制作と搭載には通常3ヶ月から半年かかる所、ババンギダ選手となると制作チームも一致団結し、突貫で搭載することができました。この結果は奇跡に近いと思っており、対応した担当やセクションには頭があがりません。
斎藤:ババンギダ選手でテンションが上がったのは確かですね。起用の話が出た時は、正直今どこにいるかも分からない状況だったので、順調に契約できた時はほっとしました。少し余談になりますが、僕自身これまでウイイレでババンギダ選手に愛着を持っていたものの、本人の顔をしっかり見たのはゲームのデモが上がってゲーム内で見たのが初めてでした(笑)。今回のキャンペーンでババンギダ選手の顔を初めて知ったという方もきっと多いと思います。
—予想と比べて、Twitterキャンペーンの反響はいかがでしたか?
斎藤:ツイート数については、キャンペーン開始時と比べると落ち着いてきてはいるものの、予想以上の結果が出ています。特に今回のTwitterキャンペーンは弊社の海外支局でも注目されていて、「なんでうちにはこのキャンペーンの話がなかったの?」などクレームが来ているくらいです!実際、海外でもババンギダ選手を起用したキャンペーンを実施することが決まりました。
皆川:動画がバズったということだけで終わってしまうキャンペーンが多いかと思いますが、今回は、イベント、動画、Twitterキャンペーンがうまく相乗効果を発揮しいい流れができたと手応えを感じています。
<イベントのスポーツ紙面風フォトパネル>
変わっていくのは技術の進歩。対戦する楽しさは、これから更に大切に。
—最後に、この20年間を通して、変わらないこと・変わったこと・そしてみなさんにとって今後ウイイレがどのような存在になってほしいか、教えていただけますか。
斎藤:「みんなでつながって楽しむ」という魅力はずっと変わらないことだと思います。変わったのは、技術面の進歩ですね。より臨場感が出たり、選手がリアルになることで、ゴールを決めた時の快感やミスした時の悔しさなどは増していると思います。また今後という点では、やはりつながりを大切にしていきたいですね。無料版「ウイニングイレブンmyClub」が後押しとなって、ウイイレがきっかけで疎遠になってしまっている友達と久しぶりに連絡を取ったり、友達だけでなく、子供や奥さんともウイイレで遊んでもらえるようになったら嬉しいですね。また僕たちゲームを作る側とユーザーさんとのつながりも大切にし、ユーザーさんからの声を生かしてゲームも進化させていきたいと思っています。
緑川:対戦の形がオンラインになっていくなどはあるかもしれませんが、やはり人とのつながりが魅力という点は変わらないと思います。対戦についても、より多くの方に遊んでいただけるよう日々技術面を磨いています。実際、今年昨年と2年連続で欧州最大級のゲームショー・Gamescomの「ベストスポーツゲーム・アワード」を受賞しており、我々もいいものを作っていると感じています。あとはやはりより幅広いユーザーさんにウイイレの楽しさを知ってもらい、実際に遊んでもらいたいですね。以前はそれこそサッカー好きの人でないとプレイが難しかったりしましたが、今はゴール一つ決めるのもだいぶ操作しやすくなりました。今後は子供から女性を含めた大人まで、より幅広い層に遊んでいただけるといいですね。
株式会社コナミデジタルエンタテインメント 広報宣伝部 斎藤亘さん(右)
株式会社読売広告社 営業局 日髙茂樹さん(左)
株式会社読売広告社 統合プロモーション局 皆川壮一郎さん(中央)
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