未来の顧客にその“魅力”を伝えるイベントとは?|担当者に訊く「PLAZAらしさ」
信頼や共感を通じて自社の価値向上や他社との差別化などを目指すマーケティング戦略の1つ、ブランディング。さまざまな企業やブランドがその魅力を広く伝えようと注力しています。
ライフスタイル/バラエティーストアの元祖ともいえる雑貨店PLAZA(1966年オープン、旧・ソニープラザ)は、アメリカンスタイルのドラッグストアとしてスタートしました。近年ではコスメ類の取り扱いの多さなどから10~20代女性の人気を集めていますが、さまざまな施策で性別や世代を超えたアプローチを行っています。
あらゆる世代の女性たちの心と身体に寄り添うアイデアを共に考え、提案する社内プロジェクト「Nice to meet me!」、ブランドペルソナともいえる都内私立高の生徒と産学共同開発した日傘「rizzful parasol」、そして子ども向けイベント「MY FIRST PLAZA」それぞれの担当者に「PLAZAらしさ」をたずねるインタビューを実施しました。
「MY FIRST PLAZA」の参加者は、未来の顧客となりうる子どもたち。大切なひとに贈るギフト選びにキッズが挑戦するというコンセプトから、ショッピングの楽しさを伝え、PLAZAでのお買い物を体験するだけでなく、レジスキャンやラッピングといったスタッフ業務を通して、“お仕事”も経験できるというストアイベントです。
第2回目となるこの記事では、この「MY FIRST PLAZA」を担当する向原勝也さん、橋本欣久さんにくわしくお話をうかがいます。編集部注:「rizzful parasol」担当者への取材記事はこちらから。「Nice to meet me!」担当者への取材記事は5月初旬に公開いたします。
ーー参加したご家族の大切な思い出になりそうなイベント、MY FIRST PLAZAを実施する背景を教えてください。
向原:我々、販促宣伝課チームでのミーティングで幼い頃の記憶、たとえば香りだったり、あるシーンだったり……そういったものは大人になっても忘れていない、強烈に残っているという話が出たんです。
社員には「子どもの頃、親と一緒にPLAZA(ソニープラザ)で買い物をした」という思い出がある者が多くいました。そこで「PLAZAは今、子どもたちにとって記憶に残る場所なのだろうか」を考えてみよう、と。「思い出に残る店でありたい」という願い、店舗での顧客体験の深堀りというところを踏まえて着想したプロジェクトです。
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ーーお子さん向けの職業体験というと、キッズ向け職業体験施設でのサービスと似た印象を避けられません。どのように差別化を行いましたか?
向原:このイベントは店舗スタッフの体験をメインにせず、どこに重心を置くかはプランニングの課題の1つでした。イベントを通じてPLAZAで「初めてのギフト選び」に挑戦してもらうことで、「PLAZAといえばギフト」というイメージをしっかりとお客様に定着させることが目的です。
ーーお子さんにとって「PLAZAで楽しいことをした」という記憶を残すこと、ご家族も含めて「ギフト」というコミュニケーションカルチャーを伝えたいということですね。
向原:はい。日常的にちょっとしたお菓子や雑貨をやりとりする、そんなコミュニケーションは、贈る人も贈られる人もちょっと幸せになれますよね。
イベントを行う玉川高島屋S・C店は親子連れだけでなく、3世代で訪れるお客様が多くイベントの主旨と来店客層がと合致します。
ーー二子玉川という街の雰囲気も、このイベントのイメージにマッチしています。3世代のお客様へアプローチするなかで、どんなことが起こりましたか?
橋本:お祖母さまが応募してくださって、お孫さんと参加するケースがありましたね。
向原:イベントではお子さんがギフトを選んで、特製のショッピングカートに入れていきます。お子さんならではのチョイスで、ご家族にとっては普段手に取らないモノとに触れる機会になっていたようです。
ーー子どもたちが店員として奮闘する姿を付き添いのご家族だけでなく、スタッフや、イベントに居合わせたお客さんが見守る、そんな微笑ましい様子を想像しちゃいますね。
向原:かわいいです、本当に。ストアスタッフたちも喜んでいました。最初のイベントで橋本の子どもがモデルになってくれたんですけど……。
橋本:息子も体験して、PLAZAが楽しい場所だと思ってくれました。それは、我が家だけのことではなく、イベント参加者の方も同じだったようです。事後アンケートでは、お子さまもファンになってくださって、PLAZAに来るたびにイベントのことをお話してくれるなんていうお声をいただきました。
ーースタッフがお子さんにアドバイスするようなことはありますか?
橋本:悩んでしまっているときには、「ママの好きな色はなに?」みたいにお声かけします。事前にご家族からヒントをいただくこともあります。すごい数のギフトをカートに入れていたお子さまもいらっしゃいました(笑)。
向原:「ほんとに全部(お買い上げで)いいんですか?!」ってご家族に聞きましたね(笑)。小さいお子さんだと「選ぶ」っていう感覚があまりないので、じゃんじゃんカートに入れていってしまうので、「どれがいいか一緒に選ぼうか~」とお声かけをすることもありました。
ーーさりげないサポートをしていらっしゃるんですね。2024年の母の日/父の日のイベント成功を受けて、2025年はバレンタインデー/ホワイトデー、さらに2回目となる母の日/父の日の計4回の実施が公表されました。
向原:主軸はギフトなので、そのモーメントにしっかり打ち出すことが重要です。バレンタインデー/ホワイトデーを増やしたのは、対象が小さいお子さんに偏ってしまいがちなことが理由です。
橋本:母の日と父の日は、未就学児のお子さまが対象ですが、バレンタインデー/ホワイトデーは年齢上限を設けていません。
向原:PLAZAで買い物をしたことはあるかもしれないけれども、バレンタインデー/ホワイトデーのギフト選びの経験がない方に向けて、対象となるお子さんたちの年齢層をちょっと上げてみようという取り組みです。
ーーその場合、参加者へのアプローチは変わりますか?
向原:小さなお子さんであれば、サポートやフォローに徹しますが、よりギフト選びのアドバイスをさせていただきたいですね。
未来のお客様はもちろん、ラッピングにも挑戦して「ラッピングが楽しかった」というお子さんの声もあったので、将来、採用面接に「子どもの頃に参加してPLAZAが好きになった」という人が来てくれるかもしれません(笑)。
橋本:前例のないイベントだったので、すべてが手探りでのチャレンジでした。個人情報の取り扱い方から検討して進めていきました。初年度の母の日/父の日はそれぞれ300件ほどの応募に対して、実際に参加していただいたのはイベントにつき7組です。
向原:2025年のバレンタインデーは倍率でいえば50倍という狭き門でした。たくさんの方に参加していただくことはできませんし、とても時間や手間のかかるイベントではあります。
しかし、「一生忘れられないような思い出になった」というようなお言葉をいただくほど、満足度がとても高く、地道に続けていくべきものだと思っています。
ーー母の日やホワイトデーは、お父さん、男性が来店するきっかけにもなりますね。
橋本:はい。ファミリーや男性にリーチすることは、会社としての課題でもあります。だからこそ、お父さまが応募してきてくれてくださったり、ご家族でプラザにお越しくださったりするきっかけになることがとても良いイベントだと感じています。
向原:10~20代女性がPLAZAのターゲット客層だといった印象を持つ方にとっては新鮮な体験になったのではないでしょうか。
ーー若い女性向けというイメージはありますが、それだけではない品揃えこそがPLAZAの特徴ですね。
向原:男性ファンも、男性のストアスタッフもいます。僕も最初はアルバイトスタッフとして入社しました。洋楽や海外のカルチャーが好きで、お菓子や、女性だけをターゲットにしていない雑貨、それから文具の扱いは今よりもボリュームがあって、ほかのお店にはないPLAZAが扱うモノが好きだったことがきっかけです。
ーークリスマスシーズンにあわせた実施は予定されていますか?
向原:クリスマスはギフトのタイミングですが、サンタクロースからのプレゼントを心待ちにしているお子さんがいらっしゃるので……。むしろ、サンタさんに会えるほうが「PLAZAらしい」。
2024年は、クリスマスシーズンに東京店で「Super Joyful Holiday Market」というイベントを行いました。
向原:ニューヨークのクリスマスをテーマにして、「SANTA MEET & GREET」というサンタさんとの写真撮影会を実施しました。アメリカのショッピングモールでのホリデーシーズンの定番です。希望する方は、ニューヨークへ出張したスタッフが手に入れたいわゆる「アグリーセーター」を着て撮影することもできたんですよ。
ーーお子さんの夢をバックアップしながら、海外のクリスマスカルチャーへの憧れを盛り込んだ遊び心が感じられます。イベントを企画するなかで、学びはありますか?
橋本:同じような商品を扱う他社様も多くあるなかで、心がワクワクする店舗の空間やお客様体験、このイベントのようなちょっとユニークなPLAZAならではの空間や見せ方、そういった「PLAZAらしさ」をあらためて確認、アップデートできたことでしょうか。
ーーその「PLAZAらしさ」を言葉にしてもらえますか?
橋本:入社試験で同じ質問にうまく答えられなくて、泣きながら帰宅した思い出があります(笑)。……やはり言語化は今でもすごく難しいですが、心をワクワクさせることでしょうか。
店頭販促の仕事は、PLAZAならではの空間や見せ方を考えること、PLAZAらしさを伝えることです。イベント企画や、プロモーションのメインビジュアル制作といった業務を経験していくなかで、「ワクワク」を表現するノウハウを身につけられたと思います。
向原:僕も「ワクワク」です。あとは、「ナニコレ」感も。知らなかったモノを見つけたときの驚き、喜びですね。これはいろいろなモノや情報が増えてきた今の時代、もしかしたらお客様に伝わりづらいかもしれませんが、やはり大切にしたいPLAZAらしさです。
あとは「イケてる」こともぶれちゃいけない要素です。「イケてる」モノって、ワクワクしますよね。いろんな意味を持たせられるとも思っていて、まだ見たことのないモノに対する憧れや、流行の最先端であること、人びとの心の琴線に触れることでしょうか。
(取材・文 服部真由子)
インタビュイープロフィール
向原勝也(むかいはら・かつや)
株式会社スタイリングライフ・ホールディングス
プラザスタイル カンパニー
マーケティング本部 販促宣伝部 販促宣伝課 課長
2003年、アルバイトとしてPLAZAルミネ新宿店に入社。2007年からは正社員として、関西・都内店舗を中心に店舗スタッフ・店長職を務める。商品・売場施策を担当するMD課 課長に就任(2021年)、2023年4月から現職。店頭販促を中心に、プロモーション、店頭イベント施策の企画・実施を担当しています。
橋本欣久(はしもと・きく)
株式会社スタイリングライフ・ホールディングス
プラザスタイル カンパニー
マーケティング本部 販促宣伝部 販促宣伝課
2015年入社。PLAZA1号店の銀座店、なんばシティ店で4年間の店舗勤務を経て現職に至る。息子さん(4歳)の育児に奮闘中だという橋本さんは、販促企画において「お客様はもちろん、スタッフにも楽しんでもらえること」をモットーにしているそうです。
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