客単価1万円以上だとグルメ情報サイトで集まらない!完全予約制の新店舗、PRに頼ってオープン時の予約客を獲得

Case: 完全予約制の新店舗、オープンから向こう1カ月の予約をPRの力で集めたビアジェのPR活動

広報活動をするにしても、プレスリリース配信するネタが集まりやすい業界と集まりにくい業界とがあります。前者の例としては、メーカーやWebサービス運営会社などが挙げられますが、飲食業界が当てはまるのは後者。大規模チェーンを展開するような大企業を除くと、飲食業では広報担当者を置いていない企業が多く、PR関連の取り組みにはあまり積極的でないようです。

そんな中で、今年の6月上旬、次のようなプレスリリースが配信され、注目を集めました。6kgほどの大きな塊肉が焼き上がる時間に合わせてお客様に来店してもらう、完全予約制のステーキ店「炉窯ステーキ煉瓦」がオープン――。さまざまな媒体に記事として取り上げられ、同店には予約電話が殺到。オープン時には、向こう1カ月の予約がほとんど埋まるほどの反響があったそうです。

こちらの情報を発信したのは、同店を運営する株式会社ビアジェ。同社がこのようなプレスリリースを発信したのには、どのような理由があったのでしょうか。

同社ゼネラルマネージャーの佐々木紀人氏に、プレスリリース配信の狙い、飲食業と広報活動の相性について、詳しくお話を伺いました。

ニュース価値がある情報を見つけることは、飲食業では難しい?

――「炉窯ステーキ煉瓦」オープンのプレスリリースが注目を集めました。一方で、飲食業の企業がプレスリリースとして情報発信することは、あまりないように感じます。

株式会社ビアジェ ゼネラルマネージャー 佐々木 紀人 氏

そもそも飲食業では、奇抜な企画を立てて外部に情報発信して目立つことよりも、当たり前のことを当たり前にできるようにすることが大切です。ですからどの店舗にも、何か目新しいことを企画・広報する余力が、ほとんどありません。大規模なチェーンを展開する大企業やホテルなら、季節の新メニューを発表することなども、できるかもしれませんが。

ただ私自身、そうした新メニューを紹介するプレスリリースを見ても、「メディア関係者に取り上げてもらえる可能性は、低いのではないか」と感じることがほとんどでした。同業界の私がそう感じてしまうくらいですから、メディア関係者に「ニュースとして取り上げる価値がある」と判断してもらえる情報を発信するのは、飲食業の企業にとって難しいことなんです。

取り上げてもらえる可能性が低かったら、プレスリリースを配信する優先度は自然と下がってしまいますよね。ですから、当社でも広報担当者を置いていません。プレスリリースを配信したのも、「炉窯ステーキ煉瓦」のオープンを伝えるものが初めてのことでした。

プレスリリースが続々と記事に。オープン当日から1カ月先まで予約で埋まる

――そのような事情がある中でも、「プレスリリースを配信してみよう」と思われた背景を伺えないでしょうか。

「炉窯ステーキ煉瓦」は完全予約制にしています。しかも、肉が焼き上がる時間を指定して、お客様に来店いただくわけです。

普通のお店であれば、お客様がいらっしゃって、注文が入ってから料理を用意します。つまり、需要があってから供給する形です。ところが「炉窯ステーキ煉瓦」では、こちらが塊肉を先に用意して、お客様を招きます。需要よりも供給が先。予約が少ししか集まらないと、焼いた塊肉が無駄になってしまうわけです。

そのような日本で過去に例がないタイプのお店を開くわけですから、オープン前は特に「本当にお客様が来てくださるのか」という不安が強く、「とにかくできるだけのことはやってみよう」と思いました。

これまで興味は持っていても、利用する踏ん切りが付かなかったプレスリリースの配信を試してみたのも、それが理由です。

――プレスリリースを配信してみた成果はどうでしたか。

店舗のオープンが6月17日。プレスリリースを配信したのは6月12日でした。

実は配信日の時点で、ほとんど予約は入っていませんでした。焦っていましたね。それが配信日の翌日ごろからニュースサイトなどで記事として取り上げられ、その後、途端に予約の電話が入るようになりました。オープン前日には予約の電話が鳴り止まないほど。オープン当日から向こう1カ月分くらいの予約が、あっという間に埋まってくれました。

飲食業にとって、新店舗のオープン初日から予約で埋まることは、ほとんどありません。海外などで有名な店が、日本に初出店するときくらいでしょう。「店側が肉を焼き上げる時間に合わせて来店する」という前例のない形態の店舗でしたから、怖いもの見たさで予約してくれたのかもしれませんね。本当にありがたいことだと思っています。

集客はPR頼み。レセプションは即効性なく、グルメ情報サイトも計算できなかった

――プレスリリース配信以外に、どのような集客手段を検討されたのでしょうか。

他の集客手段としては、オープン前に2日間のレセプションを開きました。そこに私が連絡先を知っていたメディア関係者を中心に招待したんです。

レセプションといってもパーティー形式ではなく、オープン時と同じスタイルで席に着いていただいて、通常のメニューをお試しいただきました。「これは明らかに、これまでになかったスタイルの飲食店だ」と、興味を持ってくれるメディア関係者を1人でも多く増やしたかったんです。

ただ、招いたメディア関係者は、テレビ局の関係者や雑誌などの紙媒体の編集者ばかり。テレビや雑誌で告知してもらうには、日数が足りませんでした。記事として取り上げていただいて予約が集まったのは、ほとんどがプレスリリースを配信した成果だったはずです。

また、グルメ情報サイトにも広告出稿しようと考えました。ただ、グルメ情報サイトは媒体数が非常に増えていまして、各サイトが独自のポジショニングで「女性向け」「お得な情報を求めている人向け」といった具合に、セグメントが分かれています。昔は大手の情報サイトに広告を出しておけば、外食1回当たりの予算を2000円~2万円くらいで考えている大半のお客様にアプローチできたのですが、最近はそうもいきません。適切な媒体を選別して、広告を打つ必要があったわけです。

そう考えると、「炉窯ステーキ煉瓦」のメニューは6800円。それにワインなどのドリンク代が乗ると、予算は1万円を超えてきます。それくらいの予算でも問題なく払える層が愛用しているグルメ情報サイトはほとんどなく、広告を出しても確実に人を集められる自信がなかったんです。

グルメ情報雑誌にまで目を向ければ、1万円以上の予算が必要なお店に興味を持つ読者を抱えている雑誌はあります。けれど、そうした雑誌に広告を打つとなると、何十万円、時には100万円以上の広告費がかかります。飲食店としては、気軽に出せる金額ではないんですよね。

本当に、プレスリリース配信で集客できなかったらどうなっていたか。想像するだけでも怖くなるくらいですよね(笑)。

『プレスリリースに中身が伴わないことを書いてはいけない』
ビアジェの事例の続きは、こちらからどうぞ!

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