移民児童の命を救うレシート 韓国の医療アクセスソリューション
海外旅行中に体調を崩す、病気になる……言語や生活習慣、医療システムの違いから不安にさいなまれた経験があるという人は少なくないでしょう。異国で乳幼児を育てているならば、医療や保健にアクセスすることにさまざまな障壁があることは言うまでもありません。
韓国の児童支援団体CHOROGUSANの発表によると、韓国では現在、人口の数パーセントが移民背景を持つといい、多民族・多文化社会への転換期を迎えているそうです。また、同地に居住する移民家庭の子どもはおよそ20万人。その多くはアジア諸国出身のようです。
同団体が2024年に行ったという支援は、約103億ウォンに上るといいます。支援対象となった子どもの数は、9,033人。その親に対して、予防接種・医療ケア・妊娠や出産の支援・医療通訳サービスを提供しました。
すべての子どもたちが医療・保健にアクセスできるようにしようと、2025年7月11日(金)から「命を救うレシート/The Life-Saving Receipt」キャンペーンが行われています。
このキャンペーンを担当したという韓国の広告クリエイティブエージェンシーDminusoneの担当者によると、韓国政府は12歳までの子どもに無料で必須となる予防接種を提供していますが、韓国人の子どもたちと移民家族の子どもたちの間には、接種率に大きな格差があるそうです。
前者の96.4%が1年次の予防接種を完了しているのに対し、後者のうち、実際に接種を受けているのはわずか55.2%。これは、言語の壁や情報不足などの不均衡から生じたものだといいます。
この取り組みでは、移民家族が頻繁に利用する輸入食材を扱うスーパーマーケットや小売店に着目。これらの店舗が単なる買い物の場ではなく、コミュニティーの交流拠点として機能していることに注目しました。
おむつやミルク、ベビーローションなどの育児用品を購入した際に、特別なレシートが印刷されるというこのキャンペーン。レシートには「赤ちゃんにもう1つ必要なものーー必須予防接種と医療ケア」というメッセージが、対象となる移民背景家族の母語で記載されます。そして、印字されたQRコードを通じて、CHOROGUSANが提供する各種支援サービスへのアクセスをうながします。
レシートに印字される言語は、英語・中国語・タイ語・ベトナム語・アラビア語の5つ。キャンペーンは全国規模に拡大しており、40の地域にあるCHOROGUSANの事務所、68の主要パートナー団体、参加店舗、公共機関など約1,000の機関にガイドとポスターを配布して、その活動を知らせます。
さらに、CHOROGUSANのランディングサイトでは、ネパール語・ラオス語・ロシア語・モンゴル語・ベトナム語・英語・ウズベク語・日本語・中国語・カンボジア語・タイ語・フィリピン語の計12言語に対応しています。
また、ベビー用品ブランド(Babybonjuk、Bebesup)、韓国スーパーマーケット連合、仁川広域市などがキャンペーンを支援しているそうです。
情報から断絶されてしまいがちな移民家族が日常的に利用する場所で、必要な情報を提供するというアプローチを行う画期的なプロモーション。育児用品を買い求めるときに、子どものことを考えない親が少ないことに着目して、支援のきっかけを目指します。
ターゲットに向けて、どうやって情報を届けるか……これはまさに広告・PRに欠かせないアイデア、視点でしょう。この事例には、効率よく、効果的に情報を届けるための構造に見習う点が多くありそうです。1枚のレシートをきっかけに、児童の健康を守ろうと行われる秀逸なキャンペーンを紹介しました。
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