第74回日経広告賞を読み解くーー新聞広告が描く“歴史・環境・未来”
新聞広告は、デジタル時代においてもなお進化を続けています。日本経済新聞社が主催する「第74回日経広告賞」では、企業の歴史を紡ぐビジュアル、環境への想いを語るコピー、そして未来を見据えた挑戦が評価されました。新聞がブランドの理念や社会的価値を深く語る広告メディアとして生き続けていることは間違いありません。
今回、インフラ部門最優秀賞を受賞したのは、日本郵船株式会社。制作を手掛けたプルークスによると、同社の歴史を象徴する27隻の船舶を史実資料をもとに描き下ろし、新聞の大判紙面を活かしたダイナミックな構成でブランドストーリーを表現したといいます。

イラストとテキストを組み合わせ、企業の歩みや挑戦を視覚的に伝える手法を採用。新聞広告ならではのスケール感を最大限に引き出しました。日本郵船歴史博物館の展示から着想を得たデザインは、時間とスケールを超えた企業の挑戦を象徴し、視覚と物語性の両面からブランド理解をうながします。

環境・サステナビリティー部門優秀賞に輝いたエフピコは、3回連続掲載のシリーズ広告で「私は~」という1人称コピーを採用。「私はあまり知られていませんが、名前は、底にあります。」と始まるメッセージは、リサイクル容器の存在と循環型社会への貢献を語りかけるように伝えています。
続く「私は生まれ変わって、同じお店に帰ってきます。」や「私の未来の話をしましょう。」というコピーは、環境配慮をシンプルかつ情緒的に訴求し、持続可能な社会への企業姿勢を鮮明にしました。新聞広告の連続掲載によるストーリー性は、読者との心理的距離を縮め、ブランドの理念を深く浸透させる効果を生みました。

さらに、今回の受賞作品には、企業の多様な挑戦が表れています。インダストリアル部門最優秀賞を受賞した「日本の『道』を強くする。」(ニチレキグループ)や「月へ行く。」(鹿島建設/アセット部門優秀賞)は、BtoB領域で未来志向のメッセージを打ち出しました。


一方、エンターテインメント部門で優秀賞を受賞したサンリオエンターテイメントの「#大分から世界へHELLO」は地域から世界へ広がるブランド価値を表現。グローバルな視点で企業理念を表現したヤクルト「Millions of hands」が、日経・FTグローバル特別賞に輝きました。

また、電子版広告を対象とした第14回日経電子版広告賞のビジネス部門では、パナソニック エナジーの「Goodbye, old energy.」が動画を活用し、電子版広告ならではの没入感を提供したことを評価され、優秀賞に選ばれています。

この事例は、新聞広告が「理念や歴史を語る場」として深化する一方、デジタル広告が「体験を創出する場」として進化していることを示しており、両者がその役割において補完し合う時代を象徴するようです。
そして、今回の受賞作品群から見えるのは、新聞広告が、企業・ブランドの歴史や理念を深く語るメディアとして再評価されているということ。環境・歴史・地域性といった社会性を織り込みながら、企業の価値を物語る広告は、今後も新聞というフォーマットで存在感を放ち続けるでしょう。デジタル時代においても、新聞広告は「読む広告」から「感じる広告」へと進化し、企業と社会をつなぐ重要なコミュニケーション手段であり続けます。
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