クラッシュしたスマホ画面を見せたら無料! ケンタッキーの一日限定キャンペーン舞台裏に迫る

Case: ケンタッキーフライドチキン「クラッシャーズ」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回はケンタッキーフライドチキンが、3月1日に恵比寿駅前店で実施したキャンペーンを取り上げます。これは2008年より発売している新感覚のスイーツ「クラッシャーズ」を冬の時期にも手に取ってもらえるよう、そして春の新フレーバー導入前の話題化を狙った、割れたスマホの画面を見せると「クラッシャーズ」が無料でもらえるというキャンペーンでした。

この意外性のある企画がいかにして実現したか、日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社 マーケティング部 アシスタントマネージャー 野澤順平さん(文中・N)、株式会社バーグハンバーグバーグ オモコロ編集長 原健一郎(原宿)さん(文中・H)、株式会社バーグハンバーグバーグ WEBディレクター 牧野裕樹さん(文中・M)に伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)
面白いアイデアを持ってきてくれるだろうという期待があった

—この企画が立ち上がった経緯は。

N:短い時間の中でコンテンツを作らないといけなくて、はじめは記事広告を書いてもらいたいと思っていました。ただ寒い時期にこの冷たい商品ということで、冷たい商品の話をしてもまずは売れないだろうなと。「クラッシャーズ」という商品名自体もまだまだ知られていないという現状があって、寒い時期でも多くのお客様に知ってもらえるような企画がないかということでお声掛けをしました。

[3月下旬より「いちご&バナナ」「抹茶ラテ」の新フレーバーも発売中]

—最初から、この「割れているスマホを持っていくとタダ」という方向性だったのでしょうか?

H:そうですね、この一本でやりたいなとは思っていました。

M:ネタ出しをファミレスでやっていて、原がスマホを何気なく出した時に「割れてる……クラッシュ……クラッシャーズ!!」と気づいたのがきっかけです。

H:そうなんです。僕自身、携帯の画面がビビるぐらい割れてるんですよ(割れているスマホを手に)。

—確かに見事に割れてますね…

H:画面は見にくいし、液晶の欠片がどんどん剥がれてくるしで、日々凄く嫌な気持ちで生きているんですけど、そういう不運に見舞われた人に小さなハッピーが起こって、それがさらに商品訴求に繋がれば一番良いなと思いました。

—提案を受けた最初の印象はいかがでしたか?

N:前提として、バーグハンバーグバーグさんは面白いアイデアを持ってきてくれるだろうという期待があったんですよ。そこで社内でどの様に進めるかをずっと考えていました。バーグハンバーグバーグさんは遠慮しながら冗談をするのではなく、面白くやりきるという実績もお持ちですし、実際にそういうご企画になっているので。

[「バーグハンバーグバーグのドラゴン社員ブログ」の一コマ]

—「バーグハンバーグバーグのドラゴン社員ブログ」では「プレゼンを通しやすくする交渉術」としてこの企画の提案の経緯も掲載されていて、「クラッシュする」ウィルス特設サイト企画や、蔵の前で「ッシャー」と叫ぶ企画、カーネル立像をクラッシュする企画なども載っていますが、これらも実際に提案があったのでしょうか。

N:はい、実はその蔵の前っていうのが社内受けも良くて(笑)。

H:お、じゃあ次はそれで行きましょう。ぜんぜん意味わからないサイトになると思いますけど。

N:さすがにカーネル立像を傷つける企画はNGですけどね。

実際にハンマーを設置。その場で端末を壊す方も…

—面白くするにあたり、工夫された点は何でしょうか。

H:やっぱりハンマーを店内に置いて「その場で割れるよ」というところですね。多少嫌がる人もいるかなと思ったのですが、イベントに参加した時って、その場で写真を撮りたくなるような工夫をしておいた方が皆さん拡散してくれるので、ハンマーを置いた方がいいかなと。

—実際ハンマーで画面を割る方も。

H:思ったより多かったですね。

M:もう使わないお古の端末を持ってきて、それを実際に壊すという人が20人くらいいました。

N:このキャンペーン自体は、携帯の画面がクラッシュしている人はいっぱいいるよね、そういう人達が中心となって話題にしてくれたらいいね、というところが大前提で、自分で壊す人は一人くらいかなと思っていました。ただハンマーがあることで視覚的にも「ホントにやってるんだ」と興味を持ってもらえたのかなと思います。

M:僕もハンマーを置く案は通らないのかもなと思ったのですが、スッと社内を通して頂いて。

N:(社内を通す時は)割れたスマホを持っている人っていっぱいいますよね、その人達ががっかりしている気持ちでこういう話題に触れると少し得した気分になって拡散してくれるでしょう、という話がベースにあって、冗談っぽく「ハンマーも置きますけどいいですか」と話をして。その後実際にクリエイティブが出来てきてハンマーを置くことが現実味を帯びてきた時に、さすがに社内も「ホントに置くんだ」とザワつきはじめましたけどね(笑)。

—恵比寿駅前店で、一日限定にした理由はありますか。

N:お客様一人一人にきちんと対応出来る範囲、我々の目がしっかり届く範囲でやろうということです。あと、この店舗は店長が非常に優秀なんです。

M:事前に店舗に行ったら「ハンマーをこの辺に置きましょう」「ここのレジを専用にしましょう」「ここにもポスターを置いた方がいいんじゃないですかね」と、色々考えて頂いて。「最大まで食材発注しといたんで!」って、めちゃくちゃ頼りがいあって、我々も心強かったです。軍の殿(しんがり)を任せるならこういう人だなと思いました。

—463人の方が来たという、当日の様子はいかがでしたか。

M:開始時刻の12時になった瞬間にすでに列が出来ていて。しかもその日、雨が降っていて寒かったのにこんなに来てくれたということが嬉しかったです。「やって良かった!」って思いましたね。

N:当日はスマホ片手に友達と楽しみながら来てもらえたことはとても良かったですね。

H:YouTuberやニコ生主のような方もいて、その場で動画を撮ってすぐに自分のアカウントでアップして、さらにそれを見て広がる、ということもあったようです。

—今回の企画を改めて振り返ってみて、印象に残っている点は。

H:割れている携帯を持っている人って一人二人周りにいると思うのですが、「お前、画面割れてるんだからこのイベント行きなよ!」「これってお前のためのイベントじゃない?」という風にコミュニケーションが生まれるきっかけにもなって、かつ商品名も覚えてもらえるということが出来て良かったです。

N:企画をやる時ってどうしても自社目線で考えてしまうのですが、あまり我々が口を挟まなければ、それはそれで良いものが出来てくるだろうなということはずっと思っていました。自社の商品だとどうしてもリスク面を考えたり、商品開発への思いみたいなものをオリエンし過ぎちゃって、結果面白くなくなるってこともあると思うんです。今回は、ある程度自由にやっていただく中で良い企画が出来たのかなと思います。

H:僕らもどこかで「このアイデアは出来なくてもしょうがない、企業として見たらNGでもしょうがないかも」と思うことがあったりしますが、今回は「出来ないかな?」と思ったことが実現出来たので、あきらめずに提案してみるもんだな!といういい経験になりましたね。

N:心配していた「モノを壊して何が楽しいんだ」というような否定的な意見もあまりなくて。

M:僕らの企画はいつもProduced by バーグハンバーグバーグと書いてあるので、「あ、またお前らか」と思って頂けることもあります(笑)。

N: こういった事例が成功することで、(今後)社内で話を通したり実現する上で大きかったかなと思います。時代によって笑いのポイントとかも変わっていくものですが、今回のをきっかけにこういう冗談のような企画を今後も考えていきたいですね。

日本ケンタッキー・フライド・チキン株式会社
マーケティング部
アシスタントマネージャー
野澤 順平さん(右)
株式会社バーグハンバーグバーグ
オモコロ編集長
原 健一郎(原宿)さん(左)
株式会社バーグハンバーグバーグ
WEBディレクター
牧野 裕樹さん(中)

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