【速報】カンヌライオンズ2025「Health」部門グランプリ受賞作品まとめ

2025年6月にフランス・カンヌで開催されている「Cannes Lions 2024」。健康や医療を中心とした社会課題の解決に貢献した作品に贈られる「Health」部門において、個々人の健康の向上を表現した作品を評価する「Health & Wellness Lions」、健康に関する社会課題の解決を図った作品を評価する「Lions Health Grand Prix for Good」、規制が厳しい医療・医薬品業界の中で卓越したクリエイティビティを発揮した作品を評価する「Pharma Lions」の3つの賞におけるグランプリをご紹介します。

Health & Wellness Lions

Vaseline Verified(Unilever)

日本でもさまざまな用途で愛用されているユニリーバの軟膏・ワセリン。軟膏剤としてはもちろんのこと、保湿剤や潤滑剤としても知られているワセリンの使い道はまさに無限大。

そんな汎用性の高い商品だからこそ多くのユーザーがSNSでオリジナルの使い方を紹介しており、その一部は実際に有効ではある一方で一部は本来ユニリーバが意図していない危険な用途であるともされています。この事実に着目し、これ以上ないくらい“本気で”SNS上のUGC(ユーザー生成コンテンツ)と向き合った事例が、見事グランプリを受賞しました。

施策の内容としては、インターネット上に存在する350万もの“ワセリンの意外な使い道を紹介する動画”をすべてユニリーバが確認し、それらの有効性を実際に研究所で検証するというシンプルな内容。実際に有効であることが認められた使い道を紹介していたユーザーにはユニリーバから簡易的なトロフィーが届き、彼ら1人1人を公式アンバサダーとして任命したのです。

メーカーお墨付きの称号を得たユーザーたちはこの意外な展開に驚きを隠しきれず、自らワセリンの宣伝を行い始め次々とUGCの数は増えていき、結果的にSNS上で6300万ものエンゲージメントと700万ものオーガニックリーチを獲得。売上も43%伸長し、ユーザーからのポジティブな声も87%を達成しました。

UGCを資産として捉えしっかりと活用することでブランド名の波及を爆発的にブーストさせつつ、メーカーとして正しい情報を選別するという責任感あふれる姿勢が評価されたのでしょう。

それにしても350万もの既存のUGCすべてをチェックするという途方もない作業と向き合えたこと自体がすごいことかもしれませんね。

Lions Health Grand Prix for Good

The Best Place in the World to Have Herpes(New Zealand Herpes Foundation)

キスや性交渉をはじめとした直接接触や、ウイルスが付着したタオル、食器、コップなどの共有による間接接触をきっかけに感染する感染症・ヘルペス。日本国内においても1,000万人が感染経験があるという推計もされており、世界的にも身近な感染症の1つであるにも関わらず前述の感染経路が原因で世間ではこれまで多くの議論がなされてきませんでした。

この偏見・スティグマと真正面から向き合い、ヘルペスについてもっとオープンに議論して理解を深めることを目的としたニュージーランドのNPO・New Zealand Herpes Foundationが実施した啓蒙施策が見事グランプリを受賞しました。

“The Best Place in the World to Have Herpes(世界で1番ヘルペスに罹っても安心できる場所)”という刺激的なタイトルがつけられた施策の内容自体は非常にシンプルでわかりやすいもの。2004年から2011年にかけて、7年もの間ニュージーランドのラグビー代表チームのヘッドコーチを務めたGraham Henry氏を中心に、ヘルペスに関するさまざまな学習コンテンツを連続的に公開し、国際的な評価指標を通じて国民のヘルペスに関する理解度をひたすらモニタリングしたのです。

そして、公開から8週間経ったタイミングでついに世界1位を獲得し、見事ニュージーランドが“世界で最もヘルペスに関して寛容で知識的な国”として認定されたのです。

エンタメ性あふれる学習コンテンツにしたことで総視聴時間は10,776時間、100を超えるメディア露出と2,240万ものインプレッション(ニュージーランドの人口はわずか500万人)を獲得。最終的に学習コンテンツに触れた人の86%は、ヘルペスに関して前向きな気持ちで議論することができるようになったと回答しました。

偏見が原因で触れる機会が少なかったヘルペスに関するイメージを根本から変え、感染してしまった人はもちろん、そうでない人もよりオープンに話すことができるパーセプションチェンジが成果として認められたのではないでしょうか。

Pharma Lions

Make Love Last(Viatris)

良好な夫婦関係に甚大な影響を及ぼす“セックスレス”に関する言及は、性に関する話題がとにかく忌み嫌われる中国においてこれまで避けられ続けてきました。この状況に着目し、文化的にも法律的にも規制が厳しい環境下においてアメリカの製薬会社Viatrisが行ったバイアグラの訴求施策が中国社会の認識そのものを変えたとして、見事グランプリの座を手にしました。

Viatrisが公開したのは、CMでもデジタルキャンペーンでもなく、アートの展示。新進気鋭の写真家・Lavender Chang氏を起用し、実際にセックスレスに悩むカップルたちの性行為の様子をストップモーションカメラで撮影し、特殊な処理をかけた上で連続的に映すことで幻想的なモザイクがかかったように見えるアート作品へと仕立て上げたのです。

個人の、夫婦の、社会全体の性に関するリアルな悩みはもっとオープンに議論されてもいい……そんな願いが込められた施策は3億5000万ものインプレッションを獲得し、オンライン展示会では8,580万もの視聴回数を叩き出しました。

SNS上では189万回性に関する言及がなされたようで、中国国内でも良好なセックスライフを送るための発話が積極的に行われるようになりました。商品自体の直接的なアピールはすることなく、社会に歩み寄ることで大きな成果を導き出した事例でした。

 

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